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心が潤う瞬間:京都にて

朝から大あわてでした。

電車の時間を勘違いしていて
予定していた散策は
一時間遅れのスタート。

駅のホームに立つと
少し湿り気を含んだ初夏の空気が頬をなでました。

「やっちゃったぁ…」

そう思いながらも
こんな予定外も
旅の楽しみのひとつかもしれません。

醤油ワンタンメンに煮卵を追加しました
ついでに、餃子もいただきました

まずは空腹を満たすために
京都駅ビルの拉麺小路にある「満月」へ。

山形(酒田)の醤油ワンタンメン。

透き通った琥珀色のスープから
魚介のやさしい香りが
ふわりと立ちのぼります。

そっとひと口すすると
見た目のとおりあっさりとした味わい。

まろやかな旨みがじんわりと広がり
朝の慌ただしさまでほどいてくれるようでした。

ふと森下典子さんの言葉を思い出しました。

「たべものの味にはいつも、思い出という薬味がついている…。」

森下典子(2014)『いとしいたべもの』文春文庫

森下さんは
一杯のラーメンから
幼い頃の思い出をたぐり寄せています。

たしかに食べ物は
お腹を満たすだけのものではありません。

そのときの景色や空気から
人との会話や心の動きまで
一緒に記憶しているように思います。

この日の醤油ワンタンメンも
きっといつか京都の風やお庭の緑
そして穏やかな時間とともに
思い出されるのでしょう。

器の縁には
懐かしいアニメを思わせる
可愛らしいイラストが描かれていて
思わず笑顔になりました。

旅先で出会うそんな小さな発見も
うれしいものです。

お腹も満たされたところで
名勝「渉成園」へ向かいました。

この日の京都は薄曇り。

強い日差しはなく
木陰に入るたびに
涼しい風がすっと首筋を通り抜けていきます。

葉と葉が触れ合うさらさらという音。

遠くから聞こえる鳥の声。

都会の真ん中とは思えないほど
ゆったりと時間が流れていました。

ちょうど花の少ない時期だったようで
紫陽花は名残惜しそうに静かに咲き残り
その傍らでは睡蓮が
水面に涼しげな花が咲き始めていました。

池をのぞき込むと
アメンボがすいすいと水の上を滑っています。

風が吹くたびに水面が揺れ
きらきらと光が散りました。

湿った土と水の匂い。

初夏ならではのやさしい空気が
辺りを包んでいます。

アメンボの写真を撮りましたが見えませんでしたので、AIで再現してみました^^

ふと池の方へ目を向けると
青鷺が静かに佇んでいました。

そして
その近くでは鵜が潜水を繰り返しています。

すっと水の中へ消えたかと思うと
次の瞬間には思いもよらないところに姿を現します。

あまりの泳ぎの速さに目で追うのもたいへん。

自然の中で生きる鳥たちの姿に
思わず見入ってしまいました。

大きな蓮の葉は
風を受けるたびにゆらゆらと揺れ
緑の傘のような葉陰を作っています。

その景色を眺めているだけで
心が穏やかになりました。

これからきれいなお花を咲かせる準備をしています
池の奥に一輪咲いていました。いいカメラがほしいなぁ。

池を渡る木橋の上では
海外からの旅人らしき人が
腰を下ろしていました。

手には携帯電話。

時折画面に目を落としながら
吹き抜ける風に身を任せています。

水の揺れる音と鳥たちのさえずりに包まれたその場所は
まるで時間だけがゆっくり流れているようでした。

しばらくすると
その人は心地よさそうに
うとうとと舟を漕ぎ始めました。

旅の疲れもあったのでしょうか。
それとも、この庭園の静けさがそうさせたのでしょうか。

その穏やかな姿を見ていると
国や言葉が違っても
人がほっと安らぐ感じ方は
同じなのだなと思いました。

そして、私は
この庭で自分の心が潤う瞬間を
感じました。

風の音に耳を澄ませ
水のきらめきを眺め
鳥たちの自由な姿に目を細める。

そんな何気ない時間こそが
心を豊かにしてくれるのかもしれません。

奥に京都タワーが見えます
ネジバナを見つけました

その後は、京都タワーへ。

エレベーターであっという間に展望台へ
京都の街並みが眼下に広がります。

何度訪れても見飽きることのない京都の景色。

碁盤の目のように整った街並みや歴史ある建物を見渡していると
この街が積み重ねてきた長い時間を感じます。

東本願寺。

地上から見上げるのとはまた違う姿に
思わず息をのみました。

大きな屋根が堂々と広がり
京都の街の中で静かな存在感を放っています。

展望を楽しんだあとは
京都タワーのストラップが景品になった
小さなクレーンゲームを見つけました。

狙ったのは
ぬいぐるみのようなやわらかい素材でできた
京都タワーのストラップです。

ころんとした姿が愛らしく
どうしても欲しくなってしまいました。

「今度こそ」

そう思いながら何度も挑戦します。

レバーを操作するたびに少し胸が高鳴り
うまくつかめるだろうかと期待が膨らみます。

けれど、なかなか思うようにはいきません。

それでも夢中になっている時間は楽しく
気づけば子どもの頃に戻ったような気分になっていました。

旅先でのそんなひとときも
また素敵な思い出です。

京都タワーからみた渉成園
京都タワーから見た東本願寺

たっぷり遊んだあとは、辻利でひと休み。

抹茶とゆずのソーダをいただきました。

ストローでひと吸いすると
しゅわっと弾ける炭酸。

続いて広がる爽やかなゆずの香り。

そして抹茶のほろ苦さ。

その絶妙な組み合わせが
歩き疲れた身体に心地よく染み渡ります。

抹茶ゆずソーダ(右)と白桃煎茶(左)

窓の外を眺めながら味わう一杯は
旅のご褒美のようでした。

予定どおりには進まなかった一日。

けれど、そのおかげで
足を止める時間が生まれ
風の音に耳を澄ませたり
水のきらめきを眺めたり
小さな発見を楽しんだりすることができました。

振り返れば
この日出会ったラーメンも
庭園の風も
クレーンゲームに夢中になった時間も
すべてが思い出という薬味を
まとって心に残っていくのでしょう。

旅はいつも計画どおりとは限りません。

でも、遠回りしたからこそ
出会える景色もあるのだと思います。

初夏の風に誘われながら歩いた京都の一日。

その心地よい時間を
そっと心の中に持ち帰りました。

ついでに、お土産も持ち帰りました^^

What matters in life is not the destination, but the journey itself.
人生で大切なのは、目的地ではなく、旅そのものなんだ。

Snoopy, Peanuts

最後まで読んでいただきありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ஐ⋆*
今日もやさしい一日でありますように🍀

森下典子(2014)『いとしいたべもの』文春文庫

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