ナニの呼び方
僕の妻は接頭語「お」を人よりもつけて話す人だ。
ある一定の言葉には必ず「お」がついている。
「おさる」「おしばい」「おうた」「おみやげ」「おすし」「おまんじゅう」「おもち」
でも、何にでもつけるわけではない。常識的な範囲内だ。接頭語「お」がつくだけでかなり言葉が柔らかいものになる。
彼女は強い言葉をとても嫌う、本人は意識していないかもしれないがキツく聞こえないように自然にそうしているのだろう。
僕ら夫婦はもう甘い会話があったりすることはない。そして、罵り合うようなこともない。でも、全く会話しないような夫婦関係でもない。むしろ、会話がある方なのではないかと思う。
「クソな輩がいてさ。ぶっ殺してやんよ」
怒りにまかせて、そんな言葉を言い放ってしまった時だけ彼女は僕に怒る。
「乱暴な言葉使わないの!!!」
それが彼女に向けた言葉でなくても怒られてしまう。でも、その一言が冷静さを取り戻してくれたりする。
でも、幸か不幸か男と女ではなくなって、かなりの時間が経ってしまった。
思えばナニの呼び方は女性によって様々だったように思う。ペットに名前をつけるがごとく名前をつける女の子もいた。その子はまるでペットに語りかけるようにしている時もあった。
そして「ナニ」どころか「ちんこ」「ちんぽ」「ちんちん」「ペニス」「竿」を絶対に言わない女の子もいる。
妻はどうだったかというと「おちんちん」だった。
「おちんちん、ちょーだい」
よく、そう言われたものだった。そして「おちんちんさん」とさん付けで言っていたこともあった。どこまでも柔らかい言葉を選ぶ人なのだろう。
セックスの相性も悪くはなかったはずだが、セックスレスになる時は訪れた。
僕らはあと数年で銀婚式を迎える。セックスレスもまもなく20年を迎えるのではないかと思う。
それでも、僕ら夫婦の関係性は決して悪いものではないのかもしれない。
「回転お寿司行くよ〜」
今でも僕は、妻が接頭語「お」をつけているのを聞くと「相変わらず可愛い人だ」と思ってしまうのだ。
暑くなくても旦那さんのナニに話しかけてあげてくださいね!
