居眠り猫と主治医 ③河川敷フリマ 連載恋愛小説
河川敷でのフリマイベントにて団体出店が決まり、文乃はためこんでいた小鳥雑貨を放出することにした。収納場所に困っていたので、渡りに船だった。
バラエティー豊かな商品の中で異彩を放っていたのは、小静美佐の手づくりアクセサリーと夏目祐の調理グッズ。どちらも玄人ウケしそうな匂いを漂わせている。
「どれも大ぶりなのに、センスある」
小鳥会のドン・水野里佳子にほめられ、美佐はちょっと意外そうに眉を上げた。犬会と小鳥会は折り合いがよくないのだ。
「水野さんも気に入ったのあったら、言ってくださいね」
美佐は美しく口角を上げ、無難にふるまう。
材料もやけに高価そうだし、これ見よがしだよねー、と小声で文乃に本音をもらす里佳子。やはり彼女にあまり良い印象を持っていないらしい。
とくにクセのある人物には……と文乃はピンときていなかったが、小静美佐の声色が突然ガラリと変化した。
「一緒に店番お願いできますー?」
テントにポスターを貼っていた祐の腕をとり、まばゆいばかりの笑顔を振りまいている。ちやほやされて生きてきた人間は、自分の魅力を信じて疑わない。苦手なタイプだとわかったので、文乃は人知れず退散することにした。
「おはよう、ごんぎつね」
どのお店からのぞこうかとキョロキョロしていると、リラックスモードの祐が現れ、文乃は二度見する。散歩していてふらりと顔を出した風情だ。
先日見せたバックヤードでのひりつき感が消え去っている。
店については、なぜか里佳子が代わってくれたという。
「あのふたり、ソリが合わないんじゃ……」
1時間くらい放置してもかまわないだろう、とあっさりした反応。
「小静さん、先生にロックオンしてたような……」
「あの人既婚者」
目をパチパチさせている文乃を横目で見たあと、彼は薄く笑う。
流れで一緒にお店を巡ることになり、ごんぎつね発言の真意をたずねた。
「クリニックの冷蔵庫にぶどう入ってた」
罪滅ぼしの置き土産に気づいてもらえたらしい。いったん帰りかけて思い直し、コンビニに寄ったかいがあるというものだ。
(つづく)

*23年7月に公開していた作品です
加筆・修正し、分割して再掲します
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