見出し画像

ラテンアメリカで気づいた、人生の中心は「家族」という価値観

Hola!Gatoと申します。


「仕事」と「家族」、どちらを優先しますか? 南米で暮らすなかで、私はその答えを何度も突きつけられました。家族との絆を何より大事にするラテンアメリカの人々。その文化から見えた、もうひとつの生き方を紹介します。



はじめに


ラテンアメリカという言葉には、「陽気で開放的」「美男美女」「音楽やスポーツが盛ん」といった明るいイメージがあります。一方、「時間にルーズ」「責任感がない」「その日暮らし」といったマイナスな印象も持たれがちです。

私は南米エクアドルで勤務した経験があります。当初は、現地の人々が約束を守らないことや、仕事に対していい加減に見える姿に戸惑いを感じていました。しかし、現地での生活を続けるうちに、彼らの価値観の根底には「家族こそが人生の中心である」という信条があることに気づくようになったのです。

仕事より家族の時間を優先するという価値観

あるとき、エクアドル側から申請された日本の経済援助案件について、東京の担当部署から「追加資料の提出を早急に」との指示がありました。エクアドル側の担当者に確認すると、「問題ない、すぐ出せる」という回答を得たため、私は東京の担当者に、そう報告しました。

しかしいつまで待っても資料は届きませんでした。確認すると「その資料は上司が保管しているが、連日出張で帰宅は夕方6時過ぎ。私は家族との時間があるから、そんな遅くまで残業するのは無理。上司も残業などせずすぐ帰宅する」との応えでした。

私は、業務を完遂するために多少残業するのは当然と思っていたので驚きました。しかし、彼らにとっては「仕事より家族を優先する」のが自明な価値観だったのです。

日常に溶け込む、家族と人間関係の濃さ

こうした考え方は、日常生活の随所に現れます。とくに印象的なのは、頻繁に行われるホームパーティの文化です。

一度、友人の一家から父の日を祝うホームパーティに招かれました。その日は、友人夫婦と成人した子どもたち、長女の婚約者、母親、妹、甥、そして私たち家族の含め総勢十数名が集まりました。

ラテンアメリカでは、婚約者はもちろん、家族のうち誰かの恋人でさえ「ごく自然に」家族の一員として扱われ、家族ぐるみで食卓を囲みます。初対面同士でもすぐに打ち解け、ニュースやスポーツ、買い物情報などの話題で盛り上がります。

料理は手作りのフルコースで、メインは鶏肉を使った家庭的な手料理でした。年齢層別に2つのテーブルに分かれて着席し、歓談が続きました。長女と婚約者の日本旅行の話題ではとくに盛り上がり、まるで親戚の集まりのような一体感でした。

18歳の誕生日に家族総出で祝う

また、子どもの友人の18歳誕生日パーティにも招かれたこともあります。当の主役の恋人や両親、祖父母、叔母や従兄弟たちに加えて、祖父母の友人夫婦、私たち家族も入れて、総勢二十名近くになりました。

ビデオで振り返る「成長の記録」では、主役の母親が感涙、その子と固いハグを交わす姿に心を打たれました。プレゼントの贈呈のあとは、音楽とダンス。深夜まで続いたにぎやかなパーティのなかで、家族の絆がどれほど大切にされているかを強く感じました。

西洋は合理的で日本は情緒的?かつての常識の逆転


私が受験勉強をしていた1980年代、現代国語の入試問題では、「日本の人間関係は情緒的でウェット、西洋の人間関係は合理的でドライ」として対比するエッセイが頻繁に取り上げられていました。丸山真男や中根千枝の著作に代表される比較文化論がその例です。

ここでいう「西洋」とは、ヨーロッパを中心としたキリスト教文化圏を意味します。ラテンアメリカは、かつてスペインやポルトガルの植民地だった歴史をもち、その文化や価値観を色濃く受け継いでいます。

しかし、実際にその文化圏にある南米に暮らしてみると、日本よりもずっと濃密で、情のこもった人間関係が当たり前に営まれていました。人と人が日常的に長時間語り合い、離れて暮らす親族とも携帯のテレビ電話で頻繁に連絡を取り合う。まさに「ウェット」という言葉がふさわしい社会です。

社会不安のなかで強くなる、家族の絆

こうした家族重視の文化は、ただの習慣や気質だけではなく、社会的な背景とも結びついていると思われます。独立を果たした19世紀以降、政権腐敗やスキャンダルなどの政情不安が繰り返し起こっており、人々は政治に対して根深い不信感を抱いています。

さらに、近年は治安が悪化し、麻薬組織の台頭や凶悪犯罪の増加が社会問題となっています。そうした状況下で、人々が真に頼れるのは「家族」しかない、という現実があります。

例えば、以下のような言葉を日常の会話のなかで耳にします。

・La familia es lo primero.(家族が一番大切)

・No se puede imaginar la vida sin la familia.(家族なしの人生なんか想像できない)

・Aunque estamos viviendo separados, somos unidos.(離れて暮らしていても、私たちはつながっている)

「仕事第一」でいいのかと、ふと立ち止まる

日本では「仕事に責任を持つ」「結果を出す」「効率を重んじる」といった価値観が尊ばれます。もちろん、それらは重要な美徳です。

しかし、あまりにも仕事優先の文化に染まりすぎて、人間関係や家族とのつながりが犠牲になっていないでしょうか。ラテンアメリカでの暮らしは、そんな問いを私に突きつけてきました。

あなたが本当に大切にしたい関係は?

「時間を守らない」「すぐ言い訳する」――そんな現地の人々に最初は戸惑いました。

けれど、今ではその背後にある家族を大切にする気持ちが、少しずつ理解できるようになりました。仕事と家庭、効率と温もり、責任とやさしさ。そのどれもがバランスで成り立つものですが、ラテンアメリカで得た経験は、私にとって大きな価値の転換点でした。

あなたにとって、最も重要な人間関係は、どなたとの関係でしょうか?




(約2500字)

いいなと思ったら応援しよう!