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オタク男性がレディースファッションを着るようになるまで

37歳既婚男性フリーランスエンジニアだが、先日、誕生日に合わせてプロフィール写真を撮った。それがこちら。

普通と少し違う人に見えるかもしれないが、ほんの数年前まで普通の短髪&ファッション無頓着&オタク男性だった。性自認もずっとシス男性のまま。

無印良品で買ったシャツと、ユニクロで買ったパンツがせいぜい。あとは好きなゲームやアニメのTシャツなどオタクっぽいもの。こだわりがないというか、何がオシャレなのか全然わからない。同じシャツのような形の服になぜ5000円以上とか1万円以上とか値段がついてるのかわからない。それならゲーム買ったほうがいいに決まっている。そんなレベルだった。

それが今や、

トップス:MARTE / High Neck Sheer Top Astronomy / ¥14,300

キャミソール:RITAN / Velour Asym Camisole / ¥13,200

パンツ:UNITED TOKYO / Double Waist Cocoon Pants / ¥25,300

シューズ:Lui's / Volume Derby Shoes / ¥24,200

全身合わせて約7万5000円!

ついでにアウターも合わせると10万超える。

オシャレにお金を使うようになったものだ。今までが使わなさすぎなので、世間一般と比べてオシャレだとは口が裂けても言えないが……でも少なくとも以前の自分と比べると格段に身だしなみが整った。

しかも、レディースファッションを買うようになった。

これは大きな変化だ。考えてみて欲しい、見た目も(性自認も)男性の人間が、レディースファッションの専門店に入る様子を。最近はようやく(こんな見た目になれたので)緊張感もなく入って試着も出来るようになったが、普段から街中の視線を自分への軽蔑と思わずにいられない陰キャが、女性アパレル店員に「いらっしゃいませ」と言われただけなのに(何しに来たんですか?あ、プレゼント用ですか?うちの服買えるお金ありますか?)という意味に解釈してしまうオタク男性が、堂々と服を選べるようになるまでの心と見た目の変化を。

↑つい2、3年前まで、服屋に入るだけで精神を摩耗してその日動けなくなるほどのダメージを受けていたのだ。それが今や毎週と言っていいほどファッションフロアに通うようになった。


メイクをするようになった経緯についてはこちらの記事に書いているので、是非読んでみて欲しい。

以降は「なんやかんやあって、メイクするようになった男性」という前提で、↑の記事ではさらっと触れるだけだったファッションについて深堀りする(といっても、あくまでファッション素人の成長譚であって、決してファッション詳しい人の解説とかではないので、お手柔らかに)。



「服を買いに行く服がない」問題

よく言われるように、服を買いに行くには、試着というプロセスも含めて「こいつ本当にこれを着る人間なのか」という視線に耐える必要があり、そのために最低限の資格があると見られそうな服、を着ている必要がある。

昨今はユニクロでも「最低限の資格」みたいな服は十分に手に入る、良い時代になった。というわけで、まず第1ステップとしては「ユニクロで、ちょっとオシャレなラインの服を買うこと」(この時買ったのはJ+と言われてたけど、今はまた別の名前で色々ある)、だった。自分の場合。

※この記事では以降もお見苦しい妖怪みたいな写真が出てきますが、成長の過程なのでご容赦ください。もし妖怪がキレイに見えたとしても、それはアプリの加工によるものであって、私自身のものではありません。

※最初の完成形の写真も多少のレタッチはしてるので、実際に会うと妖怪の可能性があります。ご承知おきください。

しかしやはり、ユニクロの服しか買っていなかった時期には、デパートのセレクトショップ、さらにはレディースファッションのお店にはなかなか近づきがたかった。

今の「完成形」を見た人からは「そんなわけ」と言われるかもしれない。私自身、振り返れば「なんであんなにビビってたんだろう」と思うが、自分で忘れてしまう前にちゃんと書いておきたい。マジでビビってた。横目でチラチラとお店の服を見ながら、店員に話しかけられたらどうしようという羞恥心で居ても立っていられず、値段のタグを探しながら挙動不審になるしかなかった。陰キャそのもののムーブをしていたのである。

