「学習はOK」でも「生成はNG」!2025年版・生成AIの法律と世界のルール
こんにちはスゴロックス2号です。
先日、来春にソフトバンクなど十数社が出資する新会社を設立し、米中が先行するAI分野で、日本が巻き返しを図る国内最大級となる1兆パラメーター級AI基盤モデルの開発を目指す、といったニュースがあったように日本においてもAI界隈がさらに急加速しそうです。
そんなAI、特に生成AIが2025年は、私たちの仕事や生活に深く浸透したのと同時に、その利用に関して様々な議論が巻き起こりました。
「AIが勝手にイラストや文章を学習するのは、法律的にアリなの?」
「AIで作った画像を使ったら、著作権侵害で訴えられるの?」
こんな風に、AIの「学習(インプット)」や「生成(アウトプット)」に関して、世界中で大きな議論になっています。
しかもこのルールは国ごとに異なっていて、世界で統一されたルールというものはまだ作られていません。
そこで今回は、日本、アメリカ、ヨーロッパを例に、AIに関するルールや考え方について、最新の状況を調べてみました。
1.日本:世界有数の「開発しやすい国」
まずは、日本の状況から見ていきましょう。
日本の著作権法は、世界的に見ても「AI開発に有利」な設計になっていると言われてきましたが、2025年に入り、その解釈や運用に大きな変化が起きています。
学習(インプット):原則は「OK」だが…
日本の著作権法第30条の4は、AI開発における「学習」を後押しする条文だと言われています。
ここでは、「著作物に表現された思想や感情を享受(鑑賞したり楽しんだり)する目的でなければ、権利者の許可なく著作物を利用(学習)できる」と定めています。
つまり、人間みたいに著作物を「楽しむ」のでなければ、学習に利用してOK。もちろんAIには「作品を楽しむ」気持ちは無いため、著作権者の許可を得ること無く様々な文章や画像などを学習できるということになっています。
ただし、2025年に入って文化庁の公式見解(「AIと著作権に関する考え方について」)により、「学習段階であっても違法になるケース」が明確化されました。
具体的には「特定の作家の画風をコピーする目的」などで学習させることはNGであるとの見解が示されています。例えば”スタジオジブリ作品っぽい”絵を出力させるために、スタジオジブリ作品の絵を大量に学習させるのはダメだということです。
このような利用方法は単なる「情報解析」を超えて、「その作家の画風を生成物として楽しむ(享受する)目的」があるとみなされます。この場合、30条の4は適用されず、権利者の許諾が必要(無断なら違法)となるということです。
生成・利用(アウトプット):「人の作品」と同じ基準
では、AIで作ったもの(生成物)を公開したり販売したりする場合はどうなるのでしょうか?
日本では、AI生成物であっても、人間が作った作品と同様に「著作権侵害」の判断基準が適用されます。著作権侵害の基準は「生成物が既存の作品と似ていて(類似性)、かつAIがその作品を学習していた(依拠性)場合、著作権侵害となる」とされています。
著作権侵害の認定は非常に繊細なものなので一概に語れるものではありませんが、例えば「ジブリ絵を大量に学習させて、ジブリっぽい絵を出力する」などの場合は、著作権侵害となる可能性が高いと言えるでしょう。
ちなみに、著作権侵害については「AIが勝手に作った」という言い訳は通用せず、出力して利用したユーザーの責任になります。
AI作品に「著作権」はあるか?
