鳥リンガルは鳥と話せるか|掌編小説
848字
北の森の水辺に、さわやかな風が吹き渡ります。
「ねえねえ、エナガさん。このごろ、アツイんだけど」
シマエナガのシマさんはいつもの枝の上で、翼をぶるっと震わせました。
「まあ、猛暑、酷暑らしいからな。地球温暖化ってやつだ」
「そうじゃなくて。じっとり熱い視線を感じるっていうか……毎日同じ男の人が会いにくるんだよね。なんか機械みたいのを使って、シマの美声を録音してる気がする。ストーカー?」
「ああ、あれは研究者だな。なんでも日本のシジュウカラ語を理解できると主張する、変わったニンゲンがいるらしい。国際的にも評価されて、ほかの鳥や動物の言語を調べる変わり者が増えてきてるとか。ヒマだよな」
シマさんはあわてて口を閉じ、そのあと、おそるおそる小声になりました。
「ええ? シマとエナガさんのらぶらぶトークを永久保存して、ようつべとかで公開されたらどうしよう!? くちばしー、じゃなくて、ぷらいばしーの侵害だよ!」
興奮して枝の端から端までぴょんぴょん移動するシマさんに、道を譲るエナガさん。
「大丈夫だって。『警戒しろ』『集まれ』『ヘビだ!』ぐらいしか把握してないよ。二語文がつくれるってだけで、上を下への大騒ぎさ。まったく、鳥の脳を過小評価しすぎだ」
博識のエナガさんは、ちょっぴりご機嫌ナナメです。
「バイリンガルは二言語を操る。多言語はマルチリンガルと表記される。じゃあ、三つの言語を話せるのは?」
ぱあっ、とつぶらな瞳を輝かすシマさん。
「梅林ガール覚えてるよ! 梅仕事のプロだよね。日本食のお店、繁盛してるかなあ……」
エナガさんは気にせず、続けます。
「三言語を話せるなら、トリリンガル。ほら、トリオとか聞いたことあるだろ? 数字の三を意味する」
「へえ! ニンゲン語、にゃん語、鳥語をマスターすれば、鳥リンガルかあ。今日もひとつかしこくなったよ。エナガさんの難しいお話は、ニンゲンにはこれっぽっちもわからないよね! シマがいちばんの理解者だよね!」
うんうん、とうれしげに頭を上下させるシマさん。
そういうことにしておこう、とエナガさんは心の中で思いました。
(おわり)

エナガさんの愛読書?
最先端の研究をおもしろおかしく、ご本人によるイラストたっぷりに綴るサイエンス本
めちゃおもしろいっす
「ハートのボトムからサンキューベリーマッチと言いたい(本文より)」
ルー大柴さんと鳥の研究が奇跡の邂逅とか
(*`艸´)ウシシシ

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