しかしどうやら、興味だけはあった。今まで服を全く買っていなかったので興味がないと思いこんでいたが、それは「男性に合わせた、男性的な服」のラインナップに全く惹かれておらず、一方で、「女性向け、あるいはユニセックス向けの、カッコいい服」には興味があるけど、遠すぎて手がでなかっただけだった。

鮮やかな赤色のコート、フレアパンツの美しいラインの広がり、あるいはクロップドジャケットハイウェストパンツとの組み合わせ、そういったスタイルに密かに憧れがあった、ようだった。おそらくはアニメやゲームに登場するキャラクターたちの服装からの影響がある。もちろん、こんな専門用語(!)は当時知る由もなく、店員になんと聞けば良いかもわからない状態。


メイクを覚えて、オシャレなお店の店員さんに頼る

最低限の服を手に入れたら、まずは何もわからなくてもお店に行って店員さんに頼るしかない。それには勇気がいる。わかるよ、一般的な陰キャ男性にとって、女性アパレル店員なんてシンボルエンカウント方式のエネミーと大して変わらない危険な存在だということは。しかもこっちが後ろ向いてるとAMBUSHしてきて「何かお探しですか?」などと先制攻撃を仕掛けられ、「えっ……上着……?(※トップスという言葉が出てこない)」などとミスを誘われて致命的なコミュニケーションダメージを受ける可能性がある。

だから服屋には近づきたくない、のだが、そこはある程度覚悟を決めるしかない。とりあえず遠目にお店の雰囲気を見て、「このお店なら、何か似合うものがありそう」という所のアタリをつける。自分の場合はLui'sやJUNREDなどシンプル目のメンズ(orユニセックス)ブランド。そこで話しかけられる覚悟を決める、あるいは、こちらから「今着てるこれに合わせる服が欲しいんですけど!」と先制攻撃を仕掛けるのも手だ。

ユニクロの服という基本装備に加えて、少しメイクを覚えるのも、こうしたエネミーに対する防御力として働いたような気がする。BBクリームなどのベースメイクをするだけで、とりあえず「最低限キレイに見せようとしてます」という防御表示状態となり、耐性が付与される。

そんな感じで思い切ってエネミーのいるフィールド(※アパレル店)に飛び込み、店員さんを味方につけよう。自分にとって思い出深いのが、この七分袖の服と出会った時。

これを買ったときのアパレルの店員さんがすごく接客上手で、見た目ギャルっぽい(=自分とは服装の方向性がそこまで合うわけじゃない)方だったけど、その時に(後述する)肩幅問題とかにまだ気づいてない自分が「(華奢に見られたくて)小さいトップスを探してます」等とトンチンカンな事を言ったのに、「いや、オーバーサイズが合います!」と七分袖のキレイなシャツを選んできて、さらに「その上にこれ羽織ったら完璧です!」と黒のロングシャツを持ってきてくれて、それが一発でスタイリングとして完成されていて、感動した記憶が残っている。

この日から私のファッション人生が始まったと言っても過言ではない。アパレル店員さんって買わせれば何でもいいから買わせたい服を着せて「似合ってますね~」と嘘を言ってる……んじゃないんだ!(※偏見&被害妄想)(※わりとちゃんと、ダメな場合はうーんという反応をする)という事がようやく理解できた日でもある。

鮮明に覚えているのが、「普段どれくらい服見に来られるんですか~?」という接客トークに対して自分が「服を見るのは年に1回とか……下手するとそれ以下かもしれない」と答えていた事。それくらいファッションというのは自分から遠い世界だった。しかし、一歩踏み出した自分の勇気に、見事に応えてくれた店員さんがいたことで、1人の道が拓けたわけだ。


「あの服ばっかり着ている」問題

オシャレな服を買うと、困ったことに他の全ての服がダサく見えてしまう。なんで俺は今までこんなものを着ていたんだろう。もう「違う自分」になった気分でいる。しかし、持っているのはその服だけ。どこかに出かけるたびに同じ服を着る。あれ?こいつ他の服持ってないのか?