原則として、日本では「AIが自律的に生成したものには、著作権は発生しない」ということになっています。
日本の著作権法では、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されており、この「思想又は感情」を持つのは人間に限られます。つまり、簡単なプロンプトを入力して、あとはAIにお任せで出力された画像などには、原則として著作権はありません。
ただし、例外もあります。
2025年11月、「AIを用いて制作された画像を無断で複製した」として、著作権法違反の疑いで神奈川県の男性が書類送検されたと報じられました。
複製された画像は、別の人物が2万回以上もプロンプト(AIへの命令文)を打って生成及び修正したものだったことから、警察はこれを「著作物」として認めたようで、盗用した人物を書類送検したのです。
つまり、単にプロンプトを入力しただけでは権利は発生しにくいものの、人間が道具として使いこなし、高い創作性を発揮すれば、著作権で守られる可能性があるということです。
ということで日本の状況を簡単にまとめると、「学習も利用も原則自由だが、他者の著作権を侵害する目的で行うのはNG」ということになります。
まあそんなもんだろうと感じるかもしれませんが、実はこれ、海外の状況と比べるとかなり特異です。では、次に米国の状況を見てみましょう。
2.米国:学習の適法性が争われる
生成AIサービス競争の本場でもあるアメリカでは、今まさに多くの議論が行われています。
学習:「フェアユース」か否か、決着つかず
学習に関しては日本のような「学習を明示的に認める法律」が存在しないため、既存の法律を巡って、巨大企業同士やクリエイターによる激しい裁判が繰り広げられています。
アメリカには「フェアユース(公正な利用)」という、一定の条件を満たせば著作物を無断で利用できる概念があります。そして、AI企業(OpenAIやGoogleなど)は、「AI学習はフェアユースにあたるから合法だ」と主張しています。
これに対し、作家、アーティスト、そして新聞社(ニューヨーク・タイムズなど)などが「それはただの盗用だ」として、相次いで訴訟を起こしました。
その議論の具体例の一つが、「ニューヨーク・タイムズ VS OpenAI」です。
2023年末、ニューヨーク・タイムズは「数百万件もの記事を無断でAIの学習に使われた」として、ChatGPTを開発するOpenAIと、そのパートナーであるマイクロソフトを提訴しています。
ニューヨーク・タイムズ側の言い分はこうです。
「AIが私たちの記事を勝手に学習したせいで、ChatGPTが有料記事の内容をそのまま出力したり、NYTの文章そっくりの回答を生成したりしている。これは記事の『タダ乗り』であり、私たちの購読ビジネスを邪魔する著作権侵害だ」
これに対し、OpenAI側はこう反論しました。
「AIの学習は、人間が本を読んで学ぶのと同じで『フェアユース』だ。記事を丸写しして出力するのはAIのバグであり、修正するつもりだ」
真っ向から意見が対立したこの裁判、実は2025年12月時点でも決着がついていません。両社ともに一歩も引かず、裁判は長期化の様相を呈しています。しかも、同様の裁判がこの2社間だけではなく、数多く現在も進行中なのです。
このようにアメリカでは、「学習自体が違法になるかもしれない」という巨大なリスクを抱えながらビジネスが進んでいるということになります。
生成・利用:ほぼ日本と同様
では、生成物の権利についてはどのような状況になっているのでしょうか。
生成物については、日本と同じく「基本的な著作権のルール」が適用されます。アメリカの著作権法では、著作権侵害が成立するために主に以下の2つの要件が必要です。
・アクセス:作成者(この場合はAIやユーザー)が、元の作品を見たり聞いたりする機会があったか。
・類似性:作られたものが、元の作品の「表現の本質的な部分」と実質的に似ているか。
つまり、「AIが学習データとしてその作品にアクセスしており、出力されたものがそっくりだった場合」は、人間が模写したのと同じように著作権侵害となります。AIを使ったからといって免責されることはなく、それを利用・公開したユーザーが責任を負う可能性がある点は日本と同様です。
なお、「AIが生成したものに著作権はあるか」という点については日本よりもやや厳しく、ほぼ認められないと考えられています。
米国で著作権が認められるためには「人間による創作的な関与」が必須であり、プロンプトを入力しただけでは「著作者」とは認められない、として著作権登録を拒否する判例もいくつか出ています。
つまり、「出力」に関して著作権の認定は、日本よりもやや厳しいものの、基本的には同じように「著作権侵害か否か」が法的な判断基準だということです。
ただし、米国の場合はそもそも入力(学習)に関してまだ議論の真っ最中であり、それが違法となればAI業界全体を揺るがしかねないというリスクを抱えています。
3.欧州(EU):世界初の包括的ルール「AI法」
