コーヒーが冷める前に飲めない朝、また始まった
朝の静けさに、ほっとした自分に気づいてしまった。
あれだけ「早く終わってほしい」と思っていたのに。
なのに、少しだけ胸が空いたみたいだった。
春休みが終わった。
それぞれの子どもたちが、それぞれの学校へ戻っていく朝。
キッチンには、少し早めの明かり。
まな板の上で包丁がコツコツ鳴る。
フライパンで卵がじゅわっと広がる。
お弁当は、今日から4つ。
ひとつ詰めて、またひとつ。
同じおかずのはずなのに、なぜか全部違って見える。
「もう時間ないよー!」と声をかけながら、
自分のことはいつも後回し。
コーヒーを急いで飲みながら、私も仕事の準備をする。
本当はゆっくり飲みたいのに、そんな余裕は今日もない。
ああ、これこれ。
このバタバタ。
正直、しんどい。
毎日これが続くのかと思うと、少しため息も出る。
でも。
子どもたちが「行ってきます」と出ていったあと。
さっきまでの騒がしさが、嘘みたいに消える。
その静けさに、ふっと肩の力が抜けた。
やっと、日常が戻ってきた。
そう思った瞬間、
ほんの少しだけ、寂しさも混ざる。
あれだけ「うるさいな」と思っていた声が、
急に恋しくなるのは、なんでだろう。
母って、勝手だ。
大変だと思いながら、
その大変さごと、ちゃんと愛してる。
きっと今日も、
帰ってきたら「お腹すいたー!」って言うんだろうな。
おにぎり作っておこうかな。
晩ご飯の材料あったっけ。
考えてるのは子供とご飯のことだけ。
またキッチンに立って、
また同じようにバタバタして、
また少しイライラして。
でもきっと、
その全部が「いつもの幸せ」なんだと思う。
だから私は、また明日もお弁当を作って、ご飯のことを考える。
少し眠い目をこすりながら、いつもの場所で。
静かな朝に、少しだけ背筋を伸ばして。
――この慌ただしい毎日は、きっと“今しかない宝物”だ。
