恋愛強者 武元唯衣
武元唯衣とは、腐れ縁だ。
幼稚園。
小学校。
中学校。
そして高校。
全部同じクラス。
もはや呪いのレベルだった。
唯衣「○○ー!」
朝から元気な声。
教室の扉を開けた瞬間、唯衣が飛びついてくる。
僕「うわっ!?」
唯衣「おはよー!」
クラスの中心。
明るくて、うるさくて、よく笑う。
誰とでも仲良くなれる人気者。
そして。
僕を一番揶揄ってくる女。
唯衣「そういえば○○って昔、うちのことお嫁さんにするーって泣きながら言うてたよな!」
僕「それ小さい頃の話だろ!?」
唯衣「えへへ、かわいかったなぁ♡」
最悪だ。
唯衣は昔の話を全部覚えてる。
黒歴史を定期的に掘り返してくる。
しかも楽しそうに。
でも。
僕が唯衣のことを好きだったのは事実だ。
……いや。
正直に言うと、今も好きだけど。
絶対言えない。
⸻
唯衣は距離感が近い。
昼休みになれば僕の机へ来る。
帰り道も当然みたいに一緒。
購買へ行けば。
唯衣「○○、パン買ってきてー!」
人使いも荒い。
なのに。
そんな時間が嫌じゃない自分がいる。
ある日。
クラスの男子が唯衣へ言った。
男子「武元って彼氏おらんの?」
その瞬間。
唯衣は何故か僕の肩へ腕を回した。
唯衣「おるで?」
僕「は?」
教室がざわつく。
唯衣「なー? ○○♡」
僕「いや待っ――」
唯衣「うちの彼やもんな?」
逃がさない笑顔だった。
周りは完全に盛り上がっている。
『え、マジ!?』
『やっぱそうやったん!?』
違う。
違うはずなのに。
唯衣が楽しそうすぎて否定できない。
しかも。
唯衣「○○って昔からうちのこと好きやしなー♡」
僕「言うなって!!」
教室爆笑。
終わった。
人生終わった。
⸻
放課後。
僕は唯衣へ抗議していた。
僕「なんなんだよあれ……!」
唯衣「えー?」
唯衣はケラケラ笑う。
唯衣「別にええやん♪」
僕「良くない!」
唯衣「でもほんまやし」
どきっ、とした。
唯衣は当たり前みたいな顔で続ける。
唯衣「○○、ずーっとうちのこと好きやん」
僕「っ……」
否定できない。
唯衣は昔から、僕のことを全部見透かしてくる。
だから苦手だ。
好きが隠せなくなるから。
すると。
唯衣は急に僕の顔を覗き込んできた。
唯衣「安心し?」
僕「……え?」
唯衣「うち、ずーっと待ってたるから♡」
心臓が跳ねる。
唯衣は嬉しそうに笑った。
唯衣「○○、恥ずかしがり屋やしなー」
「せやから、唯衣ちゃんが待ってたる♡」
ずるい。
そんな風に笑われたら、余計好きになる。
⸻
そして。
さらに恐ろしい事実を知ったのは、その日の夜だった。
母『唯衣ちゃんのお母さんから電話きたよー』
僕「なんで?」
母『結婚式楽しみやねって』
僕「は???」
固まる。
母は普通に続けた。
母『あんたら小さい頃から結婚する約束してたんでしょ?』
僕「してない!!」
……いや。
したかもしれない。
幼稚園くらいで。
記憶曖昧だけど。
その瞬間、スマホが鳴る。
『○○、お母さん同士にもちゃんと言うといたから♡』
唯衣からだった。
怖い。
でも。
メッセージの最後に。
『○○とうちは運命やからな♡』
そう書いてあった。
……ずるい。
こんなん、好きになるに決まってる。
⸻
小中高、全部同じクラス。
もう運命やろ?
○○は昔からずーっと私のこと好きやし。
恥ずかしがり屋で。
全然素直になれへんけど。
でも大丈夫。
唯衣ちゃんは、ちゃーんと待ってたるから♡
それに。
家族公認やし。
外堀も完璧。
○○はもう、うちから逃げられへんねん♡
唯衣「安心し♡ ○○の幸せは、うちが保証したるからな♪」
