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教職入門

 教職入門の講義を担当した。教職入門は、学部1年生の講義である。私は、オムニバス方式の二人目として登壇する。私にとっては1回きりの講義ということもあり、毎年、私自身も緊張してしまう。20年以上担当してきたが、いまだ慣れない。教員になることに夢を抱いて入学していただいた1年生を前にして、年々、伝えたいことは膨れあがるばかりだ。でも、ワークショップの時間を必ず30分はとることにしている。最近は、「二列ワーク」と呼んでいるワークショップをする。

  「二列ワーク」は、聴き手と語り手という役割を固定化してペアでの対話を繰り返すものである。互いに自己紹介をしたのち、聴き手は、「どういう教師になりたいのですか?」から始まり、語り手の語りに合わせて、「なるほど、たとえば?」「へえ、そうなんですね。なんでですか?」「いいですね。子どもにとっては、どんな存在ですか?」と質問を繰り返し、語り手の語りを止めずにできるだけ具体的にていねいに共有していくものである。2分ほどしたら、ペアを変えて繰り返す。語り手と聴き手の役割を変えずに4回ほどペア対話を行ったら、語り手と聴き手の関係を入れ替て、繰り返す。
語り手は、同じ話をすることになるのだが、「何度も何度も語っていくうちに、考えを深めることができ」(講義に対する感想より‐以下、かぎ括弧は講義に対する学生の感想より抜粋している)たり、「聴き上手のペアによって、自分もすらすら話していることに気づい」たり、自分はこうなりたいんだなと「自分の考えを再確認するとともに、深く考える」機会となったり、「自分だけでは出せなかった意見が語れて、視野が広がっていく」ことを実感したりしている。

 聴き手は、「教師像は似ていてもきっかけや理由はそれぞれ異なる」ことに気づいたり、「一人ひとりの思いは異なっていて、みんなそれぞれすてきな理由や考えを持っている」ことに気づいたりする。たとえば、「子どもに質問されたときにたくさん回答を持っている先生」といった「自分にはなかった考えに出会えて刺激に」もなっている。あるいは、「教師像を語るときに多くの人が笑顔で語るのを見て、自分もその人の目指す教師像に近づけていけるように、がんばりたいと思った」り、「教師像は似たりよったりの内容だったが、なぜですか?と聴くと、ほんとうにいろいろな経験だったり、考えがあって、教師はものすごく夢を持っている職業だな」と感じたりしている。「理想とする教師像は違っても、そういう先生もいいなということばかりでとてもおもしろかった」や「みんなすばらしい先生になれそうだった」という感想もあった。

 学生は、どういう教師になりたいかという将来展望だけでなく、子どもからどう思われる存在なのかという子どもから見える教師像を考え、自分に欠けていることを自覚し、これから大学で学ぶことを発見していく。しかも、どういう教師になりたいかと自己開示するように相手に自分のことを聞いてもらうというより、どういう教師が増えると学校が変わっていくかを同僚になる同級生が納得するよう相手を説得していかなければならない。あるいは、「質問を掘り下げていくと、具体的な考えは一人ひとり違っていることがおもしろいな」と感じたり、「具体的な例を言えるような考えを持っておきたい」と課題を感じたりするように、正解を探すのではなく、「自分が正しいと思っていた教育観が覆された気分になった」ように、これまで思い込んでいた教育の常識を疑い、多様で多角的で多層的な学びを積み重ねていく、そうした学び続ける教師として大学生活をスタートするのである。

 「どうするか?」を考えるには、「なぜ?」「どうして?」と自問し自分自身の視点を変えなければならないこともある。生活指導は、子どもを注意することでも、子どもに正しさを示すこともでもない。子どもの成長のために叱るという考え方にある、「ために」が押し付けになっていないかと考え、子ども自身はどう成長したいのかを聴いていないことに気づけるか。「子どもがなぜそうした行動をとっていたか。どうしてそう考えるのか。子どもの言動にどのような意味があるか」を考え、自分の囚われや偏りに気づくことができるのか。教師は、自分自身にすでにある子ども観や授業観、あるいは、教師観そのものを更新し続けなければならない。

 教育方法は、講義で伝えるだけでは。これから教師になる学生の身にはならない。自分と似ている考えに違いを見い出したり、異なっている具体的な工夫に同じ考え方を発見したり、学生は多様で多角的なとらえ方ができるように語り合う機会と関係をつくっていく必要がある。そうした学生の可能性が伝わってくるような学生の感想を読み、私自身はあたたかなうれしさがひろがっていくような感覚になりました。将来、子どもたちに選ばれていく教師になることを学生に期待しています。ありがとうございました。

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