ヨーロッパ(EU)は、世界初の「AIに関する包括的な法律」として「AI法(EU AI Act)」が2024年に成立し、2025年から段階的に適用し始めました。
学習:オプトアウト方式と透明性
EUにおける学習データの扱いは、「著作権指令」と新しい「AI法」の組み合わせで動いています。
まず前提として、EUにも日本と同様に「テキスト&データマイニング例外」というルールがあり、権利者が明示的に「学習禁止」としていない限り、AI学習は合法とされています。これは「オプトアウト方式」と呼ばれるもので、基本は「嫌なら拒否してね」ということです。
しかし、オプトアウト方式には大きな問題がありました。「AI企業が何のデータを学習させたか秘密にしているため、クリエイターは自分の作品が使われているかどうかわからず、拒否しようがない」という点です。
そこで登場したのが「AI法」による「透明性義務」です。
AI法では、ChatGPTやMidjourneyのような汎用AIモデルを提供する企業に対し、「そのAIがどんなデータを学習に使ったか」について、要約を公開することを義務付けました。
したがって、これまでは「企業秘密」として隠されてきた学習データの中身が、EUでは丸裸にされることになります。これにより、クリエイターや権利者は「自分の作品が勝手に使われていないか」を確認できるようになり、もし使われていれば、著作権侵害の申し立てや対価の請求がしやすくなるのです。
なお、日本ではまだ「(権利者が拒否したとしても)学習目的であれば様々な著作物を利用できる」状況ですが、オプトアウト方式の導入を求める声がクリエイターや企業から上がっています。
生成・利用:AI生成物であることを「明示」
さて、EUでは生成物の利用に関しても、厳しいルールが設けられています。
最も重要なのが、「AI生成コンテンツの明示義務」です。
AIによって生成・操作された画像、音声、動画(ディープフェイクなど)については、それが「AIで作られたもの」あるいは「操作されたもの」であることを、ユーザーに分かるように明示しなければなりません。これも「AI法」によって定められていて、2026年8月から本格的に適用が開始される計画になっています。
これは著作権の問題というよりは、「フェイクニュースの拡散を防ぐ」「消費者を騙さない」という倫理的・社会的な観点からの規制ですが、急速に浸透するAIに関する重要なルールと言えるでしょう。
ちなみに「うちは日本企業だから関係ない」とは言えません。EU市場でビジネスをする場合や、EUのユーザーが利用できるサービスにはこの法律が適用されるため、世界中の企業が対応を迫られています。
なお、AIが出力した作品に対する著作権については、日本や米国とほぼ同様です。ただし、EUでは前述の通り「学習データが開示される」ため、権利者が「私の作品を学習した証拠」を掴みやすいという特徴があります。つまり、米国や日本よりも「依拠性(パクリの証拠)」を立証されやすく、侵害を問われるリスクが高いと言えます。
まとめ
最後に各国の状況を整理すると、以下のようになります。

こうして見ると、AI活用に関する議論の中心は特に「学習」の部分であり、日本はその点では(良いか悪いかはともかく)自由度が高い、と言えそうですね。
ひとまず、AIを使って仕事用のテキストを書いたり、資料を作ったりする程度で違法となる可能性は薄いので、当分は安心して使っていけそうです。AIを使って資料作成などをしている2号も一安心です。読者の皆様も、著作権侵害にならないよう十分に気をつけつつ、AIを活用していってくださいね!
さて、今回は主に法的な面からAIの利用について解説しました。
しかしAIについては、「法的にはOKだけど倫理的にどうなの?」といった、様々な議論が巻き起こっていますよね。そこで次回はより具体的に、様々な業界の著作権者がどのようにAIと向き合っているのか、AI活用に関してどのような事件や問題が起きているのかについて解説します。
さて、西PはAIを使って仕事をしたりしているのでしょうかね?
西Pからの一言!
AI、がっつり活用しています。
ドキュメント作成や、ちょっとマニアックな調べ物にも使っていますが、いちばん活躍しているのは「新規原案のイメージ固め」です。企画やディレクターから原案を受け取るとき、パワポで大枠の設計や狙いは共有されるものの、雰囲気やプレイフィールまでは伝えきれないことが多いんですよね。そこをAIが一気に補ってくれます!
動画で世界観を起こしてくれたり、複数のラフ、タッチ違いの絵柄、ゲームイメージが掴める素材、音、ボイスまで揃えてくれるので、企画段階の“感覚のズレ”が一気に解消されます。
これが本当にすごい‼
「企画やプロデュースのための専用ツールなんじゃないか」と思うほど、スピードも精度も高いです。
次に活用が多いのは、ゲームのモック制作です。
「こんな簡単にモデルができるの!?」、「作ったデータが、簡単な仕組み込みまで含めてゲームエンジン上で動くの!?」
と、毎日のように驚かされています。
最近は本気で思います。AIは、これからもずっと私たちを助けてくれる存在になってくれるんじゃないかと。
