藤の咳丸の、LINE来給ひて|枕の掃除
深夜、特に目的もなく方々をぶらぶら巡回していたら、「頭の弁」よろしく、山友の藤原咳丸より仕事終わりのLINEきたる。
咳丸:「しごおわ~」
咳丸:「三徹~。今回はマジでやばかった」
咳丸:「もうボロボロ、マジ無理っす」
などと、丑の頃まで与太話の応酬をせし。
疲れたるなら、風呂に入り一杯引っ掛け、早く寝ろし。
されど、明日の山行は忘るるな、と念押しして散会したり。
さて、つとめて、風邪引きの絵文字ひき重ねて、
咳丸:「風邪引いたっぽくて、なんか熱っぽい」
咳丸:「すまん、今日の山、延期せん?」
など云ふ電子文きたる。
あわせて、
これやこの
堅きせき所を 越え往けど
行くに行かれぬ 病床のせき ──藤原咳丸
など、どこぞの「蝉」気取りで、ちょっと雅ふうな歌送らるるは、いとわろし。逢坂の関より、むしろ己が咳こそ憂く思へし。
お返しに、
清酒:「さては、夜更けまで深酒などせしやあらむ」
清酒:「ならば、その二日酔いは、百薬の長にも治せまい」
清酒:「お気の毒だね」
と、突き放せしも、また返事が来て、
咳丸:「ちげーし。中国の関には非ず、日本の酒なり。もはや峻別できん」
咳丸:「とにかく、重い咳が止まらぬ。どんな名医も薬も効かないレベル」
咳丸:「これヤバいんじゃね?」
と、いと気弱げなり。
三徹の、達筆でも明晰でもなきせき所論争、ここに極まれり。
仕方なく、さらに返す。
夜をこめて
龍角散を ためせども
余に咳丸のせきはとめらじ ──清酒納言
清酒:「その妙酒は、さぞかしよく効く百薬の長にありけむ」
これ書きつくりければ、間髪入れずレスあり。
わがせきは
大そう重き せきなれば
龍角散にも ごほんといふとか ──藤原咳丸
咳丸:「清酒、げに冷たし、マジで」
その後、未読のまま、つひに絶えにけり。
◇
清酒と云はば冷やにあらむ。肴は炙った烏賊なりけむ。まいて、一味マヨの連ねたるは、罪深くて、いとをかし。まさに赤提灯界隈の三蹟ならむ。
など、本家枕の「関」のくだり思ひ起こされて、宮中浪漫に同じ型なれど、などか饐えた臭ひありや。まいて、このやり取りのをのこ同士なるこそ、いとあやしけり、烏賊なれば。
かかるやり取り、いとすさまじく、もはや捨ておきたしと思ひけむ。
ていうか、もう大人しく寝てろし。
さすれば、仕方なし、ポカリなど持ちて訪ねてやらむ、でもなし、と思ひけり。
これやこの、「行くも帰るも」てか?
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