というわけで、十分にオシャレな「服を買いに行くための服」を手に入れたら、それを取っ掛かりに、どころか、それが「早く他の服を探せ」と急き立ててくるのである。運命の流転が始まった。

とにかく、オーバーサイズのシャツとか、コクーンパンツやらワイドパンツやら、体型をカバーしてキレイに見えるものを色々買っていった。シャツはほんとに、XLとかXXLみたいな、ある限りデカいサイズを選ぶこともあった。ずっと「自分は細いからS」と選んでいたのとは大違いである(そのダサさに気がついていなかった)(これも人による&時代によります)。


「ネットで買うと丈が合わない」問題

ブランド公式サイトやZOZOTOWNなどからのネット通販も利用した。

試着しなくても、なんとなく何が似合うかがわかってきた(つもりでいた)し、試着するとそれはそれで買わされそうになるプレッシャーとか、試着することに対する罪悪感(「穢れ」のイメージ)が、まだ残っていた。

そんなわけで、ネットで買ったものの中にも大正解で似合ってくれたものもあれば、

試着しないで買った結果、体型が合わずに後悔することが何度かあった。とくに問題となるのが肩幅

これも結局、問題の肩幅を隠してなんとか着てはいるのだが、買う時に見たような女性モデルの「小さい上半身+広がりのある下半身」みたいなバランスにはならなかった

念の為、私は男性の中でもとくに華奢で肩幅も小さい部類に入ると思われる。身長は170cm(嘘です169cmです)体重は当時48キロ(今は50キロ)、BMIは16.6で適正範囲下限の18.5を大きく下回っている。そんな「めっちゃ華奢な男性」でさえ、「一般的な女性」より体格が大きい、ということだ。

なのでこの時点ではまだ、「ブランドの服」は買えても「レディースの服」を買って成功した経験が、少なかった。


「モード系」との出会い

そんな折に出会ったのが「モード系」ファッションのお店。私の場合はUNITED TOKYO。

レディースの服に興味があると言っても、女装がしたかったわけではなく(スカートとかフリル系の服には全く興味がなかった)、あくまで「男性でカッコよく着れる服」を探していた。ファッションフロアをうろついていると、レディースファッションの中にも色々なタイプがあることがわかってくる。カジュアル系、ストリート系、きれいめ系、そんな中で自分に合うと思ったのが(当時その用語も知らなかった)「モード系」だった。説明は難しいが、ジェンダーレスだったり、シンプル、ミニマムで余計な情報がなく、シルエット等で個性的な特徴を出す、そんな感じ。

↑の写真でも穿いているUNITED TOKYOの「袴パンツ」シリーズは形がマジですごくて、「体の7割が足に見える詐欺パンツ」と呼ばれている。


ブランドって何が違うの?

恥ずかしい事を言うけど、そもそも、服のお店によって違う系統のお洋服がある、って知ってました?知ってましたか。そうですか。

でも、例えばゲーム知らない人が、スクエニとバンナムとカプコンのゲームって違いわかる?って言われたら、何もわからないと思う(私はわかりますよ、開発がプラチナゲームズかどうかもわかります)。そんなの知らない人にとっては全部「ゲーム売ってる所」じゃん。服屋さんだって、初見勢からすると、どのお店にもシャツがあってパンツがあってジャケットがあって、全部「服を置いてる店」でしかない。何が違うのかよく見ないとわからない上に、値段を見ると桁が違ったりして余計理解に苦しむことになる。

しかも服屋さんってゲーム業界でいうパブリッシャーであってデベロッパー(実際作ってる所)が別々のものをセレクトして出してるお店がほとんどだから、似たようなものを他のお店で見ることもあって、混乱する。

