全体像を見せる授業実践例③「一問を徹底的に使い回す!」
みなさんこんにちは、数学meganeです。
早速ですが、今回も授業実践例の紹介です。
今回は「一問を徹底的に使い回す」ことで“全体像を見せる”ことを意識した授業です。
数学の授業において「一問で貫き通す」というのはかなりハードルが高いです。
それはなぜか?
学力の高い生徒が“飽きてしまう”からなんです。
分かり切っていることをダラダラ続けられると、思考は停止してしまいます。
逆に学力が厳しい生徒にとっては、何をしているか分からないまま授業が進んでいて、こちらもまた思考は停止します。
難しいところですが、今回は「一問を“使い回す”」です。
どんな流れになっているのか、ぜひ読んでいただけるとありがたいです。
【1年生 数学 正負の数の利用】
パーツ①「活性化(平均の求め方の確認)」
授業前に5つの数値データを、表で明記しておきます。
A B C D E
82 90 86 80 92
T:「全員起立。これは、あるテストの点数です。平均点を求めたいと考えています。平均の求め方、ペアの人に説明したら座ります。」
T:「では、○○さん。」
S:「全部足して、人数で割ります。」
T:「いいですね。その通りです。では実際に、平均を求める式、ペアの人と共有してください。」
T:「○○さん。」
S:「(82+90+86+80+92)÷5です。」
T:「その通り。では、ノートを開いて、日付、タイトル、前の表を写します。平均も求めてください。」
⇒平均の求め方を確認しただけで終わってしまうと、理解できていない生徒もいるので、実際に式まで一緒に確認します。板書には、( + + + + )÷ まで書いておきます。ここでエラーしてしまうと、ついていくことができなくなるので、かなり慎重にいっています。
パーツ②「正負の数の利用(全体像)」
T:「○○さん。平均はいくらになりましたか?」
S:「86点です。」
T:「ありがとう。よくできました。しかし、これで終わってしまうと意味がありません。今日は、みんなに新しい平均の出し方を知ってもらおうと思います。」
⇒ここで、板書に書いてあった表に数字を書き込んでいきます。
A B C D E
-3 +5 +1 -5 +7
T:「先生はさっきの表を、このような表に作り変えてみました。どんな考え方でしょうか。ペアと議論してください。」
⇒このとき、塾で習っている生徒や学力の高い生徒が原理を分かっているので、その生徒に発表させてもいいかもしれません。ただ、私が授業した際には、学力の厳しい生徒が答えてくれました。
T:「お、○○さん。今の良かったね!ちょっとみんなに教えてくれない?」
S:「たとえば、Aは-3で、85-3は82になってます。」
T:「なるほど!他はどう?」
S:「Bは85+5で90になってる。」
T:「○○さんの言いたいこと分かる?ペアの人と議論してください。」
⇒「85点が基準になっている」ことに気付いている生徒が出始めます。ただ、うまく言語化できません。そこで、もう一度ペアに返します。すると、「85点との差を表している」という発言が自然と出てきました。
T:「△△さん。どういうことですか?説明してください。」
S:「Aさんは85点よりも3少ないので、-3と書かれています。」
T:「なるほど!それでは、もう一度、今の説明をペアの人にしてみてください。」
⇒しつこいようですが、ここが一番のポイントなので、必ず“全員”に理解してもらえるようにします。
T:「ありがとう。表の意味は理解できましたね。では、これを使って平均を出します。よく見ててください。」
⇒何も言わずに次の式を書きます。
(-3)+(+5)+(+1)+(-5)+(+7)=+5
+5÷5=+1
86+1=86
よって、平均は86点
T:「この式の意味をペアに説明してください。」
⇒「すべて足して人数で割る」という構造と基準の85点は見えているので、学力が厳しい生徒でも何となくは理解できています。
T:「では隠します。ノートに再現してください。書けたら持ってきます。」
パーツ③「類似問題に取り組む」
T:「全員できました。それでは、また別の表を作ります。自力で解いてみましょう。」
⇒提示するのは次の表です。
A B C D E
-8 0 -4 -10 +2
T:「できた人は、先生のところに持ってきましょう。」
⇒ここで、しばらく自由に動いて教え合うことができる時間を設定します。「0」という数字が新たに出てきているので、それらの議論を行う時間にもなりますし、厳しい生徒の様子を見る時間にもなります。実践した授業のときには、ほぼすべての生徒が解くことができていました。
パーツ④「自分たちで作問する」
ここで終わってしまうと、ただの問題演習の時間になってしまいます。
では、正負の数を利用する醍醐味は何でしょうか?
それは、「効率よく考える土台を作ること」だと思っています。
そして、それを実感させなければ意味がありません。
そこで、「自分たちで表を作って平均を求めてみる」という活動をさせるわけです。
ここまでで授業は残り15~20分程度あります。
T:「もうみんな表の考え方も、平均の求め方も理解できました。今度は、自分たちで表を作って実際に平均を求めてみてください。残りは自由に動いてかまいません。ではどうぞ!」
⇒おもしろいことに、学力の高い生徒ほど、基準の値をとてつもない数字にするんです。
例えば、こんな生徒がいました。
基準 10000点 87.146点 50000点
明らかに計算がややこしくなるし、実用的ではありません。
しかし、あえてこれらも板書させて全体に紹介します。
T:「さあみなさん、いろいろな表が出てきましたね。分かりやすそうなものもあれば、そうでなさそうなものもありますね。」
⇒この時点で生徒はとてつもない数字の表を見て笑っています。
T:「笑っている人もいますね。どこがそんなにおかしいですか?ペアの人と議論してください。」
S:「基準が10000なのは分かるけど、数字がごちゃごちゃして見にくいね。」
S:「小数のやつ見にくすぎて計算が嫌になりそう…。」
T:「いろいろな意見がありました。そう、正負の数を使うと計算が楽になったり、めんどくさくなったりします。みなさんはどっちにしたいですか?」
⇒感想や振り返りを書かせてみてもよかったなと思いましたが、時間が足りなくなってしまい、そこはお預けでしたが、「正負の数を利用する意義」を伝えることはできたと思います。
今回取り扱った数値は小さい数でしたが、これがもっと大きくなり、そのまま計算するのが大変だとなるような数値を取り扱えば、より「正負の数を利用する意義」は感じやすくなるでしょう。
一問を使い回して“全体像”を見せながら、飽きることなく知識定着と「学ぶ意義」を同時に進行できた実践例になります。
「問題数をこなすこと」ではなく、“同じ問題をどう見るか”によって、授業の深さは変わる。
私はそう感じています。
ぜひ参考にしてみてください。
このnoteでは、
・授業でそのまま使える教材・授業展開
・思考力を育てる問題
・実際の授業実践、指導のコツ
を中心に発信していきます。
忙しい中でも「これなら使える」と思ってもらえるような、現場目線の即戦力になるような教材を届けたいと思っています。
