フェルメールの名画はパン屋さんの広告だった!?
『牛乳を注ぐ女』1659 といえば17世紀オランダ絵画の巨匠フェルメールの代表作ですが、じつはこの絵はパン屋さんに飾られていました。フェルメール家の3年分のパン代と交換だったといいますから、巨匠も生活は決して楽ではなかったことがわかりますね。
で、どうして、この絵がパン屋の広告だったという突拍子もない話になるかというと、じつはこの絵は家政婦さんがパン・プディングを作ってるところを描いているからです。プディングは、いわゆるプリンですが、パンから作ったプディングは当時のオランダでは国民食のようなもので、それぞれの家が独自の味付けをしていたといいます。味付けに、ビールを加える家庭も多かったようですね。
画面は、このパン・プディングを調理するため家政婦さんが大きな器に牛乳を注いでいるところを描いており、器の手前にはパンのかけらが置かれているのがわかります。そろそろ硬くなりかかったパンであることがなんとなくわかるあたりがフェルメールの筆の力ですね。器の向こう側には、ビールを入れるフタ付きの容器も見えていますので、家政婦さんがこれからパン・プディングを作っているのがわかります。
要するに、パンは古くなっても、プディングにすれば食べられますよ、という、いわば販促的なメッセージも読み取ることもできる絵となっているわけで、たしかにパン屋さんに飾るのに、これほど適した絵はないかも知れません。この絵を納品した後に、フランスのコレクターがフェルメールを訪ねたところ、画家は今は見せられる作品がないが、近所のパン屋に行けば見られると言い、パン屋に行ったコレクターは、家政婦を描いただけの絵なので仰天したといいます。
オランダはプロテスタント国で、偶像崇拝を禁じた聖書の教えに忠実に宗教絵画を制作しないお国柄でしたので、市民を主人公にした絵が多く描かれていますが、そうした題材は、カトリック教徒だったフランス人には、わざわざ絵に値しないものとも映ったわけです。
この絵のおかげで、パン屋さんの売り上げが上がったかどうかはわかりませんが、画面を見たお客様は、「そうか、硬くなったらプディングにすればいいか」と思って、少し多めにパンを買った、のかも知れませんね。
