駅の時刻表が消えることが意味することとは
皆様、こんにちは!
鉄道員Kです。
年の瀬、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は相も変わらず、乗務しております。
行楽や、帰省の方々も増えて、いつもよりも皆さんが穏やかな顔をされているので、乗務する方も気が楽です(笑)。
さて、今日明け番の帰り道にこんなネット記事を見かけました。
正直、記事を読んだときには特段「ほう~」としか思わなかったのですが、コメント欄を読んだらまさかの非難の嵐…。
あまりに読むに耐えなかったので、反論記事としてこちらの記事を執筆することに致しました。
年の瀬の「読みもの」としてお付き合いいただければと思います。
・記事の概要
記事によると、ホーム上の時刻表を撤去したのは横浜市営地下鉄。今年11月のダイヤ改正を機に、各駅で掲示していた時刻表を撤去しました。
撤去理由については、次のように語られています。
同局によると、撤去の主な理由は省力化だ。一覧式の時刻表は、(1)日焼けを防ぐ特殊な紙を使う(2)ダイヤ改正のたびに記述の校正が必要(3)各駅への運搬や張り替えの手間がかかる─とし、撤去により印刷費だけで約70万円のコスト削減効果があるという。
一方で、撤去を巡っては利用客からの戸惑いや反発もあるため、交通局は「電光掲示板か、駅窓口で配布しているポケット時刻表を見てほしい」と利用客に理解を求めています。
・記事の内容に対する反響と、それに対して一鉄道員が思うこと
こちらの記事、先程も触れたように時刻表撤去を巡って、かなりの反対意見がコメント欄に書かれていました。
読んでいるうちに腹が立ってきましたので、鉄道業界側の人間として、代表的なコメントを抜粋して、それに対して「反論」したいと思います。
・スマホがない人/使い慣れていない人が時間を知る術がなくなるだろ!
→日本のスマホ普及率は、2024年時点で97%です。(モバイル社会研究所の調査)
今や、ほとんどの方が日々スマホを使っている訳ですし、例えば飲食店なんかでは、オーダーを自分のスマホで…なんてお店もありますよね?
なぜそれは大して非難されずに、我々だけが槍玉に挙げられなければならないのでしょうか?
ちなみに、記事でも触れられてましたが時刻表撤去後も駅窓口にはポケット時刻表があるそうですし、場合によっては駅係員に尋ねるという手段もあります。
それに各社、ホームページに時刻表を掲載していますから、そちらで確認することも可能です。
また最近では鉄道会社のアプリで、列車の現在位置や先の停車駅の到着時刻なんかも分かるようになっています。
知る術がないのならともかく、これだけ知る術があるのであれば、駅の時刻表に固執する必要はないのでは?と思います。
また、本当に必要でかつ需要があるのなら、時刻表を「有料で販売」するという手もあるわけです。
ところがそうした議論はなぜか起きないのです……だって有料ですからね。
結局のところ、「自分で調べるのも、手間やお金がかかるのも嫌だ!でも不便は困る、けしからん」ということなんでしょう。
こちらからすれば、備え付けの時刻表に固執して文句を言うほうが「けしからん」とすら思います。
・大したコストカットになってないじゃないか!
→記事内でも触れられてましたが、時刻表の印刷費用だけでも70万円のコストカットになるそうです。
70万円と聞いて、「大したコストカットになってないのに、利用者に大きな不便を強いている」という反応も多く見られました。
これは、記事を書いた神奈川新聞の取材力が不足しているが故のミスリードです。
確かに70万円という数字「だけ」でみたら少額かもしれませんが、そもそもこの70万円の印刷費用が各駅合計した金額なのか、それとも一駅辺りの金額なのかによっても話が変わってきますよね。
記事内では語られていませんが、これが一駅辺りの金額だとしたら合計するとまとまった金額になります。
また、印刷費用以外にも設置にあたっては人件費などの諸経費が発生します。
それら全てを合わせると、コストとしての負担は大きいものになります。
神奈川新聞さんも、どうせ取材するならその辺りまで詳しく掘り下げてみてはいかがでしょうか?
(最も、神奈川新聞さん的には鉄道会社を叩きやすい記事の方が都合がいいのかもしれませんが……)
また、こうしたコメントに付随して「職員の人件費カットしたらいいんだ!」というとんでもないコメントもありました。
人件費をカットしたら、その職から人が離れていって人手不足になり、長時間労働、さらには交通網の破綻につながることは近年各地で見られることで、社会問題に発展しています。
にもかかわらず、いまだにこんなことを言う方がいるとは……驚きです。
・そもそもダイヤ改正をしなければいい!
