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「N氏の庭探訪記」㉛薔薇2

「なぜだろう。同じ花なのに、ときめかないなんて」
N氏は夏場の木陰のバラ置き場に私を導いた。
隣も含めて花は小さくて少ない。
「一年中楽しみたいということで、四季咲きを買ったのだけど・・・」
どちらかと言えばさみしい。
「咲き添わないからじゃないですか。
バラって一斉に咲くからいいんじゃないですか?
他の花もないし・・・」
私が言うと、N氏は咲きそう、咲きそうとつぶやきながら、何やら記憶の底から取り出した。
「『卯の花の白妙に、茨の花の咲きそひて、雪にも越ゆる心地ぞする』(真っ白な卯の花、そこに真っ白な茨の花が加わって、雪の中を越えていくような感じだ)」
松尾芭蕉の『奥の細道』の一節だ。
どこかで取った、いい写真があったな。
私はスマホを探った。

茨の花

「やはり咲きそわないと面白くないですよ」



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