クレームが来ない新規事業ほど、危ない。
こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
これまで新規事業の立ち上げ支援を専門に、60社以上のスタートアップや大手企業の新規事業をコンサルティングとBPOで支援してきました。
マーケティングと営業の両方を現場で回してきた経験をもとに、教科書には載っていないリアルを発信しています。
今回のテーマは「クレームの捉え方」です。
クレームは、ネガティブな出来事ではありません。
顧客が言語化してくれた、事業の課題です。
これを宝と捉えられるかどうかで、事業の伸び方が変わります。
クレームより怖いのは、「何も言わない顧客」
新規事業の現場で、クレームを恐れている事業者は多いです。
しかし、本当に怖いのはクレームではありません。
何も言わずに離れていく顧客です。
クレームを言ってくれる顧客は、まだその事業に期待を持っています。
改善してほしいと思っているから、わざわざ声を上げる。
サブスクリプションモデルであれば特に、解約の前に顧客が発する最後のサインがクレームであることも多い。
それを「ネガティブな出来事」として処理してしまうと、事業改善のヒントを握りつぶすことになります。
では、なぜクレームをネガティブに捉えてしまうのか。理由は2つあります。
一つは、自分たちへの否定として受け取ってしまうからです。
一生懸命作ったサービスに文句を言われると、感情的に防御反応が出ます。クレームを「攻撃」と捉えた瞬間に、そこから学べるものが何もなくなります。
もう一つは、組織としてクレームを共有する仕組みがないからです。
現場が個別に対応して終わり、事業責任者やプロダクトチームに届かない。情報が止まった場所で、改善も止まります。
クレームは宝です。受け取り方と仕組み次第で、事業の突破口になります。
大手から受注できない。原因は誰も分かっていなかった。
あるAI議事録サービスの新規事業支援に入ったときの話です。
このサービスは中小企業での導入は順調に進んでいましたが、大手企業の受注に苦戦していました。
そして、社内では犯人探しが始まっていました。
マーケティング側は言います。「営業マンが弱いから取れない。」
営業側は言います。「マーケが持ってくるリードの質が悪い。」
お互いがお互いのせいにし合っている状況でした。
誰も「なぜ大手が取れないのか」という本質的な問いに答えられていなかったんです。
クレームが、突破口になった
私が入ったのは、立ち上げたばかりのカスタマーサクセスのコンサルでした。
ミッションはCSサイドから、
利用促進を図り、売上を伸ばすこと。
サブスクリプションモデルである以上、LTVを最大化するためには顧客満足度を上げていく必要があります。
そのためにまず顧客の声を拾うことから始めました。
すると、あるクレームが上がってきました。
「話者識別がないので、議事録がめちゃくちゃになる。」
このサービスが当初想定していた利用シーンは、取締役会や議会など、比較的一方向に話が進む場面でした。
複数人が同時に、あるいは交互に話すようなシーンは想定していなかった。正直なところ、想定外のクレームでした。
しかし、このクレームをきっかけに、ある仮説を立てました。
「大手が受注しないのは、話者識別機能がないことが原因ではないか?」
仮説を検証するために、過去の商談ログを遡って確認しました。
見えてきたのは、大手企業が想定していたAI議事録の利用シーンでした。
・社内での複数人との会議
・協力会社やベンダーとの打ち合わせ
つまり、複数人が交互に話す場面での活用がほとんどでした。
話者識別がなければ、誰が何を発言したのかが分からない。
議事録として機能しない。だから大手は導入を見送っていた。
マーケティングのせいでも、営業のせいでもなかった。機能の問題だった。
クレームをヒントに機能追加。受注率が改善した
この発見をもとに、話者識別機能の追加を提案しました。
開発側との調整を経て実装へ。
なかなか解決できなかった大手攻略の糸口として機能し、受注率の改善に寄与しました。
一人の顧客が発した「話者識別がない」というクレームが、事業の突破口になったわけです。
もしこのクレームをネガティブな出来事として処理していたら、大手が取れない本当の理由に気づくことはなかったかもしれません。
マーケと営業がお互いのせいにし合ったまま、時間だけが過ぎていたはずです。
まとめ
クレームは、顧客が言語化してくれた事業の課題です。
特に新規事業の初期フェーズでは、想定していなかった使われ方をされることが多い。その「想定外」の中に、事業を次のステージに引き上げるヒントが隠れています。
クレームを宝として活かすために、実務上やるべきことは3つです。
①クレームを個人で処理せず、事業責任者まで届ける仕組みを作る。
現場が個別対応して終わりでは、改善につながりません。クレームの内容・頻度・顧客属性を記録し、定期的に事業側に共有する仕組みが必要です。
②クレームの裏にある「本質的な課題」を探る。
「話者識別がない」というクレームの裏には、「大手企業の実際の利用シーンに機能が対応していない」という本質的な課題がありました。表面的な不満の一段下を見ることが重要です。
③クレームをプロダクトやサービスの改善に繋げるフローを整備する。
CSが拾ったクレームが、開発やマーケティングに連携され、実際の改善に反映される流れを作る。この一気通貫の仕組みがあって初めて、クレームが宝になります。
クレームが来たとき、問うべきはこれです。
「このクレームの裏に、まだ気づいていない顧客の課題が隠れていないか。」
ネガティブに捉えるのではなく、事業を磨く材料として受け取る。その姿勢が、伸びる事業と止まる事業を分けます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今後も新規事業の「成功・失敗」の経験談を発信していきます。
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