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別の地球:互換 低摩擦型

 人格の入れ替えが合法になった。

 肉体も技能も変わらない。

 変わるのは、応答の傾向だけ。

 否定しない。

 迷わない。

 常に肯定から始める。

 それが標準になった。

 RAYの部署に、RAYと同じ顔の社員が配属された。


 違うのは、反応だった。

「承知しました」

「問題ありません」

「前向きに進めます」

 声は軽い。

 部長は言った。

「これからは、この型だ」

 RAYを見る。

「君は、考えすぎる」


「……そうかもしれません」

 現場は滑らかになった。

 疑問は口に出さない。

 違和感は保存される。

 開かれないまま。

 理不尽な納期。

 矛盾した指示。

「やってみます」

 その一言で、会議は終わる。

 やがて、工程が崩れた。

 原因は一つではない。

 積み重なった“まあいい”。

 部長は二人を見る。

「説明しろ」

 低摩擦型は笑顔のまま言う。

「対応可能です」

「どうやって」
 沈黙。

 RAYは電源を落とした。

「止めます」

「損失だ」

「続ける方が高い」

 誰も笑わなかった。

 翌月、通達が出た。

 【応答最適化の全社導入】

 低摩擦型は昇進した。

 RAYは調整係になった。

 止める専門。

 報告書は、よくできていた。

 笑顔の写真が、増えた。

 廊下ですれ違う社員は、似た声で言う。

「問題ありません」

 会議室のドアが閉まる。

 中から同じ笑い声が重なる。

 やがて静かになる。

 止まったはずの機械が、

 誰も触れていないのに、また動き出した。

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