その点で私はファッション初心者の気持ちがよくわかる。そして今ならはっきり言える。着ればわかる。試着してみたら、高い服の何が高い所以なのか、少しずつ体感できる。肩幅や袖の長さ、首元や袖口の広さ、縫製のライン一つ、タック一つ、全体的な大きさと、部分的なパーツとの比率、そして何より生地の手触り。「これがこのブランドの服か」というのがわかってくる。そしてお店ごとに、どんなシルエットを目指しているのか、どんなパーツで勝負しているのか、の傾向が掴めてくる。すると、それまで全部同じ「シャツ」に見えていたものが、いつの間にか欲しいものとそうでないものの見分けがつくようになってたりする。

UNITED TOKYOはメンズのラインもシンプルで着やすく、これで雰囲気変わったオタクの友達もいるので、服に1,2万円かける余裕の出てきた陰キャ男性の方にはオススメです→UNITED TOKYO>メンズ>トップス


レディースファッションの道が拓ける

そんなわけでようやく、レディースファッションのお店にも似合うブランドをいくつか見つけて、度々通うようになっていった。↓の写真で上下揃えているCAST:(キャストコロン)というお店にも、よくお世話になっている。オフィスカジュアルまで対応する大人の女性向けブランド。

さっき紹介したUNITED TOKYOもだけど、女子アナがこのブランドの服を着ている事が結構な確率である。TVを見ていたら「今のアナウンサーさん、あなたと同じ服着てたよ!」と妻が気づく事が何度かあった。

ありがたいことに、レディースのアパレル店員さんから、怪訝な目で見られたりお客じゃない扱いを受けたり……などということは、本当に無かった。女性が男性ばかりの職場に行ってあれこれとセクハラを受けることが未だ無くなってはいない今日、逆に男性が女性ばかりの空間に行ってあれこれ苦労をする事は十分にありえるし、実際、環境面での苦労とかは色々あった。しかし、そこで出会う人に傷つけられたということは、幸運にしてか、一度もなかった。これには、ファッションの現場で(内心はどうあれ)私を歓迎してくれて、試着も含めて快く対応してくれた女性アパレル店員の皆様に感謝申し上げたい。

ちなみに、男性でレディースファッションを着る人は私の周りでは見たことがないけれど、実際にはそのような男性はそこそこの確率でいる、のだと思う。だから店員さんもそういう「たまにいるタイプの1人」として扱ってくれたのではないだろうか。

なので、レディースファッションに憧れがある男性諸君、いきなり行くのは難しくても、諦めなくて良い。少しずつ段階を踏んで、自信がついてきたら、堂々と入って試着して良い。ただし体型によってマジで入らない服が稀にあるので服を壊さないようにだけ気をつけてね。私ですら頭がデカすぎて通らなかった服とかあるから。


「男子トイレに入れない」問題

人には感謝しているが、環境には黙っていられない事がある。これだけはハッキリと、「私は怒っている」「私は困っている」と言っておきたい。それが男子トイレの問題である。

こんな姿になってからというもの、徐々にではあるが、男子トイレに入りづらくなっていった。それも去年くらいまで(メイクの記事を書く頃まで)は、まだ「女性と勘違いされて周囲に迷惑をかけそう」「メイクする場所がなくて困る」といった程度で済んでいた(それでも十分困ってた)。

だがここ1年の変化でさらにそれが悪化し、男子トイレで小便器を使うことはもう絶対にありえない状態となった。

理由としては単純に、見た目の女性度が上がったこと。以前はメイクや髪型など、まだ「男でもいろんな人がいるよね」で済ませられるレベルだったものが、服装までとなると全身の9割が女性的に見えるため、咄嗟の判断でこれを「男かもしれない」と想定する事が困難になってくる。

またそもそも服の構造上、小便器に対してアレを露出することが不可能である、または、尿が付着してしまう事を防げないようなシルエットの服装がレディースにはとても多い。それは男性用小便器など使う前提ではないから当然なのだが、当然として良いのは自由な服装の方であってせせこましい小便器の方ではない。

