キジトラにゃんこ、大逃走劇の果てに……
あれは2026年1月某日のこと。
仕事が終わり帰宅。
玄関を開けると、そこには塾に行こうとする娘がいた。
「今から塾か?」
「うん、行ってくる」
「気をつけて行ってくるんやで」
「分かった」
この僅かな会話とドアの隙を突いて……愛猫りんた、大脱走!
家を出てすぐ前のアスファルトで、いつもベランダでやるように地面に背中を擦り付けて、仰向けでクネクネと楽しそうにしている。
りんたを刺激しないように「りんちゃ〜ん、お家に入りなさ〜い」と静かに声をかけながらゆっくり近付くも、あと数歩というところで猛ダッシュで逃走するりんた!
我が家の裏から並びの家の裏、フェンスを乗り越え裏のガレージへ、ガレージに停車してある車の下から隣の老人ホームの敷地内へ。老人ホームの受付で事情を話し、許可をもらって敷地内を探索するも、並びの家の裏にまたもや逃走していた。
挙げ句の果てには、手入れされていない庭に草がぼうぼうと生えている空き家に侵入。
到底、人間では考えられん動きで縦横無尽に駆け巡るりんたに、ただただ翻弄されて体力をどんどん消費していく俺と娘。
どこぞのYouTuberが言ってた言葉が頭をよぎる。
「猫は瞬発力はあるが、スタミナは少ない」
どこがやねん! おっさんと運動不足の娘はバテバテやぞ!
飼われていても獣、俊敏な肉食獣なのである──。
「どうするよ、全く……」などと思ったが、塾に行けず半泣きになりながら探してる娘を見ると「あー、俺が不安そうにしてたらあかんわ」と思い、娘に「とりあえず玄関を開けといて。で、おやつを袋ごと持ってきて」と指示。
持ってきたおやつの袋をわざとガサガサ言わせ「りんた〜、おやつやで〜」と言うと、草むらの中から「なぉ〜ん、んなぁ〜お〜ん」という鳴き声。
ガサゴソと音がする草むらから出てきた!
「よし! うまく行った! もう少しこっちや──」
差し出すおやつに近付いてきた──が、しかし。
フェンスを飛び越えまたもや逃走。
この時点で脱走から40分が経過していた。
ここで嫁さんに電話。
「りんたが脱走して大変や〜」
「そうなん⁉︎ 私ももうすぐ帰るから!」
その会話の数分後、嫁さん帰宅。
3人で手分けして探す事10数分。嫁さんの車の下へ潜り込んだりんた。
影に紛れるとキジトラ柄というのは、驚くほど目立たなくなる。
光る目玉を頼りに様子を探る。
りんたまで50cmほどのところで、おやつの袋をまたもやガサガサと音を立て、
「ほら、りんちゃ〜ん。おやつやでぇ〜」とおやつを差し出すも、身を翻しまたもや逃走するりんた。
娘を裏のガレージ、嫁さんを家の前に配置し、俺がりんたを追いかける作戦。
さあ、終わらせるぞ! 追跡開始!
が、早々に見失った……。
日が暮れ、街灯が灯る──。
裏のガレージで待機していた娘に「そっちに行ってへんか?」と聞くも「来てない」と返事。
「どこに行きやがったんや……」と周囲を見まわした。
その時!
嫁さんが「りんた、家に帰ってきた!」と電話してきた。
急いで家に戻ると、ご飯の器の前で待機しているりんた。
「何かあった? えらい疲れとんな」とでも言いそうなりんた。
「で、早くご飯くれへん?」とでも言いたげなりんた。
そんなお前のせいでこっちは!
などと思いつつ、疲れと脱力感と安堵感で立ち尽くす俺。
塾に電話をかけ、先生に休んだ理由を伝え謝る娘。
「はいはい、お腹すいたねぇ〜」とカリカリをあげる嫁さん。
りんた大逃走劇はこうして幕を閉じたのであった──。
みなさまも猫の脱走にはご注意を……。

お時間があれば、こちらもどうぞ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
スキ、フォローしていただけると嬉しいです。
正直、おっさんが舞い上がります。
