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B2Bフィンテックの砂漠での3年間 - #2 砂漠にて

こちらは全2章の大手外資金融機関からB2Bフィンテックの砂漠への旅の軌跡の第2章目である。第1章(転職編)から読みたいからはこちら。今回は砂漠での効率良い活動の仕方など話せればと思う。

何故砂漠?

「B2Bフィンテック」と言っているが特にはっきりとした定義は見たことがない。ただし基本的にフィンテックというと主に個人向けの送金のサービス、決済のサービス、個人財務管理や資産管理、仮想通貨といった消費者向けのB2Cサービスが皆様思いつくのではないかと思う。

(参考:レタドール社による【最新2019年/カオスマップ】日本の最先端FinTech(フィンテック)企業50選)

ここにリストされているようなキラキラした消費者向けのフィンテックに対してB2Bフィンテックとは金融機関であったり企業向けにサービスを展開しているフィンテック企業である。あまり表に出てこない企業向け分析のアプリであったり、決済であったり、B2B向けロボアドであったり弊社の様なプラットフォームビジネスも存在する。そこで僕が金融機関・企業向けのB2Bのフィンテックのスペースを「砂漠」と表現するのは、製品を作って収益を上げることの難しさにある。ただでさえセキュリティ、コンプライアンスの壁が高い金融機関やノンバンクなどの金融はIT製品やプラットフォームの導入には何か月もしくは何年という時間がかかる。サービスを展開して消費者相手にスケールできるB2Cと違い、B2Bは金融機関、ノンバンクや企業を相手にスケールをしていかないといけないということで、

・顧客の決断、導入に永遠と思われる時間がかかる
・金融であるためセキュリティとコンプライアンスの壁がロッククライミング並みの垂直度である
・そのため POCやトライアルでもかなりの品質が期待される
・B2Bフィンテックだと、上のとても時間・労力がかかるプロジェクトを複数動かしてどんどのスケールしていかないといけない

この条件はとても厳しい組み合わせでスタートアップには人材確保の面からも資金確保の面からもとてもハードルが高く、水が少なく生き延びることができない「砂漠」ということになる。現実問題B2Bフィンテックでの成功企業というのは数もとても少ないし、昨今のコロナの中で残念ながらイノベーションにかかる予算というのは最もマイナスに影響が出るのではないかともいわれている。

(参考:セレント社による「ニューノーマルへの適応:日本とAPACの金融業界におけるCOVID-19インパクト ― 2020年IT予算への影響」)

ただでさえ砂漠なのに水がさらに少なくなっているという状態である。

B2Bフィンテックの砂漠にて:収益化の加速

ではその恐怖の水不足の砂漠の中でどうやって生きていくことができるのか。まずは水少ないまま砂漠を歩く時間を無理やりにでも短くすること。そのためにしているのがJoint Development Program (JDP)である。名前は英語で長いがイメージ的にはシリコンバレーで良く行われている「製品を作る前に売る」である。作る前に「これを作ったら買う」という相手を探してきて先に資金を集めてしまうという事である。当然言うのは簡単だが実行するのはとても難しい。このコンセプトは当然実際の製品なしで営業をして、金融などの相手から製品ができる未来に対して出資を募らないといけないので

・ヘビーな営業のプロセスが一番最初に必要
・実際の完成品なしでコンセプトで売ることが必要
・「この会社、この人たちならちゃんと作れるだろう」と信用してもらえるトラックレコードや人材が必要

など到底簡単ではないが、B2Bフィンテックの砂漠で生き延びるためには必須とも思える進め方である。砂漠でビルを建てるのに水なし、テナントのプランなしで立てるのか、それとも水とテナントのプランありで建てるのかの違いである。せっかく美しいビルが建ってもそこから入るテナントの交渉ではやはり水が足りず死んでしまう。

英語のビデオにはなるもののSymphonyがどのようにJoint Development Program (JDP)を活用しているかをネットでも公開している。Symphonyプラットフォームのテンセント社WeChatやFacebook社WhatsAppとの連携などは、まさにこのJDPのフレームワークを活用して水が少ないB2Bフィンテックの砂漠の中でも効率良く構築されている。

B2Bフィンテックの砂漠にて:要件定義はしない

さて資源を得て今度は製品・機能作りであるがこちらもスピードがとても大事である。その中でとても長い要件定義というプロセスはない。売ったのがコンセプトであるので、そこで顧客との

・UIのどのボタンを押したら何が起こるか
・ボタンがいくつあるべきか
・どのコンポネントがどのような障害に対応しているか
・どのようなソフトウェアスタックになっているか

などなどをエクセルで何百行も定義して顧客のレビュー・承認を取る、というプロセスは存在しない。賛成したコンセプトに基づき、こちらが作ったものは顧客がちゃんと使えるもの(使って好きになれるもの)になるという信用をもらっていないといけない。とにかく信じてもらうしかない。次のセクションでも話すが、そこまで信用をもらえる様な顧客のニーズが理解できる人材、そしてそれを現実に作ることができる人材を抱えていること。それが証明できて顧客に信用してもらえるトラックレコードというのは必須である。