前述の袴パンツなんかは完全に脱がないと無理だし、構造上はチャックを開けるボトムスであっても上からジレやジャケットなどが少しでもオーバーな形で被っていると、やはり脱ぐしかない。↓の服は男性が着ても何の問題もなさそうな形をしているが、いずれもトイレは個室に入るしかなくなる

こうして見ると、男子トイレ(の小便器)を使うという条件を課されただけで、いかに男性のファッションの幅が制限されていたのかに、愕然とする。そして、それは多くの男性にとって未だ自覚されてもいない。ズボンにチャックがあるのはもちろんのこと、それが手間なく開ける形で(つまりその上からデザイン的に布を重ねたりできない)、かつその上に着るものも下半身にかからない形で、なぜか誰も見せたくもない陰部をいつでも露出可能な構造に規定されるという不便および屈辱を強いられているわけだ。

私自身はスカートは穿かないが、シス男性がスカートを穿いてはいけないとする特段の理由もないのであれば、やはりスカートで小便器は使えない。

じゃあどうするのか?当然個室に並ぶ。女性より並んでないと思われているかもしれないがそんなことはなく、小便器の面積効率が高いだけで、個室はむしろ少ない場合もある。そして私のような場合は小便をするのにも個室に並ぶ必要が出てくる。

さらに厄介なのは、男子トイレの個室に並ぶ列の先頭というのは、トイレの外ではなく、内部にある事だ。どういうことか?女性トイレは個室のみだから列は長くても1列だと思うが、男性トイレは個室と小便器で2列になり、その分岐は内部で発生する。すると、個室を使いたいだけなのに、男性トイレの中で佇む、後ろから見たらほぼ女性の不審者が誕生するのである。そのため、場合によっては列に並ぶのよりももっとひどく、「誰も並んでいなくて人目を気にせず入れるトイレがないか、商業施設の端から端まで、時には別の建物まで、尿意を我慢しながら探し歩く」羽目になったりする。これはあまりに悲しい出来事だったので、以来、外出先では常にどこか空いているトイレがないか、そもそもトイレに行きたくならないように、など気を回す事が増えた。


「男性用トイレ」と、「女性用トイレ」の面積が同じ。何が問題?

そんなわけで、最近目にする以下の新聞広告には嫌気がさした。そして中身を読んで尚更、女性ばかりがジェンダー問題をリードすることの危険性というか、想像力の限界というものを感じた。

先に言っておくと、この問題提起が不要だというわけではない。女性トイレの行列問題に着目し、データを積み上げて諸外国の議論などとともにまとめて設備の更新を迫るのは素晴らしい仕事だ。

だが、これで「十分」ではない。なぜなら、この提言は女性の目線でのニーズを集めたに過ぎず、男性の目線、とくに前述の私のような既存の男性と違う価値観の人間を含む男性側の事情やニーズについて、全く言及していないからだ。

トイレを出ると入り口の「トイレ案内図」が目に入った。数えると、男性用トイレには小便器4、個室3。一方、女性用は個室4。驚いた。「女性は衣類を上げ下げする時間が必要で、生理の際はナプキンの交換などで時間がかかる。なのに数が少ないなんて」
(中略)
百瀬さんは言う。「面積が同じであれば『平等』かもしれないが、『公平』とは男女ともに待ち時間が同じになることでは? せめて便器数を男女同数にしてほしい

「なぜ女性トイレだけ行列? 706カ所調べてみたら…見えた男女格差」より

男性側に便器が7個あるなら女性側にも7個は必要だ、というのは理解できる……いや待ってくれ。男性側の数には「小便器」なる、現代の倫理観からすると到底是認できないはずなのに、なぜか「男がそれを良しとしてきた」「男性社会だから男は困っていない」という暗黙の前提によって無視され続けている存在がカウントに含まれているではないか?「女性は衣類を上げ下げする時間が必要」と書かれているが、男性が衣類を上げ下げする必要がないものしか着ることを(環境によって)許されていなかった、という構造もそこから見えてくる。

