うちのマネージャーは最強 しゃーぷ6
第6話
「What’s OMUKOSAN」
「うちの娘どうですか?」
「唯衣、ちゃんとしてるやん〜!」
事務所の応接スペースに、明るい笑い声が響く。
今日、
事務所見学に来ていたのは、武元唯衣のご両親だった。
地方から東京へ来たついでに、
「少しだけ現場も見てみたい」という流れになったらしい。
そして。
なぜか今。
○○が普通に談笑していた。
チーフ:(なんで馴染んでるのよ……)
武元ママ:「唯衣、家じゃほんま適当やのに!」
唯衣:「ちょ、ママ!!」
武元パパ:「部屋とかめちゃくちゃですからねぇ」
唯衣:「やめろや!!」
○○は楽しそうに笑う。さながら、四者面談である。
○○:「え、意外。きっちりしてると思ってた。」
唯衣:「意外ちゃうわ!」
でも。
○○は少し真面目な顔になった。
○○:「でも武元、現場だとめちゃくちゃ周り見てくれるんですよ」
唯衣:「……っ」
○○:「空気悪くなりそうな時、絶対先に動くし」
「後輩もかなり助けられてます」
唯衣の動きが止まる。
武元ママが、嬉しそうに笑った。
武元ママ:「へぇ〜!」
武元パパ:「そんなちゃんとしてるんや」
唯衣:「いやまぁ……普通やし……」
耳まで赤い。
○○は気づかない。
チーフだけが気づいてる。あとなんか、壁の向こうからの気配が凄い。
○○:「あと武元って、なんだかんだ人のこと放っておけないんですよね」
「多分めちゃくちゃ優しいです」
唯衣:「…………」
可哀想に。無自覚な公開処刑もいい所だ。
唯衣が机に突っ伏しそうになってる。
武元ママ:「○○君ほんまよう見てくれてるんやねぇ」
○○:「いや、武元が頑張ってるだけですよ」
武元パパ:「いやいや〜」
そして。
その一言が、全てを終わらせた。
武元パパ:「○○君みたいな人なら、うちの娘任せても安心やなぁ!」
爆弾投下。
○○:「はは……」
否定するのも失礼。
だから苦笑い。
でも。
チーフの背筋が凍る。
チーフ:(社交辞令社交辞令社交辞令社交辞令)
武元ママ:「ほんまほんま!唯衣もよく〇〇さんの話してくれるし!」
唯衣:「ちょっ……!!」
唯衣は顔を覆った。
死ぬほど恥ずかしい。
でも。
否定したら、それはそれで違う。
だって。
好きだから。
嫌なわけじゃないから。
むしろ、かなり…
その時。
少し離れた場所。
メンバー達が一斉にスマホを持ち始めた。
チーフ:(あっ、終わった)
でも奇跡的に。
○○と武元家には聞こえていない。
聞こえてるの、チーフだけ。
向井純葉:「ママ!! 今すぐ東京来て!!」
チーフ:(バカバカバカ!)
純葉:「○○といとちゃん絶対お似合いじゃけぇ!!」
石森璃花:「うん、おじいちゃん家に○○さん連れて帰る」
チーフ:(ナニヲイッテル?)
璃花:「みんなで囲むから」
チーフ:(怖い怖い怖い!)
小田倉麗奈:「お父様? 許嫁制度ありません?」
チーフ:(ねぇよ、どんなお嬢様だよ。)
麗奈:「私かなり向いてると思うんですけど」
チーフ:(向いてるって何?許嫁って才能なの?)
村山美羽:「パパってさ、私どういう人と結婚してほしい?」
チーフ:(突然の電話で聞く質問かそれ?)
美羽:「185cmくらいが理想?」
チーフ:(娘の旦那の身長気にする?ふつう?)
大沼晶保:「お父さーーーん!!」
チーフ:(最後の爆弾来た)
晶保:「○○さん漁師向いてると思う!?」
チーフ:(家業つかせようとしてない?ねぇ?)
晶保:「でも船酔いしそう!!!」
チーフ:(なんか、第1段階クリアしてないか?)
情報量が多い。
多すぎる。
一方その頃。
○○:「武元、ほんと後輩に優しいですよね」
唯衣:「……っ」
○○:「三期も四期も結構頼ってるし」
「あと地味に気遣い細かいんですよ」
唯衣:「も、もうええて!!」
武元ママ:「ふふっ」
武元パパ:「○○君、唯衣のこと好きすぎひん?」
唯衣:「!?!?!?」
○○:「そうかもしれないですね」
唯衣:「〜〜〜〜っっ!!」
唯衣は顔を真っ赤にしたまま、机に突っ伏した。
○○だけは、その後も素直に答えていく、、
チーフはゆっくり天井を見上げた。
——終わりだ。
この男、天然で火種撒き散らかしてる。
その時。
部屋の後ろを、
静かに誰かが通った。
藤吉夏鈴。
無言。
何を言う訳でもない。
○○が机に置きっぱなしにしていた紙コップを、
自然に手に取る。
○○:「あ、夏鈴ありがと」
夏鈴:「……ん」
それだけ。
表情も変わらない。
いつもの夏鈴。
でも。
チーフだけが見てしまった。
夏鈴の手の中。紙コップが。
ぐしゃっ、と静かに潰れていく。
音も立てず。
細い指が、ゆっくり食い込んでいく。
なのに。
夏鈴の顔は、何も変わらない。
ただ静かに。
○○がさっきまで口をつけていた場所を、
親指でなぞっていた。
チーフ:「…………」
怖。
怖い怖い怖い。
夏鈴ってキャップも開けられないほど非力だよね…
夏鈴はそのまま、潰れた紙コップを持って歩き去る。
○○:「夏鈴、捨てといてくれるの助かるー」
夏鈴:「……ん」
チーフは机に突っ伏した。
チーフ:「胃薬……追加で……」
○○:「ほんとに大丈夫ですか?」
チーフ:「誰のせいだと思ってる!?」
パワハラと言われてもいい。
その後、たんこぶのできた○○が目撃された。
