「英語が分からなくても楽しい」歌詞よりも音響体験を重視する新世代ラッパーたち
ヒップホップは1980年代末から90年代半ばまでが最初のピークと言える。
その頃は、「黒人コミュニティの過酷な現状やギャング同士の抗争などを社会的メッセージとして伝える」というのがヒップホップの音楽スタイルであり、
リリック(歌詞)が最も重要であるのは当然のことだった。
現代においてのヒップホップ
時を経て2017年、調査会社Nielsenが初めて「ヒップホップ/R&B」がロックを抜いてアメリカで最も聴かれているジャンルになったと報告した。
実際にチャートを見てもその勢いは明らかで、
現代は90年代以来の「第2のピーク」を迎えていると考えて問題ないだろう。
そもそもヒップホップが黒人コミュニティのものだった当時とは異なり、現在では他のメジャー音楽と同列に扱われる。
つまり非黒人も当然のようにヒップホップを聴き、分析し議論する世の中になっているのだ。
では、黒人カルチャー外の人々にも刺さる現代ヒップホップの特徴とは何なのか?
他ジャンルの吸収、クロスオーバー性
現代においては、ヒップホップは伝統的なものに限らない。シーンの代表的なミュージシャンを挙げると、
・Kendrick Lamar ー ジャズ、ネオソウル、ファンク
・Drake - R&B、ポップ、アフロビート、ダンス
・Travis Scott -エレクトロ、サイケデリックロック
・Tyler, the Creator ー ネオソウル、R&B、ファンク、テクノ
・Kanye West -ソウル、ポップ、ロック、インダストリアル、ゴスペル
このように多様な要素が入り込み、たとえ歌詞の意味が分からなくとも、音だけで彼らの個性と世界観を感じ取れる。
もっとも、同じ影響源でもその解釈と作品への取り入れ方はラッパーそれぞれだ。
例えばドレイクはR&Bにおける音の空間性や、内省的で感傷的な雰囲気を取り入れている。
他方でタイラーは、コード進行やアレンジ、コーラスの演出にR&B的特徴を持つ。
声の音響化、意味から感覚への移行
これは、若い世代のミュージシャンにより顕著な傾向だ。ただし、上記に挙げた中でもTravisはここに当てはまると言っていい。
歌詞を伝達するための声ではなく、楽器の一部としての声への役割が変化してきている。
リリックが薄い、もしくは意味を持たないことすら許容され、詩を伝えることよりも「声自体を曲の中でどのように響かせるか」を重要視するラッパーが増えているのだ。
例としては
・Lil Uzi Vert
・Yeat
・Playboi Carti
など。
彼らは25〜30歳で、tiktok等で「バズる」ために短時間で自らの作品を印象付ける方法を学んだ結果、歌詞<サウンドとなっていったのではと考えられる。
そしてそれは、英語を理解できない多くの日本人にとって興味深い傾向だと言えるのではないだろうか?
歌詞の意味を調べずとも、ただ聴くだけで楽しめるというのは、今後USラップが日本に広がる上でポジティブな要素かもしれない。
