あすみ小学校ビレッジ ⑪七夕ごはん 連載恋愛小説
獅子舞や太鼓、ダンスなど劇を含めたステージは無事終わり、午後からはチャリティーバザーが控えている。
善の母親が丹精込めてつくった愛らしい「パンダパン」が人気を集めそうだ。先日、泉は試食させてもらったのだが、カスタード味とあんこ味があり、食べるまでどちらが当たるかわからないのだ。
「それにしても、まだ7月なのにアツすぎる……」
明日海市民のお祭り好きっぷりに、龍次は圧倒されているようす。泉は含み笑いをもらす。
「こんなもんじゃないですよ。夏祭りは」
半信半疑のまなざしを流し、いそいそとメニューをひろげる。
「りゅうちゃんは絶対カレーでしょ」
食堂のテーブルで、善は龍次をからかう。
七夕限定メニューは①天の川そうめん:オクラや錦糸卵、ハムやきゅうりで具だくさん。中華風のごま油と醤油、お酢のタレでいただく。
②天の川カレー:ごはんの川に隔てられた、給食風とインド風の2色カレー。サックサクの野菜チップス添え。
カレーの魔力には抗しがたく、結局3人ともカレーを注文した。
子どもでも食べられる味つけだが、深みがありクセになるおいしさ。これはよほどじっくり煮込んだとみえる。
食後のお楽しみは、数量限定・織姫パフェ。
スイカのスライスや星形のウエハース。ぶどうのゼリーに、たっぷりのバニラアイス。これを目当てに、泉はカレーをハーフサイズにしていたのだ。
スパイスでしびれた舌に、ひんやりメロンシャーベットが爽快だ。
「なんでかなあ。泉さん見てると笑顔になる」
食欲に屈し、人前だと忘れていた。
「好きなんだね、七夕集会。目えきらっきらしてる」
大 好きだった行事・別名「きらきら祭り」にまた来れるなんて、飛び上がるくらいにうれしい。ここの卒業生としては、感無量である。
はりきりすぎて、数年ぶりに浴衣を着たくらいだ。
浴衣で来場すると割引券がもらえるシステムなので、とくに女の人は浴衣姿でないひとを見つけるのが難しいほど。
「その柄いいよね。似合ってる」
百合と蝶、星々が描かれた、浅葱と紺色の浴衣。
祖母が仕立ててくれた思い出の品だ。幼い頃は大人っぽすぎて全然だったが、今はマシな気がしている。
「りゅうちゃん。ホの字ってやつ?」
固まった泉に反し、派手に笑う龍次。
「ハカセ。それはどちらの文献で仕入れたワードで?」
「オッサン先生」
「ほう。ボキャブラリーが日々更新されてるわけですな」
意外とオトナな対応。うまくかわされた気がして、ちょっとだけ泉は気分が落ちた。
(つづく)

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