アンビエントフォークの比類なき傑作。『Eureka(1999)』 / Jim O'Rourke
今回は『Eureka(1999)』。
古代ギリシャ語で「εὕρηκα」は「新発見!」「ひらめいた!」みたいな意味の言葉で、青土社の『ユリイカ』とか『交響詩篇エウレカセブン(2005-2006)』とか、カタカナでの読み方は「ユリイカ」だったり「エウレカ」だったりその時々。本アルバムについては大体のメディアが「ユリイカ」呼びしてます。
アメリカのオルタナティブシーンを掘り始めると、ジム・オルーク(Jim O'Rourke)という名前に遅かれ早かれバッティングする。
まず最初に多くの人がソニック・ユースの元メンバーとして彼を認知するだろう。
後期ガスター・デル・ソルにおけるデヴィッド・グラブスの相方で、全盛期ウィルコ、ステレオラブ、スーパーチャンク、レッド・クライオラといった錚々たるバンドの作品群にも関わっていて、USオルタナティブシーンを知れば知るほど「なんか凄そうな人」というイメージを持つはずだし、実際に凄い人である。
ジム・オルークは、1969年にイリノイ州シカゴに生まれる。
まだ年端もいかない少年時代にデレク・ベイリーの音楽と出会い衝撃を受け、13歳の時に実際にロンドンのデレク・ベイリーのもとを訪ねてしまうほど早熟で、10代前半にしてフリーインプロヴィゼーション(即興演奏)および実験音楽に傾倒する。
1994年にガスター・デル・ソルに加入し、デヴィッド・グラブス、ジョン・マッケンタイアといった奇才たちとともに「シカゴ音響派」と呼ばれるポストロックシーンの形成に関わる。
1997年のガスター・デル・ソル脱退以降はDrag Cityよりソロアルバムを立て続けにリリース。
1999年に発表された『Eureka』は、彼の作品の中でも出色の人気作であり、アンビエントフォークの大名盤として知られる。
※Spotifyでは配信されていないので今回はApple Musicからシェアします。
Eureka(1999) / Jim O'Rourke
ジョン・フェイヒやヴァン・ダイク・パークスといった偉大なアメリカーナのサウンドを受け継ぎつつ、シンフォニックなエレクトロアレンジが施された本アルバム。
次々作『Insignificance(2001)』(こちらも傑作)と同様、ゴリゴリのギターインプロヴァイザー出身とは思えないほど丁寧でメロディアスな歌モノフォークアルバムであり、この2作を入り口にしてジム・オルークの真価と魅力を感じ取ったリスナーも多いと思う。
「あ、ただの小難しい実験音楽家じゃないんだ」と。
Insignificance(2001) / Jim O'Rourke
ジム・オルークは2002年からソニック・ユースに加入。ピエール瀧よろしく担当楽器「Debauchery(道楽)」のネタ枠として活動したが、もちろん実際にはギター、ベース、シンセサイザーをこなすマルチプレイヤーとして同バンドを支えた。しかし2005年に「日本映画と日本語の勉強したいから辞ーめた」と言ってソニック・ユースを脱退。
ジム・オルークはMelt-Banana、くるり、チャットモンチー、カヒミ・カリィといった日本のアーティストのプロデュース業でも知られ、もともと日本のポップカルチャーに理解と造詣のあった大の親日家であり、『Eureka(1999)』や『Insignificance(2001)』の印象的なアートワークも友沢ミミヨによるもの。
2006年から日本に移住しており、現在も日本在住。
ヘンリー・カイザー、イクエ・モリ、坂田明、灰野敬二、大友良英、ボアダムス等々、字面を見てるだけで頭痛がしてくるようなアヴァンギャルドシーンでの共演歴のおかけで、サブカル界隈での神格化が顕著なジム・オルークだが、2005年にはウィルコの5thアルバム『A Ghost Is Born(2004)』でしっかりグラミー賞も獲ってるし、『スクール・オブ・ロック(2003)』では音楽コンサルタントも務めたり、一線級のエンタメ界隈でも一流の仕事をこなすクリエイターである。
現状『Eureka(1999)』『Insignificance(2001)』を含むジム・オルークのソロ作のほとんどがSpotifyで未配信なのが残念なところ。
ちなみに青山真治監督『EUREKA/ユリイカ(2000)』は、同アルバムからタイトルがとられ、表題曲は同映画の挿入歌にもなっている。
これまた素晴らしい映画。
「持っていなかったものを失ったような気分になる」
というトレーラーに対する英語でのコメントが刺さった。まさに。
どういう人生送ったらこんな詩的な表現をサラッとつぶやけるようになるんだろう。
まだご覧になっていない方はぜひ同映画も一緒に、ジム・オルークの『Eureka』をお楽しみください。
しかしまたこの映画もアマプラでもネトフリでも観れないわけです。
Huluでは観れるっぽいです。
いつの時代もあらゆる傑作は多くの人にとって手の届きづらい場所にありますね。
EUREKA/ユリイカ(2000) 予告編
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