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ishi99
《ショートショート》港に入らない船の仲間たち
この地球の大きな船は、港に入らない。
沖合で、ゆっくりと止まる。
甲板の上では、コンテナが順番を待っている。
待っているのは、急ぎたいからではない。
分かれるためだ。
巨大な貨物船の周囲に、少し小さな船が並ぶ。
その上空に、十数台の大きなドローンが浮かぶ。
羽音は低く、波の呼吸と同じ速さだ。
海風と、いくつものドローンの音が重なり、その響きは、地球をめぐっていた。
ドローンは、大きな機体同士が呼吸を合わせ、コンテナを一つずつ吊り上げる。
箱を抱え、海の上で向きを確かめる。渡す先は、港ではない。
小さな船だ。
荷を受け取った小さな船は、それぞれ、違う名前を持っている。
山へ向かう船。
都市の外縁をなぞる船。
夜の川を選ぶ船。
それらは、どれも急がない。
沖を離れ、静かな進路で、それぞれの岸へ向かう。
山の近くでは、船はそれ以上、近づかない。
代わりに、ドローンが空へ上がる。
谷を越え、尾根を避け、風の薄い道を選びながら、荷物を一つずつ、山の集積点へ運ぶ。
都市に向かった船も、中心へは入らない。
水辺の外側で止まり、高い建物を見上げる。
屋上は、倉庫ではない。
一時的な通過点だ。
そこから、さらに小さなドローンが離れ、通りを避け、影の上を選び、人の生活圏へ降りていく。
この地球では、荷物は、最短距離ではなく、無理のない道を選ぶ。
届かなかった日があっても、失敗とは呼ばれない。
それは、地球の呼吸が、もう少し続く証拠だからだ。