女性が男性と同数のトイレを求めるのは当然である。であれば、男性が女性と同等の、清潔感および隔離された安全性があり、「チャック付きのズボン」という服装以外も許される個室を求めることも、当然ではないか。なぜ男性は、あの不便で不快で不潔な小便器でも、数さえあれば良い生き物、とされ続けているのだろうか

以下のスレッドは、こうした問題に対する現実を見事にえぐり出していて、是非一読願いたいため、ここに引用させていただく。

一件遠回りに見えるけれども、このような施策が問題解決につながると思っている。 不潔な男子トイレは、ホモソーシャルな社会の象徴だと見なされることがあるが、それは少々無理のある議論ではなかろうか。
例えばポール・プレシアドは、男子トイレの「汚らしさと臭さは、厳密にホモソーシャルな関係のあり方に対応している」「このサークルのなかで、異性愛のあらゆる表象の外部で、密かに男たちは自由に見つめ合い、触り合い、彼ら自身の体液におぼれていた」と述べているけれども、この手の「クィア・リーディング」は反証不可能なものだし、ほとんどの男性は汚いトイレよりきれいなトイレを望むと考えてはなぜいけないのか(都心部のオフィスにある男子トイレは工事現場のそれに比べて大変清潔だが、エリートサラリーマンは肉体労働者に比べてより「リベラル」なのだろうか?)。
ほとんどの男(それはシス男性と等値されている)の身体は性的に価値がないか、あるいは有害であり、保護に値するものではない、という前提があるからこそこうなっているのではないのか。男性用のトイレや更衣室、浴場に女性スタッフが清掃に入る場所がいまだに存在しているのはなぜか(逆があり得ないのはもちろんだが、スタッフにとっても不快な労働環境でしかないだろう)。
「プライベートゾーン」がどうこうといった性教育を通して個々の「男=シス男性」を教育したところで何が変わるのか。日常的に粗悪な環境に置かれながら、自分の身体の「価値」なるものをそもそも自覚できないためにその粗悪さ自体が分からないような者たちが、どうして他人の身体を尊重することの意味を理解できるだろうか(私は傾向の話をしているのである)。
その一方では、女(それはシス女性と同じものだと見なされている)の身体には性的な意味が序列をつけて限界まで付与される。「女=シス女性」たちはいわば大切な商品として清潔安全な空間に囲い込まれ、その「専用スペース」に侵入する強盗のことに日々怯えながら、商品であるがゆえに労働者になることは許されず(労働者=男になることは身体から性的な価値をはぎ取ることだが、女がそうすることは「定義上」不可能)、日々トイレの前に長蛇の列を成す。本当に馬鹿げてはいないだろうか(怒りに任せて雑なことを言っている気がしたので唐突に終了)
(引用は、プレシアド(2022)『あなたがたに話す私はモンスター』藤本一勇訳、法政大学出版局、32-33頁)

小夏氏によるスレッドより引用

朝日新聞の問題の記事にも、最後は京都大学名誉教授による以下の言葉を引用し、バランスを取りながら締めくくられている。

「様々な設備が『平均的な男性』基準でつくられてきた。長年放置されてきたゆがみに社会がやっと気づき、少しずつ動き始めた。性的マイノリティーや障害がある人らを含め、多様なニーズをくみ取りながら、丁寧に設備を整える必要がある」

「なぜ女性トイレだけ行列? 706カ所調べてみたら…見えた男女格差」より

既存の設備・環境に不満足なのは女性だけではない。性的マイノリティーの人々……だけでも終わらない。私は自認として性的マイノリティではなくシス男性である(他人からどう見られ・定義されるかは知らないが)。そして、そもそも「平均的な男性」であっても、小便器に何の文句もないということはない、あるいは、その文句すら感じるに値しない存在だと、社会に思い込まされているという問題がある。

この件について女性だけの意見を聞き取って政治が動き「ジェンダーギャップが解消されました」などとデカい顔をされたら、たまったものではない。すべてを一気には出来ないにせよ、マイノリティに限らず、男性側も抱えている問題があるということは、当事者として強く言っておきたい。

