実は、家を買いました。──「ここに帰っておいで」と言える場所を、もう一度つくるために──
実はこの夏、家を買いました。
僕にとっては、二軒目の家になります。
僕たちの子ども達は、すでに自立しているので、
次に住むなら
「ふたり暮らし用の平屋がいいよね」と、
ずっと「なつ」と言っていました。
ただ、一つだけ大きな問題がありました。
二人の妻を看取った、今までの「僕の家」です。
そこは、僕にとっては
思い出が詰まった場所ですが、
「なつ」にとっては、少し重い家でもあります。
「あなたの家は、あなたの奥さんたちとの
歴史のある場所だから…
私はそこには暮らしたくないな」
そう言われて、僕もすぐに納得しました。
それから賃貸に移り、
二人で約2年間暮らしました。
その間、1年半ほどかけて、「なつ」と一緒にあちこち物件を見て回りました。
定年近くで長期ローンを組むのは気が進まない。
できれば、退職金と手持ち資金で完済できる範囲の家がいい。
そんな条件で探していたところ、
今年7月に、3DKのリフォーム済みの物件に出会いました。
価格も無理のない範囲で、「ここだ」と感じて、ほぼ即決で契約しました。
3DKあれば、ふたりで暮らすには十分です。
賃貸で2年暮らしたことで、
「どんな家で一緒に生きていきたいか」という共通のイメージが、
自然と二人の中にできていたのだと思います。
11月8日、引っ越し業者さんのお世話になりながら、新しい家へ。
ようやく段ボールも片づいて、
最近やっと「暮らし」が始まった感じがしています。
子どもが家を出て行くと、急に子ども部屋はいらなくなります。
日本の家は長持ちするけれど、
ライフスタイルの変化に対しては、
少し不器用なつくりだな、と感じることもあります。
もっと、コストを抑えながら
家族構成の変化や、暮らし方の変化に合わせて
しなやかに形を変えられる住宅が増えたらいいのに、
と思います。
うちの息子は、一度一人暮らしを経験したいということで、
ワンルームの賃貸に6年ほど住みました。
娘は県外に嫁ぎ、僕はいま、3歳の男の子のおじいちゃんです。
そんな中で、空き家になっていた「二人の妻を看取った家」に、
息子が住むことになりました。
それが決まったタイミングで、今回の3DK物件にも出会いました。
今年は、いいタイミングですべての物事が動き始めた気がします。
「なつ」の方も、この秋に大きな変化がありました。
息子さんは、10月にずっと行きたがっていた東京へ。
転職先も見つかり、新しい生活を始めたばかりです。
娘さんは、年末に彼氏を連れて帰ってくるそうです。
息子さんも、年末は戻ってくるとのこと。
彼女は
「これで、子どもたちが帰ってこられる“実家”ができた」
と、本当に嬉しそうです。
僕も、年末に新しい家にみんなが集まってくれるのが、今から楽しみです。
きっと、賑やかな年末年始になるでしょう。
この「家を買う」という流れと同じ時期に、
大腸の検査でがんが見つかり、早期に切除することにもなりました。
陽性と聞かされたときは、
さすがに一瞬、暗い雲がかかったような気がしました。
それでも不思議と、思考の切り替えは早かったように思います。
いつもと同じ結論にたどり着くからです。
「自分にできることだけをやる。
できないことに、必要以上に悩む必要はない」 と。
二人の妻を看取った家は息子へ遺す。
今回買った3DKの家は、彼女と遺していく。
そして、「なつ」の娘や息子が、もし人生に迷ったとき、
「ちょっと帰ろうか」と戻ってこられる場所にしておく。
たとえ僕が先にいなくなっても──
彼らが困ったときに戻れる“実家”があること。
それが、今の僕にできる、いちばん大切な準備だと思っています。
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