「奴らはラーメンを食ってるんじゃない、情報を食ってるんだ!」——ラーメンハゲは何を見ていたのか
あの顔と、あの一言だけが流れてくる
ネットを見ていると、たまに彼が流れてくる。
丸い頭の、目つきの鋭い男。
コマだけが切り取られ、コラージュにされ、
まったく関係のない話題の締めに使われている。
「ラーメンハゲ」と呼ばれている。
作品を読んだことはないけれど、あの顔と、あの一言だけは知っている——という人は、けっこう多いのではないだろうか。
彼の名前は芹沢達也という。
久部緑郎・河合単による『ラーメン発見伝』に登場する、
ラーメン界のカリスマだ。
そして一人歩きしているのが、この台詞になる。
「奴らはラーメンを食ってるんじゃない、情報を食ってるんだ!」
強い。強すぎて、言い切りの快感だけが残る。
だから使いやすいし、だから誤解もされやすいのだと思う。
この言葉が何を指していたのか、少し考えてみたい。
あの正月の特番から生まれたチャーハンの話
先に、作品の外の話をする。
『芸能人格付けチェック』の「浜田チャーハン」が話題になったのを、
覚えている人もいると思う。
海鮮チャーハンの三択だった。
ミシュラン一つ星のシェフが作ったもの。
町中華のベテランが作ったもの。
そして番組MCが市販のかまぼこ食品で作ったものが、
選んではいけないジョーカー。
素人が作ったチャーハン。
番組のルール上、絶対に選んではいけない一皿である。
そのジョーカーを、多くのチームが選んだ。
中でも2組は、葛藤の末に選んでいる。
情報を外されると、人は判断できない
この結果を「芸能人は味が分からない」と笑うのは簡単だ。
でも、たぶん違う。
普段の食事に、僕らは常に情報を添えて食べている。
店構え、値段、評判、行列、誰が作ったか。
そういうものを含めて「おいしい」と判断している。
その足場を全部外されると、途端に何も分からなくなる。
これは能力の問題ではなく、そもそもそういう食べ方をしていない、
という話だ。
そして、ここには裏返しの事実もある。
情報を外された状態で選ばれたということは、
その一皿は純粋にうまいと判断された
ということでもある。
選んではいけないものとして置かれた一皿が、そうなった。
貼られたラベルが、味の判断をひっくり返せなかったわけではない。
ラベルを外したら、判断のほうがひっくり返ったのだ。
情報というのは、それくらい強く、それくらい厄介なものだと思う。
さて。
ここまでが、作品の外の話になる。
「情報を食っている」という言葉が、
ただの皮肉ではないことは伝わったと思う。
では、芹沢本人はどうだったのか。
この台詞を吐いた場面で、彼は自分の商売について、
もっと踏み込んだことを語っている。
そこには、
彼が本当に売りたかったものが何だったのか
売れ筋の商品を、彼がどういう位置づけで作っていたのか
そして、この台詞を口にしたときの彼が、なぜあんな笑い方をしていたのか
が含まれている。
ミームとして流通しているのは、あの一言だけだ。
だが、あの言葉の本当の意味は、その続きを読まないと分からない。
ここから先で、その中身を書いていく。
一杯のラーメンより安い値段で、あの台詞の見え方が変わる。
そう思って読んでもらえたら嬉しい。
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