【自動運転】ルールだけでは走れない:自動運転AIと地域の運転文化
はじめに
約10分で、自動運転AIの本当の難所が「交通ルールを守ること」だけではない理由が分かります。道路では、赤信号で止まる、速度制限を守る、一時停止する、といった法律上の判断だけでなく、「今は譲った方がいい」「ここは少し前に出ないと流れが止まる」「この地域では合流の間合いが独特だ」といった、人間同士の暗黙の読み合いが起きています。
自動運転車(Autonomous Vehicle:AV、システムが運転を担う車)が社会に入ると、人間の車、歩行者、自転車、バス、配送車と同じ道路を走ります。つまり、AIは道路交通法だけでなく、道路という「社会の場」でのふるまいも学ぶ必要があります。ただし、地域の運転慣習をそのまま覚えればよいわけではありません。安全、法令、地域文化のどこに線を引くのかが、これからの大きな論点です。
要点
・自動運転の難所は、法令遵守に加えて「人間に読める運転」をすることです。
・近年は、混在交通で人間と自然に協調する「socially compliant AV」が研究課題になっています。
・地域の運転作法はAIに教えられますが、危険な慣習まで学ばせない仕組みが必要です。
自動運転の基本は「認知・予測・判断・操作」を機械が担うこと
まず、自動運転とは何かを整理します。国土交通省の資料では、自動運転は、運転者ではなくシステムが、運転操作に関わる認知(周りを見ること)、予測(次に何が起きるか考えること)、判断(どう動くか決めること)、操作(ハンドルやブレーキを動かすこと)のすべてを代替して車を走らせることと説明しています[3]。
自動運転レベル(自動化の度合いを表す分類)では、レベル3以上が自動運転車にあたります。ただし、レベル3やレベル4は、ODD(Operational Design Domain:運行設計領域、走れる場所・天候・速度などの条件)の中でだけ自動運転が可能です[3]。つまり、現在の自動運転は「どこでも万能に走れるロボットカー」というより、「決められた条件で安全に走るシステム」と見る方が正確です。
警察庁も、自動運転技術は交通事故の削減や渋滞の緩和などに有効と考えられる一方、日本の道路交通環境に応じた実用化が重要だと説明しています[2]。ここで大切なのは「日本の道路交通環境に応じた」という部分です。道路は単なる線や標識の集まりではなく、人間の習慣、地域の道幅、交通量、歩行者の多さ、商店街や住宅地の雰囲気まで含む生活空間だからです。
道路交通法はベースだが、道路上の判断はそれだけでは足りない
道路交通法は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることなどを目的にしています[1]。つまり、法律の目的は「安全」と「円滑さ」を両立させることです。ここでいう円滑さとは、単に速く走ることではなく、道路を使う人が無理なく流れる状態に近いものです。
しかし、法律はすべての場面を細かく書き切れません。たとえば、狭い住宅街で対向車とすれ違うとき、どちらが先に待つのか。高速道路の合流で、どのくらい車間を空けるのか。右折車が対向車の流れを見て少し前に出る場面で、どこまでが自然で、どこからが危険なのか。こうした判断には、法律だけでなく、周囲の人が「次に何をするつもりか」を読む力が必要です。
このような力を、この記事では「運転の社会性」と呼びます。運転の社会性とは、道路上の他者とぶつからず、混乱させず、互いに意図を読み合いながら動く力です。人間はこれを、教習所だけでなく、家族の車に乗る経験、地域の道路を歩く経験、実際の運転経験を通じて少しずつ身につけます。AIにとって難しいのは、まさにこの「言葉にしにくい経験」をどう学ぶかです。
「socially compliant AV」とは、人間にとって読める自動運転車
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