【音の備忘録】Castalia / Yellow Magic Orchestra(日本)
ずいぶん間が空いてしまったが、2回目の音の備忘録。
今回は、俺の音楽の原点と言っていいアルバム、Yellow Magic Orchestra(YMO)の2枚目――『Solid State Survivor』からの選曲だ。

『Solid State Survivor』はYMOの作品の中でも、最も有名で、いちばん取っつきやすい一枚だろう。
中でも『Rydeen』とか『Technopolis』なんかは、聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
もっとも、長年聴き込んでいる熟練達からは、「いや、YMOなら『BGM』だろ」とか、「『TECHNODELIC』に決まっとる」などと言われるかもしれん。
いや、それも否定しない。
だが俺の場合、なんだかんだで今は結局ここへ戻ってきた。
YMOのアルバムの中からあえてどれを選ぶかを考えた場合、最終的に手に取ってしまうのは、やはり『Solid State Survivor』かなと思う。
このアルバムは、俺が初めて聴いたYMOのアルバムでもある。
時期としては、小学校低学年の頃だっただろうか。
当時、兄が家で流していたのを横で聴いていたのだが、気がつけば俺もすっかりハマっていた。
メロディーはキャッチーでシンプルな割に音の作り込みが変態的。
歌も音色の一部のようでインスト曲も多い。
とにかく近未来的で、当時の俺――小学生の耳でも、聴いているだけでわくわくが止まらなかった。
同級生にも聴かせ回って、周りにYMOフリークを増やしたりもした思い出。
そして、原点である理由。
このアルバムをきっかけにYMOが好きになりすぎて、電子キーボードを買ってもらった。
そして1stや本作の曲をかけながら、本人たちになりきって演奏する――そんな遊びを始めたのだ。

当時としては、いっちょまえに左手でコードを押さえると自動伴奏できる機能付き
ただ聴くだけでは終わらなかった。
自分でもやってみたい、音を出す側に回ってみたい。
そう思わせてしまったところが、決定的なところだった。
どの曲もすばらしく、この中でさらに1曲を絞り込むのはなかなか困難だ。
ちなみに、子供の頃このアルバムでいちばん好きだった曲は、『Behind The Mask』。
メロディーの良さは言うまでもないが、何よりもボコーダーを通した歌声が、たまらなくカッコよく聴こえた。
そして、なによりこの曲のメロディーは、子供だった当時の自分でも、比較的真似して弾きやすかったのだ。
そして現在。
あえて今、1曲を選ぶとしたら、『Castalia』。
正直に言えば、子供の頃の印象は真逆だった。
Behind The MaskとCastalia。
どちらも坂本龍一こと教授の作曲だが、子供心にはCastaliaは暗く、どこか気持ち悪さがあって、当時は正直あまり好きではなかった。
だが、年を重ねるにつれて、その印象は180度まるで変わった。
今ではむしろ、この音の響きや旋律の流れが、ひどく美しく、そして奥深く感じられる。
原曲の完成度もさることながら、Trans Atlantic Tourのライブ版のアレンジ、音色もたまらなく好き。
この音源を初めて聞いたのは、YMO散開後の1991年にリリースされた『FAKER HOLIC』。
初のライブ盤である『Public Pressure/公的抑圧』では、大人の事情でカットされていた渡辺香津美のギターパートが復活していると知り、迷わず飛びついて買った。
そして昨年、『YMO 1979 TRANS ATLANTIC TOUR LIVE ANTHOLOGY』というTrans Atlantic TourのライブBOXセットが発売。
これも当然買わずにはいられなかった。
ライブ版には、他にも若干早めのテンポでJazzyなアレンジがされたTechnodonの再生Live版の演奏もある。
Media Bahn Live等での経験も経てさらに進化した教授のパフォーマンスが最高潮に達したYMOのライブであるのだが、それでも強く心を揺さぶられたのは――やはり初めてTrans Atlantic Tour版を聴いたときの衝撃の方だったかもしれない。
そして近年になって、教授のピアノ版を聴いて、さらに印象が深まった。
音数を削ぎ落とした分、Castaliaという曲の構造と美しさが、よりはっきりと浮かび上がってくる。
Castaliaを含む、このYMOのアルバム『Solid State Survivor』は、あらためて聴くとやはり“変態”なアルバムだと思う。
アルバム全体にわたる曲作り、音の作り込み、空間、熱量、そのどれもが尋常ではなく、どこか神がかっているとすら感じる。
まさにYMOの3人、そして関わったスタッフすべての才能が結晶化した、奇跡の一枚だろう。
