息子の背中が少し遠くに見える
うちの息子は7歳になる。
この数日、ちょっとした息子の仕草や言動に「あれ?」と思うことが何度かあった。
わたしが頭の中で認識しているこの子と、実際に目の前にいる現実の息子との間に、ちょっとしたズレを感じたのだ。
もしかして、わたしが思っているより、息子は何歩か先を行っているんじゃないかー。
いま、我が家はアメリカからカリブ海へ家族旅行に来ている。
ここに滞在している間、いつも朝ごはんを食べながら、その日のスケジュールをみんなで決めることにしている。今朝も、いつものように今日はなにをしようかと話し合った。
「午前中は海で泳いで、午後からはプールにしよう」
わたしが大枠を提案した。すると、娘がすかさず、
「わたしは海に入りたくない」
続いて夫が、
「僕はプールサイドの日陰で本を読みたいな。もう陽を浴び過ぎているから」
この流れで息子へ目を向けると、息子は、
「海で泳ぎたくはないけど、砂のお城を作りたい」
と言った。
わたしはというと、海の一択だった。せっかくハワイにも沖縄にも負けないエメラルドグリーンの海に来ているんだから、海を満喫したい。プールなら、アメリカでいつでも行ける。
なので、みんなの意向を踏まえ、今日の午前中は、夫と娘がプールへ、わたしと息子が海へ、二手に分かれて行動することにした。
朝ごはんを済ませ、部屋に戻った。水着に着替えていると、息子がちょっと気まずそうにしながら近づいてきた。
「ねえママ、本当は僕も海じゃなくてプールに行きたい」
わたしが、「え、そうなの?」と聞き返すと、
「ママが海に行きたそうだったから一緒にいってあげようと思ったんだけど…」
息子は言い淀み、言葉を続ける代わりに、優しくハグをしてくれた。
なにこの優しい気遣い。わたしがビーチ派でひとりぼっちにならないように、自分の思いを抑えてこっち側に来てくれたの。それから、やっぱり本当はプールがいいと伝えに来たときの、わたしの心のインパクトを和らげるためのハグ。
いつの間にこんな対応を覚えたんだろう。
それからもう一つ。
リゾートの中で、レストランへ行ったり、プールへ行ったり、ビーチへ向かったりする時に、家族4人で歩いて移動する機会が日に何回もある。
そういうとき、わたしは息子か娘のどちらか近くにいる方と手を繋いで歩く。
わたしが息子の手をさりげなく取ると、一旦は握り返してくれるんだけど、少し歩くとさらっとすり抜けるように手を離す。このリゾートに来てから、そんなことが何度かあった。パパともママとも並ばずに、一人で少し離れて歩く。
この傾向は、もしかしたら以前から少しずつ始まっていたのかもしれない。でも、今回の旅の中で初めて、あっと目に留まった。前は自分から手を握りにきていたのに、考えてみれば最近はそんなことも減ったような気がする。
潮がだんだんと満ちるように、月がちょっとずつ円くなっていくように、子どもって毎日少しずつ変化していっている。ずっと一緒にいるからこそ、その変化を見逃してしまいそうになる。
だから、わたしは目を凝らして、子どもたちのいまを切り取っている。
