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押し入れの中のくま。3

ブーン ブーン。
スマホの音が鳴った。
 
おっ、と耳がピンとたった。
くまの体の私は、聴覚が抜群にいい。

人間の体をした、くまくんは、
まだ、この音に気づいていない。

(くまくーん、ここに来た時のカバンを取って)

「うん。いいよ」
黒のショルダーを持ち上げた瞬間、

「うわっ、なんか動いてる」

びっくりしたくまくんは、
驚いてバッグを放り投げた。

バッグが床に落ちた。

(ちょっとー、スマホ壊れちゃうよ)

体が勝手に動いて、
押入れの上段から、
バッグに向かってジャンプした。

ファスナーを開けて
スマホの安否を確認したいのに
無理だ…バッグとたわむれているだけだ。

(くまくん、見てないで、
その金色の小さなところ、つまんで開けてよ)
私は、焦っていた。

「うん。やってみるね」

くまくんは、ファスナーを上手につまんだ。

(四角いのがスマホ)

「しかく?」

――えっと、どう言えば伝わる?
さっきまで鳴っていた
バイブ音も
今は静かに鳴り止んでいる。

説明するのがもどかしくて、
あたしは、
ファスナーが全開になった
黒のショルダーの入口に
頭を突っ込んだ。

あった。

それを咥えて
ショルダーバッグから
首を出した。

「それがスマホっていうんだね」
くまくんは、
じーっと見ている。

くまの体では、
どうやっても、
スマホの操作は出来なかった。

くまくんが、
スマホを覗き込んだ途端
顔認証で、
ロックが外れた。

―あ。
(ここに指を置いて、そのまま引っ張って)

くまくんは、
言われた通りに、
上から通知を下ろした。

―やっぱり職場からか。

電話の着信履歴は、
ブラックな私の会社からだった。

―電話は、無理だよなぁ。

(くまくん、その緑色の丸いの押して)

「おしっこ」
 
―えっ。トイレ、トイレかぁ……


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