ハノイで見た 妖怪ぬりかべの正体 ~私のベトナム備忘録😅~
1990年代前半からベトナムに住み着いたワタシのちょっと変わった滞在記、想い出の備忘録シリーズです。(笑)😅😅
サイゴンの思い出|何祐子
**************
昭和生まれには懐かしい、水木しげる先生の名作『ゲゲゲの鬼太郎』。その漫画に、妖怪『ぬりかべ』というキャラがいます。ご存知でしょうか。
*****
30年前のベトナム渡航直前、そういえば、自分は日本や日本史のこと全然知らないなぁ、、とふと気が付いたんですよね。(笑)
海外で何か聞かれても、全く答えられない。どうしよう~、と焦っていた時、古本屋で水木しげる著『コミック 昭和史』全8巻を発見。早速全巻を購入して、取り敢えずベトナム行きの荷物に入れました。
ですが、たかが漫画とは侮れない位に非常に濃い内容だったんですよね。日本に居たらおそらく読破出来なかったでしょうが、当時ベトナムは未だ娯楽が少なく、且つ日本語雑誌等が殆ど入手不可能の頃だったので、外のチョイスが無く仕方なく、何度も何度も繰り返しそれを読んでました。
***
1944年3月頃、水木青年は、赤紙(=召集令状)を受け取り、鳥取連隊に入隊しました。そして、船で南太平洋のガダルカナル島(ソロモン諸島の島で日米激戦地)へ送られます。
或る夜、ニュー・ブリテン島のジャングルに建てられた兵舎が敵襲に遭って一瞬で全滅。不寝番だった水木二等兵だけが近くの断崖に飛び込んで助かりましたが、タイマツを持った雇われ現地人がどこまでも追い掛けて来ました。絶体絶命の窮地。
そこで、水木二等兵は、『ぬりかべ』に遭遇したのです。⇩
とにかく、一歩でも敵から離れないと危ない。ジャングルを前へ前へと進んでいると、どうしたわけか一歩も進めなくなってしまった。
僕はあまりの意外さに、暗の中に手をあてて押してみた。それは、コールタールが少し溶けかけたかんじで、押してみると、指が入った。あまりの不思議さに右も左もさわってみた。しかし、それこそ目の前に“ぬり壁”ができたように、進めないのだ。あまりのバカバカしさに、僕はその場にすわりこんだ。

“なんだバカバカしい。疲れた。寝よう。”
そう言いながらそのままその場で寝てしまった、次の日、⇩
…なんだ、もう昼じゃないか。よく寝たもんだなー。
“なんだ、もうちょっと進んだら断崖じゃないか。”
『ぬり壁』に出会わなかったら、死んでるところだ。
足が鉛のように重く、のどが渇く。

“人間を助けてくれる妖怪・ぬりかべは実在する。😅😅💦💦”
水木しげる先生の漫画のお蔭で、そんな強烈な情報を得た頃に丁度、所用でハノイに行くことになりました。
30年前は、ホーチミン市に比べるとやはりハノイの夜は薄暗かったです。市内の極中心部やホテル、レストランだけは明るいが、少し離れれば街灯も少なくて、通りに面した商店や屋台の電球の明るさだけが頼りという感じでした。舗装した道路もまだ少なかったです。
あの日の夜は、宿から近い道路をぶらぶらしていたと思います。
安宿だから当然中心地から離れていたか、宿の前と周辺が少し明るいだけで、道路の右も見ても左を見ても、その先には静寂の中に漆黒の暗闇がありました。
まだ若く好奇心旺盛で、折角ハノイまで来たんだから宿の狭い部屋に籠ってないで、良さげなカフェでも探そうと真っ暗な道を歩き出した時だったか。
ふいに、目の前に広がる漆黒の闇の下側の真ん中辺りに、白い点みたいなものが、ボウっと浮かび上がったんです。
不思議に思うと、その白い点は、漆黒の中でますます増殖して大きくなって、そして、徐々に左右上下に広がって、少しハッキリ見えた姿は、本当に四角い白い壁。その壁が、道路の幅一杯に広がりつつ、そのど真ん中を、こちらに向かってどんどんどんどんと大きくなって、遠目に見ても、その高さも幅も数メートルの巨大な壁が、こちらを目掛けて迫って来る。
その威圧感と異様さに、ただただ圧倒され、全身からどっと冷や汗が出るのを感じて、そして、
“ぬ、ぬりかべだ。。”
と、本当に実在の妖怪に遭遇したショックのせいか、その場で立ちすくんでしまったです。
そして、その時、、
静寂の漆黒の中から、微かな音が聞こえてきました。
“…ギィ、、、、ギィ、、、”
なんというか、錆びた金属が擦れる音。
壁がどんどん大きく、近づくのに比例して音も大きくなって行く。
“…ギィ、、、キーコ、、ギィ、、、ギィ、、、キーコ、、、”
ふと、白い壁の下側真ん中に、今度は黒い点が。
あれ。。。?と、そのとき不思議に恐怖は消え、
壁は、こちら側へ、宿の方へ、明かりがある方へ。
とうとう、薄明りが当たったお蔭でやっと見えた、ハノイのぬりかべの正体とは。⇩

直筆イラスト。⇧(笑)
“ぬりかべに間違いない!!”と思い込んだ、漆黒の闇夜に現れた白い巨大な壁の正体は、自転車の荷台に紐で括られて高ーく高ーく積まれた無数の白い発泡スチロール。黒い点の正体は、その中心で必死に自転車を漕ぐ一人のおじさんでした。。。😅😅😅
しかしながら、あああ、、、妖怪じゃなかった、、と判ったら今度は、何と云うか、熟練の古典劇の技や曲芸を見た時のように、そのおじさんの運搬技術とバランス力の凄まじさに度肝を抜かれまして。
その当時、バブル期に学生で終盤に滑り込みで就職を果たしたワタシは、それまで苦労という程の苦労をしたことは無かっただろうと思います。
だから、能天気にも、
“ぎゃーーー! !ハノイに妖怪ぬりかべ現る!!”
と仰天したり、それから、
“な、なんて見事なバランス力とスキルなんだ。。”
と、今度は感動したりして。
そんな可笑しな外国人女子のすぐ脇を、ボロボロの自転車が、
“…ギィ、、、キーコ、、ギィ、、、ギィ、、、キーコ、、、”
と、ゆっくり行き過ぎて行く。おじさんの表情は無表情で、真剣な眼差しをただ真っ直ぐ前だけに向けて、目指す納品場所へ、静かに走り去って行きました。
ワタシは、今の年齢までそれこそ無数の漫画・アニメ・ドラマ・書籍・映画等々から、『何事も諦めずに努力せよ』という、誰かの、何処かの、宗教の、有難ーい御言葉を聞いたり受けたりしたと思います。
しかし、すぐにこれ!とは思い出せない。
なのに何故か、今でもとっさの時にはあの時ハノイで見た情景が、こんなメッセージ付きでフラッシュ・バックするんです、本当に。⇩
人間に、不可能は無い。
人間には、スゴイ能力が備わっている。
人間は、やろうと思えば何でもできる。ただ、やろうとしないだけ。
😀😀😀😀