→ダイヤ改正をする度に時刻表を張り替えるのが負担なのであれば、そもそもダイヤ改正しなければいいのでは?という意見もありました。
言っておきますが、我々だってダイヤ改正しなくて済むならしたくはないですよ。
だって面倒くさいですもん。
ダイヤ改正は、単に列車の発車時刻がかわるだけではありません。乗務員の行路、車両の運用等、様々な物を変更する作業を伴います。はっきり言って煩雑です。ダイヤ改正前は担当者や現場の監督職は殺気立っています。
それでもなぜダイヤ改正をするのか?
それは「限られた資源(人、車両、資金)でいかに効率よい輸送を実現するか」を追求し続ける必要があるからです。
沿線環境や、利用客の増減は変化していきます。その変化に対応するためにダイヤ改正という作業があるのです。
ですから、ダイヤ改正なんてしなきゃいい!等というのはあまりにも軽はずみな発想だといえます。
・サービス業なんだから、利用客の目線を考えて!
→一言だけ。「じゃあ、運賃に転嫁させてください! え、まさかタダでやれと?」
・電光掲示板は読みづらい!
→これは確かにそうかもしれません。電光掲示板は次の電車の案内(時刻、停車駅等)を表示するのが精いっぱいだったりしますからね。
こちらに関しては、今後さらに見やすくする、あるいは内容の更新がしやすいデジタルの強みを活かして、柔軟な表示を出すようにするなどの工夫は必要かもしれませんね。
また、貼るタイプではなくデジタルサイネージ等で時刻表を表示できるようにするのも手だと思います。
これであれば、ダイヤ改正の度の更新の手間やコストも抑えることが出来ますので。
この部分については、今後各社が考える必要があるかもしれません。
・立派な時刻表じゃなくてもいいから掲出してほしい!
→コメント欄に多くあったのが、「紙に印刷した奴を貼るだけでも……」という声。
確かに貼るだけならすぐ出来るかも知れません。でもホームって大抵が外にありますよね。外気や列車の通過時の風圧で簡単に飛ばされてしまいます。
飛ばされてしまって、なくなってしまっている状態を誰が見つけて、貼り直すのか……。
それは駅係員になりますよね。
でも、省力化で無人駅も増えています。
都度都度、貼り直すためにわざわざ人を派遣するコストを考えると現実的とはいえません。
また、紙だと「放火」のリスクもあります。
火をつける火種にはもってこいですからね……。
ただ紙を貼ればいいという、単純な問題ではないのが現実です。
・最後に
今回の記事で最も書かれていたのは、「公共の乗り物なのに利用客への配慮がない!」というものでした。
確かに公共交通である以上、利用する全ての方の立場を考える必要はあるのかもしれません。
しかしながら、鉄道業界は民間ないし公営の機関です。
民間であれば利益を出さなければ行けませんし、公営であっても限られた税金をいかに効率よく必要なところに使うかが求められます。
しかも鉄道業界は、日々固定で出て行くお金が多い一方で、運賃の値上げが簡単にできない業界です。
一般の産業のようにコストが価格に転嫁できないのであれば、削れる箇所を削るよりほかないのです。
ところが、コロナ禍での利用客の急激や、その後の生活様式の変化で、鉄道業界もかなりのコストカットを強いられてきました。
私たちの給与や手当なんかもかなりカットされてきました。
そしていま、それが限界を超えてきているのです。
鉄道業界は皆さんが思っている以上に追い込まれています。
今回の時刻表撤去は、その一例であるといえるのです。
当たり前のようにあるものにだって、コストや手間がかかっています。
それに対して、正当な対価を払えない/払う気がないのであれば、サービスを維持できなくなるのは、火を見るより明らかです。
時刻表がなくなったら、その瞬間に時間を調べる術がなくなるのならまだしも、他にもデジタルアナログ問わず調べる手段があるのに、時刻表を撤去するだけで「配慮がない」と言われるのは、少々心外です。
今回の記事を通して、時刻表撤去の裏にはそれだけ財政的に業界が追い詰められているという現実も汲み取ってほしいと思いますし、マスコミさんも記事にするならその位深掘りしてから世に出すべきだと思いますよ!
以上、長々となってしまいましたがこちらで今日は〆たいとおもいます。
☆私のページでは、鉄道業界を巡る時事問題や、私の体験談といった鉄道業界の裏事情、さらには鉄道業界を目指す方向けのお話などを順次掲載したいと思っています。
もし、「こんな話題を聞いてみたい!」というテーマがありましたら、ぜひコメント欄で教えてください!よろしくお願いいたします。