念の為、女性ばかりが想像力や配慮が足りないなどと言うつもりはない。私だって女性の事はわからない。そもそも異性のトイレに入る人はいないのでわからないのが当然だ。他人や他属性の人のことは十分にわからないからこそ、当事者が声を上げる必要があるし、それ以外の人は、少なくとも「自分はわかっていない部分がある」ことを前提に、そうした提言を受け入れて一緒に世の中を改善していけると良い。


「インナーウェアどうする」問題

何にせよ、色んな問題を乗り越えて(トイレ問題は残ったままだが)レディースファッションの選択肢が増えたことで、多様な可能性が拓けた。私はようやく、自分の着たいと思っていた服を見つけられるようになった!

メンズファッションは、「私に似合う服」(&私が買える値段の服)という範囲で言えばだが、とても狭く画一的なものに見えた。レディース向けとされているものを自分なりに取り入れることによって、オシャレを楽しめるようになった。

実はここで一緒に超える必要があった小さな問題が「インナーウェア」である。↑の服を見てもらうと、胸元が大きく開いているのがわかる。一般的な男性向けのインナーを着ると、完全にはみ出てしまう。

以下の男女のヒートテックを比べても明らかなように、女性向けのものは男性よりも大幅に、とても大幅に鎖骨のあたりの肌(いわゆる「デコルテ」)を魅せる構造になっている。

なので私も、ユニクロで女性向けのこういったインナーを買っている。男性向けだとSでも着れるが、女性向けだとLサイズでちょうど良い。買ってから驚いたのは、肩周りが広々としているにも関わらず、お腹周りはキュッと締め付けられる感覚がある事だ。男性向けのインナーを着ていて肌にぴたっとつくような感覚は無かった。女性は逆に男性のインナーを着ると楽でびっくりするかもしれない。とにかく、インナーの時点から「男性は四角いシルエット」「女性は▽のシルエット」と規定されているような実感があった。

これで最低限、レディースの服が着れるようにはなったのだが……私にとって最後にして究極の問いがここで立ち現れる。


最終問題「男がキャミソールを着て良いのか」

「キャミソールを着てみたい」といった気持ちは当初まったく無かった。形状としては「胸を隠して、それ以外を露出する」もので、つまり前提として「胸を隠す必要がない人」が着るものではないというか、むしろ着るだけで「そこに隠すべきもの=胸があるんですか?」といった誤認を生じさせかねないものである。そのため、(こんなんで)シス男性の自認である自分の選択肢には入っていなかった。

のだが……

冒頭のプロフィール写真でも着ている通り、「シアー素材」という透け感のある洋服がレディース向けには色々あって、これがとても美しくて自分でも取り入れたくて、何着か買っていた。しかし、これがどーーーーーしても、Uネックのインナーシャツでは(ダメではないけど)なんかダサい、合ってない、という感覚が拭えない。

服とは恐ろしいもので、一つオシャレなものを買うと、「この形なら、これがこの位置にないとおかしい」「この雰囲気なら、これもつけてないとおかしい」という文脈が次々に呼び出され、それを揃えるまでは「服に着せられている」状態を脱することが出来ないのである。

シアー素材の服には、他にも上半身の肌を見せるような服では、Uネックで肌を覆うのはなんか変で(それを狙ってやる人を否定はしないが)、以下のように「胸元あたりに布があって、それ以外は紐しかない」という構造が必要だと、服が呼びかけてくるのだ。「胸を隠さなきゃ」といった元来の目的とは違うところで、すでに文化として刻まれたコードが美しさを規定してくるのである。

レディースの服を着るようになったとはいえ、これには流石に抵抗感があった。なにせ、下着である。そもそも、本当に男が試着して良いのだろうか?上着ですら最初はレディースを試着するのに男性としての穢れを感じて申し訳なく思っていたのに、下着を試着したいなどと言えば、下手をすれば通報されても文句は言えないかもしれない。