ただ要件定義という最初にすべて決める巨大な定義のプロセスがない、というだけで作りながら顧客のフィードバックを聞かないという意味では全くない。先ほど話したJoint Development Program(JDP)で一緒に作っている顧客とはPOC版、ベータ版、本番キャンディデート版などで使ってみてのフィードバックをとても速いサイクルで取りながら(時には毎週顧客に見せるリリースをしながらなど)開発をしている。

B2Bフィンテックの砂漠にて:誰と旅をするか

また当然の話であるが、その砂漠という究極の難コンディションの場所を旅をするという事で一緒に旅をするメンバーというのはとても大事である。

・ビジョンやコンセプトを売れる人材、完成品がなくても売れる人材
・毎週色々な状況が変わってもストレスに耐えられる人材
・顧客が気づいてないニーズすら想像することができる金融業界もしくは他業界での経験と想像力
・作る前に何が可能で、何が困難かなどを創造ができる経験と想像力
・心を隠さずはっきり言いたいことを言い、反対意見などもオープンに交わすことができる相手

など、リストすればするほど「そんな人たちいる?」という無茶なリストである。ただしここで妥協をするとメンバー全員が砂漠のど真ん中で立ち往生することになりかねない。なので「企業で働くのとスタートアップで働くのどっちが良い?」みたいなキャリア論をみるがどちらもものすごい向き不向きがありスタートアップの仕事はどう考えても誰でもエンジョイできるものではないという事は書いておく。

ラッキーなことにSymphonyの旅では人材に恵まれた。あとは1章でも書いた通り、そのメンバーで

・ぶれずにミッションをひたすら言い続ける、伝え続ける
・何に集中するのかはっきりする、何に集中しないのかをはっきりする
・決めたらしっかりやる

など砂漠の資源の少ない中でひたすら鬼の効率化を苦しみながら苦しみながら苦しみながら続け歩いたり走ったりするのみである。他の機会にこれも書いてみても面白いと思うが色々な意味でSymphonyのメンバーは多様性(人種もそうだがバックグラウンドや過去のキャリアなど)に富んだメンバーで、しょっちゅう意見の違いでぶつかりながら激しく議論をしながら色々なことを進めている。最高なものを作り上げるには組織に多様性というのは絶対必要だと思う。

砂漠での大きな町づくり

そして収益化の加速、要件定義をしないなど、ビジネスの加速をすることによりSymphonyが急速に進めているのはB2Bフィンテックの「砂漠」に水を供給できる大きな町(プラットフォーム)をつくること、である。我々が壮大な旅をしている「砂漠」を他の人たちが旅をする必要が少なくなればと思って、金融とフィンテックで簡単にPOCができるプラットフォームを作れればなど、Symphonyのプラットフォームもアップストアを持っているので砂漠の上に色々な人達がエコシステムを育てることができるオアシスになればと思っている。世界中の金融と世界中のフィンテックが乗っている共通プラットフォームを作ることができれば

・金融もしくはフィンテックに作られた「ある程度の」セキュリティのスタンダードを確認されたアプリ群を今までよりも簡単にインストールして試すことが可能。
・日本の金融が簡単に世界のフィンテックのソリューションを探すことができる。海外の進んだオルタナティブデータに基づく分析のアプリなども簡単に試すことができる。
・世界の金融も常に情報が足りないと思っている日本の投資の情報を今までより簡単に発信することができる。海外の投資家が喉から手が出るほど欲しいと思っている日本の企業の財務・非財務の様々なデータを英語でなど。

などなど可能にすることができる。砂漠が水のある砂漠になるわけである。Symphonyは2014年設立以来、既に350以上の世界最大の金融機関、そしてこの3年で日本もメガバンク3行、大手証券、運用会社そして「大きな町」を作るのにとても大事であるIT企業、フィンテック企業等の多くのメンバーが町づくりに既に参加している。まだまだ道半ばであるが、金融・フィンテックの「砂漠」の明るい未来に是非期待してほしい。

フィードバックも新しい仲間もお待ちしております

第1章の反響がとても強かったのでちょっとビビッて第2章のトーンを少し弱めようかと思ってけれども、既にある程度書いていたこともあって結構言いたいことをそのまま書きました。是非皆さんの意見も賛成でも反対でも教えてほしいです。SymphonyでGen Ueharaまでメッセージを送ってくれるのが一番ですが、こちらにコメントでもツイッター(@gen0707)経由でも「他にもこんなところを掘り下げてほしかった」などフィードバックを楽しみにしております!

また砂漠での大きな町づくりに興味を持った方、一緒に進めて行きたいと思った企業の方なども是非ご連絡ください。

(あくまでもここに記載されていることは僕の個人としての見解であり、僕が所属したもしくは所属している組織のオフィシャルな見解ではありません。)

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