着物を学ぶ 着物から学ぶ
2020年最後の3ヶ月で90代の義父母が相次いで他界し、敷地内同居をしていた夫と私は年明けから家の片付けを開始した。
40年暮らしていた5LDKの日本家屋と蔵もどきの倉庫の2階には、長年仕舞われたままだった品々が詰め込まれていた。
2年がかりでさまざまなものをさまざまな方法で処分したあと、残したものの中にあったのは義母の着物。
2012年に70代で他界した実母の着物はお正月に数回、義母に着付けてもらって1〜2枚使用したのみ。高級品はないしかなり古いものではあるが、義母の着物も加わったところで(大正生まれの義母は晩年まで着物をよく着ていた)、全てを二束三文で処分する気にもならず、ようやく自分で使う方向で動き出した2024年。
まずはYou Tube先生にならう。
いろんなチャンネルを見て、着物の畳み方から練習。
肌襦袢(和装下着)はたくさんあったのだが、簡単に扱えそうな着物用スリップタイプの肌着をとりあえず一枚購入。他にもあれこれ便利グッズもあるようなのだが、なるだけ無課金であるものを使うことに。
襦袢の着方、着物のはおりかた、帯の種類など、とりあえずイメトレし、着付け動画を見る。
一時停止を繰り返しながら着てみるものの、後ろに手を回して反対側から来た紐を掴むことさえ苦労する。自分の手先の不器用さを思い知らされる。
帯は前結び一択でチャレンジするが、動画の通りには何度やってもいかない。左右もわからなくなりがち。
自学だけで外に着て出られるようになるとは到底思えず、やっぱり着付けを習いに行くことにする。
地元の呉服屋さんで1時間500円で、しかもマンツーマンで着付けを教えてくれるところがあると友人が教えてくれたので、勇気を出して申し込んでみる。
なぜ勇気がいるかといえば、今年還暦の私、この年で着物のことをほぼなーんにも知らないのだから、お恥ずかしい限り。でも学ばなければ知ることはできない。
行くしかない。
そしてここで目標設定。
「還暦記念に着物で記念写真を撮る。」
そしてそのために自分で着物を着れるようになろう、と。
着付け教室初回。
まずはバックグラウンドを聞かれる。着付けを習おうと思ったその理由。
1. 親(義母含む)の残した着物を活用したい。
2. 着物を自分で着て記念写真を撮る。
1. の理由は多いようで深くうなずかれる。
2. の理由には「いいですねー」とニコニコ反応していただく。
初回。案の定、手が回らない、紐がなかなか結べない。
「不器用なので」と言い訳しながらモタモタする。
「大丈夫ですよー」「そんなことないですよ」と優しく笑顔で根気よく教えていただく。
「体の使い方」についてのポイントをいくつも教えてもらったことはとてもよかった。You Tube先生で学べなかったことの一つだ。
肩甲骨が飛び出るような腕の動きをなるだけしないこと。
上半身をなるだけフラットな状態で着付けを進めていかないと、着物にシワがよったり歪んだりしてしまうのだ。
腕と反対側にある紐は「お迎えに行く」のだという。
背中で左側から右側に渡したい紐は、左手で行けるとこまで持っていき右手で迎える、そうすることで肩甲骨を過度に盛り上がらせることなく、肩も持ち上げることなく紐を体に巻き付けることができるのだ。
言うは易し行うは難し。理屈はわかっても洋服生活でわがままに動き回ってきた体が、そう簡単にすっとしなやかな動きができるわけもなく、力の入る肩にやさしく手を添えて注意喚起されながら、1時間かけて完成まで持っていく。
後半はほとんどやってもらった感がある。
着物を着るには様々なルールがあって、「着物警察」なる言葉もあるようにちゃんとしてないと注意されそうで恐ろしい、ハードルが高いというのがあった。
ところがインスタなんかを見てると、若い子が自由に自分のスタイルで着物を楽しんでいたりして、とても素敵である。それもただ崩してきているのではなく、ちゃんと着れるという過程を踏んで様々な着方を楽しんでいるところがいい。
そういう人に私もなりたいと思った。
呉服屋さんでの着付け教室は、結局6回通ったのだが、終始、「それでも大丈夫」的な優しさ、暖かさがあった。とてもありがたかった。多少歪んでも、バランスが悪くても、このくらいなら大丈夫(初心者ですし)的な包容力で受け止めてくれた。そして回数を重ねるごとに多少でも進歩があればとても褒めてくれる。後ろから背中を押される感じで、やる気も続く。
「結局羽織を着れば帯は見えないので」なんてことも教わり、かなり気が楽になった。帯結びが不安なときは羽織を着てしまえばいいのよ、的な感じで。
ハードルの高かった呉服屋さんに足を踏み入れたことが、逆に着物に対する自分の考え方のハードルを下げることになった。
その後自宅で自主練を重ね、半年後の11月吉日、朝から美容院にセットへ行き自宅で着付け、初孫のお宮参りを同じ日に重ねたので夕方の写真撮影まで着物で過ごすことに。
当日の着付け、髪も決まっていることだし気合いも入ってやる気十分だったのだが、結局帯を締めるのにやり直し3回(なかなか思うような締まり具合にならず途中心が折れかける)、トータル1時間強かかって二重太鼓完成。
この日まで着付けの練習はしてきたが着物で出かけることはなかったため、車の乗り降りやらお宮参り後の会食(自宅で仕出しをとる)やら、なかなか動きづらかったのだが、そんな中、実際に着て過ごしてわかったことも。
会食時、座布団に正座をしていると衣紋が詰まってこないということ。衣紋を好きな角度に抜いて着付けたつもりでも、徐々に詰まってくる(あるいは着付け終わった時に少し詰まってしまったか)傾向があるのだが、正座をしていると下半身が固定されるので胸元も衣紋も動かず具合が良かった。昔ながらの日本人の生活スタイルと、昔からある着物の相性の良さが垣間見えた瞬間だった。
着物は作り方から本当によく考えられていて、畳み方しかり、着方しかり、日本人の知恵が詰まっていると感じられる。
昔は一枚の着物を季節によって仕立てかえて(各自で)冬はわたを入れて暖かく着たりしていたらしい。
着付けを習うことで日本人の知恵や工夫も学べた、そんな1年になった2024年。
60年も生きてきて何をやってたんだ、世の中まだまだ知らないことだらけじゃないか。と思い知ったので、先人やら若者からこれからも学び続けられる、そういう人に私はなりたい。
#今年学んだこと #着物#日本人の知恵
