ママだって一人の人間だから。「おやこサロン fuwari. 」主宰・佐々木あいりさんが伝える等身大の子育て
「頑張らなくていいよ」その一言で、どれだけのママが救われるでしょうか。おやこサロン「fuwari.」を主宰する助産師・佐々木あいりさんも、かつては子育ての中で感情を抑えきれず、家族にイライラをぶつけてしまい、後悔する日々を過ごしていました。
そんな経験の中で気づいたのは、「怒りの奥には本当の気持ちが隠れている」ということ。感情を否定せずそのまま受け止めたときに心が軽くなる――この発見があいりさんの子育てを変えていきました。
「まずは自分を大切にすることから始めよう」そんなシンプルな気づきを、同じように悩みを抱えるママたちにも伝えたい。その思いを形にしたのが、ママの心を整えるサロン「fuwari.」です。
今回は、あいりさんがこの居場所をつくるまでの歩みと、その根幹にある想いをたどります。
忙しい毎日に「ふわり」とやすらぎを。ママの心を整えるおやこサロン
おやこサロン「fuwari.」は、妊娠中から産後までママが心と体を整えられる居場所。メインとなる活動は、妊婦さんや産後ママを対象にしたお悩み相談です。授乳や体調の悩み、子育て中にイライラする気持ちへの向き合い方など、日常の小さな困りごとにも丁寧に寄り添っています。

さらに、幼稚園や子育て支援センター、コミュニティセンターに出向き、出張セミナーを開催。「食べたもので体と心は作られる」という考えを大切に、味噌玉づくりなど食をテーマにした講座に加え、セルフケアオイルづくりなど心を整えるワークショップにも力を入れています。
味噌にだしや具材を混ぜて丸める「味噌玉づくり」は、お湯を注ぐだけで手軽に栄養たっぷりのお味噌汁が完成すると、参加したママたちから喜ばれています。

また、「子どもから性について聞かれたとき、どう答えればいいのか分からない」と悩む保護者には、性のおはなし会を通じてサポート。子どもの発達段階に合わせてどんな言葉で伝えればよいかを一緒に考えたり、親自身が恥ずかしがらず話すコツを伝えたりしています。
こうした活動すべてに共通しているのは、「ママが自分を大切にできると、その安心感が家族にも広がっていく」という思い。無理に完璧を目指さなくても、自然体で子育てできるように。そんな願いが「fuwari.」というこの場所に込められています。
母の言葉が導いた道。命に寄り添う「助産師」への憧れ
現在のあいりさんの活動は、長年にわたるさまざまな経験の積み重ねから生まれています。その出発点になったのが、中学生のときでした。当時、看護師として働いていた母親との会話の中で、「助産師という職業があるのを知ってる? 新しい命の誕生に立ち会える素敵な仕事なんだ」と教えてもらったのです。
その言葉を聞いたあいりさんは「誕生の瞬間に立ち会えるなんて、なんて素晴らしいのだろう」と、自然に助産師への憧れが芽生えたといいます。この母の言葉をきっかけに進路は鮮明になり、助産師という目標が定まったのです。
こうして助産師を志したあいりさんは、高校卒業後に地元の看護学校に進学。その後、助産師の資格をとるため、県外の看護学校の助産学科に進学し、専門性を磨いていきました。

助産師の資格を取得したあいりさんは、総合病院や産婦人科のクリニックに勤務し、念願だった助産師としてのキャリアを歩み始めます。分娩に立ち会い、新しい命の誕生を支える日々はまさに充実そのもの。母子の笑顔に触れるたびに「この仕事を選んでよかった」と実感したといいます。
しかし、自身が結婚・出産を経て母親になると、状況は大きく変わります。夜勤や不規則な勤務と育児・家事の両立は想像以上に厳しく、常に時間に追われる日々……。
仕事への情熱はありながらも心身ともにすり減り、「このままでは自分も家族も壊れてしまうのではないか」と思うほど、限界に近づいていたのです。
仕事も家事も育児も「全部やらなきゃ」と思っていた

当時のあいりさんは、仕事と育児を両立させようとするあまり、「母親だから全部しっかりやらなければいけない」と自分を追い込んでいました。朝は子どもを保育園に預けてから慌ただしく出勤し、夜はお迎えの時間に間に合うかどうか焦りながら職場を飛び出す。
そして家に帰れば食事の準備や家事、子どもの世話が待っています。家事・育児・仕事のすべてを完璧にやろうと抱え込み、心身共に疲れ果てていました。誰にも頼らず、一人で背負い込んでしまったあいりさん。「このままの生活を続けていくのは無理だ」と判断し、転職を決意しました。
「もっとママに寄り添いたい」助産師としての原点が再び灯った瞬間
転機が訪れたのは、クリニックの仕事を退職してしばらく経ったころ。長男の1歳半健診で出会った保健師から「助産師さんなんですね!実は今、市で非常勤職員の募集があるんです。興味はありませんか?」と声をかけられたのです。
すでに別のクリニックに就職が決まっていたあいりさんでしたが、その言葉はずっと心に残り続けていました。そして後日、市役所を訪ねて面談の場を設けてもらうことになりました。
面談での何気ない会話の中で、あいりさんは「子どもたちに、命の大切さや自分は大切な存在ということを伝える性教育の活動をしてみたいんです」と心の内を打ち明けました。すると担当者からは予想外の返答が。
「実は、市としてもその分野の事業を検討していて、専門知識のある方を探していたんです」と返されたのです。その瞬間、あいりさんは助産師としての専門性を子どもたちへの性教育に活かせると確信し、まるで導かれるような不思議な縁に胸の高鳴りを感じたといいます。

