新しい防災気象情報を整理してみた。
ここ数か月、新しい防災気象情報を整理してたけど、なかなかややこしい。
とりあえず途中までの備忘録を残しておく。
1. 導入:今回の情報体系刷新内容
2つの法律の同時改正による体系整理
本質は気象業務法と水防法の同時改正。
4つの災害カテゴリーに1〜5のレベル(標識)を導入。
【不可欠な要素】気象業務法の「レベル化」だけでは現場と連動した情報体系の刷新は不可能だった。
【不可欠な要素】水防法の改正(管理者の通報義務等)が加わることで初めて、実況と連動したカテゴリ分けが成立した 。
気象業務法の改正点要旨
河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮の4カテゴリーにレベルを設定 。
避難と連動しない暴風や大雪は対象外。
民間アプリによる独自の警報通知を規制。
一般海岸における基準値の逆算タイムライン化を導入。
レベル4の潮位基準値から逆算してレベル2と3を機械的に設定。
水防法の改正点要旨
河川氾濫と高潮のレベル5通報制度を創設。
堤防の越水や決壊時に管理者が国へ通報。
この実況通報を起点に気象庁がレベル5を配信。
2万本以上の河川のトリアージを反映。
共同洪水予報は洪水予報河川のみ。
その他の中小河川は気象庁の雨量指数に依存。
高潮予報海岸制度の導入と海岸管理者の通報義務
海岸線は「高潮予報海岸」と「一般海岸」の2つに区分される。
防潮堤の3D地形データと波浪データを合体。
従来の潮位に波の打上げ高(うわづみ)を加算してシミュレーション。
管理者による越水や防潮堤破損の通報義務がレベル5の起点。
富山湾沿岸の下新川海岸が全国第1号として運用開始。
2. 災害カテゴリー別の解説と運用の現実
① 河川氾濫カテゴリー
作成・発表:国土交通省や都道府県(河川管理者)と、気象庁の「共同発表」。
判断基準:現場の水位計、堤防の損壊状況、洪水予測システム。
主導権:実質的に水位と実況を握る「河川管理者」が通報し、国交省の発表を受けて気象庁が発表。
レベル5のトリガー:水防法で定義された河川管理者の通報義務(現場の水が溢れた・決壊したという実況通報)を起点に発表。
② 大雨カテゴリー
作成・発表:気象庁が単独で実施。
判断基準:気象庁の雨量予測技術および「キキクル(危険度分布)」。
判定に使用する指数:「表面雨量指数」および「流域雨量指数」の2つを明示的に使用。
表面雨量指数:地表面の被覆状況(アスファルト等)を考慮し、地面に溜まる雨水の量を数値化したもの(内水氾濫の指標)。
流域雨量指数:河川の上流から下流へ流れ込む雨水の総量を計算し、河川の増水危険度を数値化したもの(中小河川の洪水指標)。
対象:上記の河川管理者が管轄しない、全国2万本以上の無数の中小河川や下水道溢れ(内水氾濫)。
特性:河川管理者が物理的に一元監視できない膨大な網の目を、気象庁の2つの指数を用いた予測技術でカバーする消去法的役割。
③ 土砂災害カテゴリー
作成・発表:自治体(砂防部局)の過去データと、気象庁の降雨予測データの連携。
判断基準:土壌雨量指数・60分雨量を掛け合わせた「限界の基準値(CL)」。基準指数は都道府県ごとに設定されている(従来通り、基準値は再設定)
発表タイミング(レベル3):レベル4の基準値に「あと3時間で到達する」と予測された瞬間に発令。
レベル5のトリガー:数十年に一度の降雨量となる「大雨特別警報(土砂災害)の基準値」に達すると、気象庁の予測計算(土砂キキクル)で判定された瞬間。
特性:がけ崩れや土石流の発生をリアルタイムで測る現場通報ルートはないため、レベル5であっても100%予測計算に頼った判断となる。
矛盾:線状降水帯などの急発達時、3時間の猶予がなく「レベル2からレベル4への飛び級(レベル3スキップ)」が物理的に発生する。
④ 高潮カテゴリー
【共通事項】
気象庁の公式解説では台風が強調されているが、そもそも台風接近時は、高潮がどうこう言う前に大雨や暴風の警報の段階で住民はとっくに避難している。
台風の場合は、高潮独自のレベル表示は避難のトリガーとして実質的に機能しない。
したがって、この高潮のレベル表示が本当に意味を持つのは、事前の警戒が薄れがちな「台風以外の要因(冬場の発達した低気圧など)による高潮」のときである。
【高潮予報海岸(指定海岸)】
作成・発表:国土交通省や都道府県(海岸管理者)と、気象庁の「共同発表」。
計算値:海岸管理者が持つ防潮堤の3Dデータに基づき、潮位に「波の打上げ高(高波)」を加算して予測。
レベル2(注意報):レベル4基準に達する 約18時間前 に発表。
レベル3(警 報):レベル4基準に達する 約12時間前 に発表 。
レベル4(危険警報):レベル4基準に達する 約6時間前 に発表。
レベル5のトリガー:水防法で定義された海岸管理者の通報義務(実際に水が堤防を超えた、または防潮堤が破損したという実況通報)を起点に発令。
【一般海岸(指定外の海岸)】
作成・発表:気象庁が単独で実施。
計算値:純粋な「潮位(海面そのものの高さ)」のみ。波の打上げ高(高波)は1ミリも加味されない。
レベル2(注意報):レベル4基準に達する 約18時間前 に発表。
レベル3(警 報):レベル4基準に達する 約12時間前 に発表。
レベル4(危険警報):レベル4基準に達する 約6時間前 に発表。
レベル5のトリガー:水防法に基づく実況通報ルートはなく、気象庁の潮位シミュレーションによる「レベル5基準値」による。
レベル5発表タイミング:最高潮位(レベル5基準値)に達する【約3時間前】に気象庁単独で発表。
矛盾(タイムラインの衝突):台風接近時の「約3時間前(レベル5)」や「約6時間前(レベル4)」は、海岸線では内陸の5割増しの猛烈な暴風雨の真っ只中であり、屋外への立ち退き避難は物理的に不可能(手遅れ)。
