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tsukinokakera
<ショートショート> 人生耐用年数
朝、会社で一枚の書類が配られた。
耐用年数更新確認票。
表題には、そう書かれていた。
「健康調査ですか」
私は隣の席の同僚に聞いた。
同僚は、少し驚いた顔をした。
「知らないの?」
「何を」
「更新」
「何の」
「人生の」
私は笑った。
だが、周りの社員は普通に書類を書いていた。
項目は少なかった。
疲労度。
集中力。
記憶力。
作業効率。
最後に、短い質問があった。
最近、故障を感じますか。
私はペンを止めた。
「これ、どういう書類ですか」
「判断材料」
「何の」
「延長できるかどうか」
「何を」
同僚は当然のように言った。
「人生を」
裏面には、小さな説明があった。
耐用年数を超過した者については、稼働状態、維持費、代替可能性を確認のうえ、更新可否を判断する。
「耐用年数って」
「四十年」
「人間の?」
「ほかに何があるの」
私は黙った。
同僚は書類を書き続けている。
「そのあとは」
「更新」
「されなかったら」
同僚は、ペン先を少し止めた。
「整理」
私は笑おうとした。
誰も笑っていなかった。
「そんな制度、聞いたことがない」
同僚の手が止まった。
「説明されてないの?」
「何を」
「普通は、十八歳のときに知らされる」
私は書類を見た。
氏名。
人間番号。
稼働年数。
稼働年数の欄に、四十三、と書いた。
同僚が、それを見た。
「四十三?」
「はい」
「初回更新は」
「知りません」
同僚は端末を開いた。
私の人間番号を入力する。
少しして、画面に小さな赤い文字が出た。
更新履歴なし。
同僚は、私を見た。
私は、まだそこに座っていた。
「おかしいな」
同僚は言った。
「まだ動いてる」
