2026年1月上旬の核酸医薬業界動向まとめ
――「商用化の拡大」「代謝×併用で“次の伸びしろ”」「送達(脳・心臓)と個別化医療の実装」「国内発の基盤技術も前進」
2026年1月上旬は、核酸医薬のニュースが「研究進展」だけでなく、承認・申請・大型提携・M&Aなど、産業フェーズを強く感じさせる動きとして出てきました。特に、①siRNAの商用化地域拡大、②代謝領域でのRNAi×GLP-1/GIP等の併用可能性、③脳(BBB)・心臓(心筋細胞選択)など送達の“勝負所”がより明確化、④個別化ASOの欧州展開、が主要トピックです。
1) まずは「承認・申請」:siRNA/ASO/mRNAがグローバルで前進
Arrowheadのplozasiran(REDEMPLO):FCSで承認地域が拡大
ArrowheadのsiRNA医薬plozasiran(REDEMPLO)は、カナダ保健省の承認に続き、中国NMPAでも承認が発表され、FCS(家族性高カイロミクロン血症)における商用化が多地域に広がっています。中国ではSanofiが販売を担い、承認に伴うマイルストーンが発生する構図です。
また、米国ラベル情報では3か月に1回の皮下投与であることが明記されており、“低頻度投与の実装”が重要な競争軸であることが分かります。
GSKのbepirovirsen:CHB(慢性B型肝炎)でP3良好、機能的治癒を前進
GSKはASOのbepirovirsenについて、第3相(B-Well 1/2)で主要評価項目を達成し、機能的治癒率で統計学的に有意な改善を示したと発表しました。核酸医薬が“慢性ウイルス感染”の大市場で、改めて存在感を示した形です。
Moderna mRNA-1010:多地域同時申請が「平時運用」に
mRNA-1010(季節性インフル)も、複数当局への申請状況アップデートとして報じられており、mRNAは「多地域同時申請・供給運用」という産業モードに入っています(今回リスト内のトピックの位置づけとして)。

2) 代謝・肥満:RNAiが“併用で伸びる領域”に入ってきた
Arrowheadは肥満領域で、ARO-INHBE×チルゼパチド併用などの中間結果を公表しています。ここで重要なのは、GLP-1/GIP系が標準化する中で、RNAiが「追加的な体重・脂肪減少」「内臓脂肪/肝脂肪」といった差別化ポイントを狙いにいっている点です。
BD視点の含意
今後の競争は「単剤の勝負」だけでなく、“併用前提のプロファイル設計(頻度・安全性・脂肪質の改善)”が価値を作りそうです。
併用は医療経済・アクセス(誰が追加コストを払うか)が論点化しやすく、早期から市場設計が必要になります(投資家・メディアでも同論点が言及されています)。
3) 送達が主戦場:脳(BBB)と心臓(心筋細胞選択)
脳内移行:SareptaのSRP-1005(Huntington)でTfR1活用
Sareptaはハンチントン病向けのsiRNA候補SRP-1005について、ニュージーランド当局へ臨床試験申請を提出したと発表しています。ポイントは、TfR1を介した脳内移行性の向上という送達設計です。
心臓標的:Bayer×Souffléで心筋細胞へ“選択的に”siRNA送達
BayerはSoufflé Therapeuticsと、拡張型心筋症を対象とした心臓標的siRNAの戦略提携を発表しています。Souffléの細胞選択的リガンドにより、心筋細胞へ正確に送達して原因遺伝子を抑制する狙いが示されています。
ここが重要(共通メッセージ)
核酸医薬は「標的を見つける」だけでなく、“どの細胞に、どれだけ、どの頻度で届けるか”が、臨床成功と事業価値の大部分を占めるフェーズに入っています。
4) 神経・筋疾患:ALSでASO/siRNAが並走、臨床が前進
ALSでは、MMP9標的ASO(Aperture Therapeutics)や、SOD1-ALS向け髄腔内siRNA(Ractigen)の臨床進展が報じられました。前者は炎症・神経変性に関わる標的に対する“first-in-class”を掲げ、後者は第2相で最初の患者投与という実行段階に進んでいます。
5) “個別化ASO”が欧州へ:n-Lorem×EspeRareの実装モデル
n-Lorem FoundationはEspeRare Foundationと提携し、ナノ希少疾患の個別化ASO治療アクセスを欧州へ拡大する方針を発表しています。まずはスイスでモデルを作り、EU全域へ展開する狙いです。
示唆
個別化核酸医薬は「科学」だけでなく、規制・運用・診断導線を含む“社会実装パッケージ”が勝負になります。財団主導のモデルが広がると、企業側も連携・支援の設計が重要になりそうです。
6) 中国:送達技術とパイプラインを取りに行くM&A(Sino Biopharm)
Sino Biopharmは中国のsiRNA企業Hygieia(杭州)を約12億元で買収すると発表しています。送達技術(肝標的・神経標的など)やパイプライン獲得が狙いとして示されています。
含意
中国市場では、核酸医薬を「研究テーマ」ではなく、送達プラットフォーム+慢性疾患ポートフォリオの中核として組み上げにいく動きが強まっています。
7) 日本発:基盤技術(DNA架橋)とアプタマー創薬が前進
東北大学は、チオグアノシン(TG)を用いた可逆的DNA架橋の新技術を発表し、核酸医薬やDDS、DNAナノテクへの応用可能性を示しました。
またリボミックは、抗オートタキシンの新規アプタマーRBM-006について物質特許出願完了と、網膜症モデルでの効果を発表しています。
8) 既存核酸医薬も改良が続く:Spinraza高用量がEU承認
BiogenはSpinraza(nusinersen)の高用量レジメンについてEUで承認取得を発表しています。核酸医薬は新規品だけでなく、用量最適化・レジメン改良でも価値を延ばし続けることが分かります。
まとめ:2026年の核酸医薬は「商用化×併用×送達×実装」が同時進行
1月上旬の動きを俯瞰すると、核酸医薬の勝負所は次の4点に集約されます。
商用化の拡大(多地域承認・申請の積み上げ)
代謝領域での併用設計(標準治療に上乗せして差を作る)
送達が最大の価値ドライバー(脳・心臓など“難所”で差別化)
個別化医療の運用モデル構築(規制・診断・オペレーションが鍵)