ただ結果的には、試着もできた。ユニクロで言えば何も特別なことではなく通常サービスの一貫で袋から出してくれたし、レディースファッションのお店でも(そこのお店は)当たり前の事のように試着させてもらえた。しかも「(胸)パッドいりますか?いらなければ取っちゃいますね」といった所までケアしてもらえた(不要なので当然、取ってもらった)。

自分が既にこんな見た目に近づいていたから許されたのかもしれない。違う男性が同じことをして、どの程度まですんなり許されるのか、私にはわからないし保証はしかねる。が、少なくとも、「私はこんな見た目を目指している」という事が伝わる服装をしていれば、何ら障害はなかった。まさに、「服を買うための服」の連鎖が続いた結果である。

ちなみに、私はこの時点で既に脇を医療脱毛済みだった。ヒゲ脱毛も3年半通ってこの前ようやく完了した。


キャミソールは、これも買ってみて本当に驚いた。シアー素材のように透け感があったり、↑のジャケットみたいにメッシュ構造だったり、何なら普通のジャケットにでも、何にでも合わせるとシンプルなスタイルとして完成される。キャミソールという選択肢を取り入れることで、レディースファッションの眠っていた可能性が何倍にも広がる感覚があった。

ただし!もちろん、あまりにも女性的に見える、という(自分にとっての)デメリットはある。妻からも、「うーんこれは……女の子ですねぇ……」と感想をもらう程度には。なので、買った直後は「どこになら着ていけるのか」と少なからず悩んでいたのだが、何度か着ているうちに「アリでしょ」「アリってことにしよう」「逆に何がいけないんだ?勘違いする奴が悪い」と自信をつけていった。

というわけでプロフィール写真でも、(本当は肩幅隠したほうがスタイルとしては良いんだけど)「キャミソール着てるぜ!」感を出したくて、わざわざキャミソール+シアー素材だけで撮ってもらった。

女性的な感じが強調されてインパクトがある!これは狙い通り。

以下のように肩幅隠すことで中性的なラインに調整したりもできる。

細かい所で言うと、ベルトのバックルがシルバーだったり、パンツスタイルという所でメンズっぽさを残しつつ、シアー素材やバッグのデザイン、髪型やメイクなどでも女性らしさを取り入れたり、入れなかったり、その日のなりたい方向性によって男性~中性~女性のバランスを取っている。


こんな感じで、ここ3年くらいのファッション大変遷が一段落した。

もっと若いうちに(肌がキレイでメイクにこんな手間がかからないうちに)可能性に気づいてたかった、という気持ちはなくもない。が、37歳というアラフォーもいいところの現在、スキンケアを頑張りながら、こういう生き方を見つけられた事は幸福に感じている。

自分の場合は、ジェンダーレスな見た目になりたいという気持ちはあったものの、別に男であることが嫌だとも思っておらず、女性になりたいと思っているわけでもない。ただ、「なんか髪伸ばしてメイク覚えたらジョブが1個増えて装備できるものがめちゃくちゃ増えたぞ!これを装備したら強そう!これとこれはシナジーあるからつけなきゃ損!」みたいな感じでゲーム的に楽しんでいる側面があるように思える。なので今回は一旦行ける所まで(女性側に)行った所でプロフィール写真を撮り、ここからまた男性的なファッションに戻っていくこともありえる。


最後に本当にどうしようもない真理を一つ書いておく。

私がファッションに目覚めたのは、センスが開花したとか時代がどうこうとか、そういう事が原因ではない。お金に余裕ができたからだ。いや本当、貯金が100万もないレベルをうろついていた時代に、1万以上する服を平常心で選ぶことは出来ない(ファッションの優先度が高い人ならそれでも買うんだろうけど、自分はゲームが優先だった)。

独立してフリーで仕事を請けるようになり、(お陰様で)貯金が1000万を超えたあたりから、1万円の消費に対する心の重みがまるで変わった。ので、服を買うための気持ちの余裕を得るために、とりあえず貯金しろ、というのが結論になるかもしれない。

こんなのでも誰かの参考になれば幸いです。


良かったら続けてこちらの記事もどうぞ。


著者:https://x.com/geekdrums

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