非常勤職員として入職後は、子育てに関わるさまざまな業務を担当することになりました。妊婦や子どもの健康状態を確認する健診や、これから親になる方に向けて妊娠・出産・産後の生活を学ぶ両親学級などです。

さらに地域の保育所から依頼を受け、「命のお話し会」にも出向きます。人形を使って命の始まりを伝え、「一人ひとりが大切な存在」「みんな違ってみんないい」と伝える講話は、子どもたちが目を輝かせて聞いてくれる大切な時間でした。
一方で、新しく導入された「子育て世代包括支援センター」の業務では、妊婦さんや子育て中のママの悩みを聴く電話相談を担当。地域の大切な支援の一環であることは理解しつつも、電話や書面だけでは気持ちが伝わりにくく、「もっと直接顔を合わせて寄り添いたい」という思いが募っていきました。
家族の笑顔を守りたかったのに――「母親だから」と自分を責めた日々
助産師、市役所職員として忙しい日々を送りながら、家庭では2人の子育てに奮闘していたあいりさん。しかし、夫の不調や自身のメンタルの不調、子どもの不登校などが重なり、少しずつ家族関係が悪化していきました。「母親だから頑張らなければ」と自分に言い聞かせるほど、気持ちはすり減り、自分を見失っていったといいます。

この状況を理解し、抜け出す手がかりを得たい――。そう考えて選んだのが「親子カウンセラー養成講座」の受講でした。カウンセリングを受けるのではなく、あえて養成講座を選んだのは、親子の関わりや子どもの心の発達を体系的に学び、家族全体を深く理解したいと考えたからです。
講座で学んだのは、親子関係が大人になってからの心のあり方に大きく影響するということ。そして「怒りの裏には本当の気持ちが隠れている」という視点でした。怒りを抑え込むのではなく、健全に発散することで、初めて自分の本音に気づけるのです。
あいりさんが実践したのは、上半身を大きく動かして走るように腕を振り、声に出して数を数えながら深呼吸を繰り返すというシンプルな方法。体を動かして感情を解き放つ中で、ある大切なことに気づいたといいます。

「怒っているときって冷静になれなくて、本当の気持ちが見えないんですよね。でも体を動かして発散してみたら、涙がぶわっと出てきて『私、本当は泣きたかったんだ』と気づいたんです。そのとき初めて、自分の中にあった『話を聞いてもらえない寂しさ』や『こんな母親でいいのかな』という不安に気づけました」
この気づきから、あいりさんと家族とのコミュニケーションは大きく変化しました。感情的になってイライラをぶつけるのではなく、自分がいまどんな気持ちでいるのかを言葉にして共有するようになったのです。
すると、子どもたちも「それは嫌だ」「すごく嬉しい」と自分の気持ちを表現してくれるようになりました。

親子がお互いの気持ちを素直に伝え合うようになったことで、子育ての苦しさは不思議なほど軽くなり、子どもと向き合う時間を心から楽しめるようになりました。この大きな転機こそが、のちに「fuwari.」を立ち上げる原動力へとつながっていったのです。
完璧じゃなくていい。ママの笑顔が、家族の安心をつくる

かつては夫婦のすれ違いや子どもの不登校をきっかけに、家庭の中で自分を見失いかけていたあいりさん。必死に頑張るほど苦しくなり、「母親だからこうあるべき」と自分を縛りつけていたといいます。しかし今では、そんな辛い経験があったからこそ、同じ悩みを持つママたちに寄り添うことができます。
「fuwariの根っこにあるのは、『どんな気持ちも受け止める』ということ。怒りや悲しみ、不安も含めて、すべてがその人らしさ。ママが自分の気持ちを認められると、それが子育ての安心感につながっていくんです」
家族との関係に悩み、頑張りすぎて自分を見失いかけてた中で、あいりさんは「自分の声を聴くこと」が自分を大切にする第一歩だと気づきました。その実感があるからこそ、相談に訪れるママには「頑張らなくていいよ」と伝えています。

あいりさんに相談したママたちは「気持ちが軽くなった」「あいりさんに出会えてよかった」と話します。子育ての悩みや不安、イライラした気持ちをただ吐き出すだけでなく、言葉にすることで「本当はこう思っていた」と気づけるのです。
fuwariは、母親自身が自分の声を聴き、本音に気づくきっかけの場。あいりさんは「ママの心を整えることが、子どもを、そして家族を整えることにつながる」と確信しています。
ママの心が整えば、家族も整う。小さな安心がやさしい世界をつくる

あいりさんがfuwariを通して実現したいのは、誰もが弱音を吐けて「ちょっと話してみようかな」と立ち寄れる場所。子育てを頑張るママたちが「一緒に楽しもう」と言い合える温かなコミュニティーです。
「ママの心に余裕が生まれると、子どもは安心してのびのび過ごせます。子どもが安心すると、家族の笑顔や会話が増えて、温かい雰囲気で暮らせるようになります。そんな家庭が増えれば、地域全体も穏やかになるはず。少し大げさかもしれないけど、そうなれば世の中の犯罪も減って、世界が平和になると思うんです」
その言葉を語る表情には、母としての温かさと、一人の女性としての強い決意がにじんでいました。助産師として命の誕生に立ち会い、母として葛藤を抱えながら歩んできた経験があるからこそ、その一つひとつの言葉には心に響く重みがあります。
fuwari.で過ごす時間は、ママが自分らしく安心できるひとときです。その積み重ねはやがて子どもや家族の暮らしを支える力となります。小さな安心感が広がることで、家庭の空気が和らぎ、子どもたちがのびやかに育つ未来につながっていくはずです。
▽あいりさんの公式サイトやインスタもチェックしてみてください!
おやこサロン「fuwari.」
公式サイト:https://fuwari-44.my.canva.site/airi
Instagram:https://www.instagram.com/cocoro.fuwari.w/
