決算を回してみて実感したこと 〜作る側はこんなに考えることが多い〜
4月も半ばに入り、親会社の関連会社(銀行系)の決算業務も終盤に入ってきました。
3月31日までにすべての会計仕訳の入力が完了し、会計事務所の決算訪問を受けます。そこで消費税の精算、暫定版決算書の作成、その他必要資料の準備をお願いする形です。
暫定決算書はマネーフォワードから出力。内訳書や固定資産台帳シートなどは会計事務所が作成して、総務の私にメールで送ってくれます。その後、確定版の決算書や確認シートを総合企画部の財務グループに提出。
4月17日頃に会計事務所が確定仕訳を入力し、確定版決算書を作成・提出。5月末までには消費税申告書の提出と納付、親会社との未収金・未払金の精算、法人税・地方税の見込み納付などをこなします。
6月の株主総会後には法人税・地方税の電子申告。そして7月にはまた次の四半期決算……と、決算は本当に「ずっと続いていく」仕事です。見込みと実績の誤差を追いかけながら、数字を固めていく日々。
そんな中、ふと思うんです。
「資金繰りを気にしなくていい上場企業グループの連結子会社なのに、経費処理もマネーフォワードにかなり任せている状態なのに……意外と考えることが多いな」と。
昔、銀行員時代に仲良くしていた運送会社の総務(経理)部長さんに言われた言葉を思い出します。
「銀行員は決算書は見れるけど、俺たちと同じように決算を作ってるわけじゃないよな」
本当にその通りだな、と今は痛感しています。
決算書を「見る側」と「作る側」では、全然違うんです。
銀行の審査担当やベテラン行員は、決算書と科目明細、前期比の増減、資金の入出金を突き合わせて、資金需要のネタや粉飾の兆候を拾っていきます。あれは確かに高度なテクニックです。
でも、実際に作っている側からすると、総勘定元帳を見れば一目瞭然なんですよね。
借方・貸方がしっかり紐づいていて、払い先と受け取り先が明確。CSVで出力して、売り掛け金や仕入れ先でフィルターをかけると、1年間でどことどれだけ取引していたかが瞬時にわかります。資金繰りの条件も見えてくる。
銀行審査で「決算書と資金繰り表ください」と言われるより、総勘定元帳のCSVをくださいと言われた方が、よっぽど本質が伝わるんじゃないか——そんな「目から鱗」の気づきがありました。
決算書を見る側は「きれいにまとまった数字」を見る。でも作る側は、その裏側の生々しい取引の動きや、例外処理の積み重ねを全部抱えている。温度差はここにあるんだな、と。
ちなみに、私が好きな作家・椎名誠さんが昔やっていた「本の雑誌」という会社で、経理や総務を全部やっていたのが郡ようこさん(作家)です。彼女は作家になる前、長くそうした裏方仕事を回していました。椎名誠の『新宿熱風どかどか団』(新潮文庫)には、郡ようこさんの奮闘が実に魅力的に描かれています。
真面目にコツコツと総務・経理を回していた人が、後に作家になっていく——そんな話を読むと、総務の仕事って「地味だけど、意外と深いな」と改めて思います。
私も今、総務管理のおじさんとして、この「ALLから事業を引き算した残り」の業務を一つずつ消化しています。
決算は地味で、ルーチンっぽく見えます。でも、数字の裏側にある現実を丁寧に拾っていく作業は、組織を支える大事な基盤です。
資金繰りを気にしなくていい環境でも、こうして考えることは多い。ましてや中小企業や実際に銀行と向き合う経理部長さんたちは、もっと大変なんだろうな……と想像します。
決算書を見る側から作る側に変わったこの時間を、前向きに楽しみたいと思います。
