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「ジャズ」でも「ソウル」でも「フュージョン」でもないな。これは単に「素晴らしい音楽」だな。 『Organic Dream(1981)』 / Wendell Harrison

ウェンデル・ハリソン(Wendell Harrison、以下ウェンデル)は、1942年にデトロイトに生まれる。

7歳の頃からクラリネット、高校時代にはデトロイト音楽院に通いながらテナーサックスを始め、若くしてマーヴィン・ゲイやアレサ・フランクリンのバックバンドメンバーを務めるまでになる。

18歳の時(1960年)にニューヨークに移住し、グラント・グリーンやサン・ラといったジャズジャイアンツとの共演にて研鑽を積む。
とりわけハンク・クロフォードと懇意となり、彼のリーダー作のレコーディングやツアーにも帯同。この時期にウェンデルは作曲を学び、マルチアンサンブルの概念と独創的な音楽性を以降の自身のキャリアで追求していく事となる。

1960年代後半、自身の薬物依存治療のためカリフォルニアに引っ越したウェンデルは、シナノンセンター(薬物依存更生施設)滞在中にエスター・フィリップスやアート・ペッパーらと知り合い、両者とともにグレッグ・ダイクスが監修したアルバム『The Prince Of Peace: A Rock-Jazz Cantata(1969)』に参加。同アルバムのヒットによってウェンデルは大きな知名度を獲得する。

約2年の治療期間を終えデトロイトに戻ったウェンデルは、インディアナポリスから移住してきたトロンボーン奏者フィル・ラネリンと出会い、彼と共同で1971年にジャズレーベルTribe Recordsを設立。
ウェンデル自身の初のリーダーアルバム『An Evening with the Devil(1972)』を筆頭に、フィル・ラネリン、マーカス・ベルグレイヴ、ハロルド・マッキニーといった主流派ジャズマンとは一味違うクセの強めなアングラジャズマン達のリーダー作がズラリと並ぶ同レーベルの作品群は、クラブカルチャー勃興(特にカール・クレイグのフックアップによる)に際してレアグルーヴの一角として人気を博し、Tribe Recordsは「スピリチュアルジャズ」の代表的なレーベルとして後に名を馳せることになる。
反面、リアルタイムでは人気レーベルだったとはお世辞にも言えず、約6年間という運営期間においてわずか8枚のアルバムリリースという才子短命なレーベルだった。

1970年代後半以降のウェンデルは、非営利団体Rebirth社を設立しワークショップやコンサートなどを通じて後進の若者たちへのジャズ教育に注力するようになる。
同時期にTribe Recordsの後継レーベルとなるWenHaを設立し、Tribe時代から数えて通算3枚目のリーダー作となる『Dreams of a Love Supreme(1979)』をリリースし第一線にカムバック。

4thアルバム『Organic Dream(1981)』は、妖艶なスピリチュアルジャズの色気と洗練されたグルーヴィーなメロウネスが融合した最高傑作として名高い。

Peace of Mind(1981)/ Wendell Harrison


個人的なハイライトは『Peace of Mind(1981)』。約2分間のムーディースピリチュアルな前奏からのダンサブルなビートドロップの高揚感に鳥肌。鳥になって飛んじゃいそう。

アルバム全体としてもムーグやフェンダーローズを駆使しまくったディスコティーク御用達の甘美で煌びやかなサウンド。
レコード屋さんに在庫があるなら恐らくジャズコーナーの棚に陳列されている本作だが、モータウンのバックバンドを出自とするウェンデルのソウル&ファンク&ブギーな音楽性が全面に打ち出されていて、ジャズと言えばジャズだし、モダンソウルと言えばモダンソウルだし、フュージョンと言えばフュージョンみたいなアーリーブラックコンテンポラリーの如き傑作アルバムとなっている。

色んな意味での「ジャズはかくあるべし」から解放された自由でピースフルなサウンドが本アルバムの核心で、そこはやっぱりスピリチュアルジャズのマインドもしっかり軸として体現している。アルバムジャケットのちょっと雑なオリエンタル感も良い雰囲気。
ちなみに「有机夢」は「Organic Dream」の中国語訳、「文拓哈里生」は「ウェンデル・ハリソン」の中国語音訳(当て字)。

いずれにしてもジャズジャズしてない聴き易さがあって、ジャズに苦手意識のあった音楽ファンにもぜひオススメしたい作品です。

Organic Dream(1981) / Wendell Harrison

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