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5月の 詩


脈打つ


薄い貝殻 うちがわ
眠っていた塩基配列がむずかる

 ―もう中も 外も めちゃくちゃです

 発光 己を生んだすべてを
壊して過ぎる 

 砕けて貝は 雪の上層の
          輝きになる

灯の籠


岩やら石やら 重なって
削れてしまったろうか?

時を照らした 雪見灯籠
   埋もれている

   重なりに在る 灯篭と
  目に在る 灯篭と

 忘れた日の 雪を照らした

 灯篭と

ロッカー 

 わたしは歩いて 清掃に行く
 朝 制服を着ている私は

 道路は平らで 長くて 時間はまだ寝ている 家で猫たちと

 ロッカーに箒や 雑巾と一緒に入ってあったわたしが
 社員が来る前のビルジングの静かな水槽で 泳ぐ
 
 雪隠が早くも固まっている かいい、かいい
 すっきりとすべてを拭き取り ブリーチで
 空気を浸す
 私は清浄になって
 朝一番の社員に
 今日を 贈る

 それから ロッカーに戻り膝を抱いて
 明日の朝を待つ

 朝制服を着て出かけた私が 帰宅して猫に餌をやる

ぼん!

今朝は 単純な言葉が空から降って
丁度心臓の辺りで 爆発した

あちこちに千切れた自分は
薄ら笑いをしている
薄ら笑いが増えただけの 

ちょっと無意味な爆発だった

二重の夕日


お返しできない 贈り物
もらっても
もらわなくても

壊れてしまう

とぼとぼ 来た道を帰りながら
お返しの口笛を 夕日に沈めた


朝をひとつ 殺しました


肩ごしにみた大木とうねる道
烏が 梢であわいを眺める

毒が
生きたいと叫んで、隔離した。

暗い部屋
湿気ったふとん
開けさしの ペットボトル
スイッチを身体の深くへ埋めて
鍵。

向こう側ではあの道を
記述に変える
火に焚べる

湿気った部屋で 燃焼促進剤をペットボトルのお茶に浸しげろり
呑み込め
意識を切れ

朝の死体に朝が重なって
いつか部屋に細い灯りを
赦せるまで

侵されぬもの


混ぜてはならないものを混ぜた

取り消す
には さっき を無くさないといけないよ
さっき は いたいけだ
無垢な くすくす笑い

睫毛まつげの影が頬に線を描き
ちいさな 時が伝う
柔らかい日差しが
ほんたうに まもらねばいけないものを
知らんぷりして だきしめた

黄色い家


斜面の上に空き家が立っている

若者が空き家を内見にきた
一か月前、犬が吠えていた家の玄関

あの声は私が預かったままだ

老夫婦らしき二人連れの 犬たち
大きくて沢山吠えて 抱きかかえられて
閉じ込められて

消えてしまった

今日若者はあの家で犬に会う
家には時間がなくて
ずっと あの老夫婦の犬が 誰か来るのをまっている

多分 愛


愛を叫んでいる あなたが
ページに綴じられて ピン留めされている間私は大丈夫だとおもう

真昼に一日が透明過ぎて
昨日の上に重なり
判別不能になる
ピン留めされたあなたを開き相変わらず痛んでますねと
自分の在処を教えてもらう

置手紙


タイトルに人生書かなきゃ
読んで貰えない

ページなんてない一日が終わり
読まれなかったスキが感覚に目隠しをする

不快を並べたてた刑で戦闘の前線に立たされて
みんな大好き大統領のあたまを抱えて帰らなきゃならない
そこでやっと、硝子張りの絵画にパスタソースをかけたあの子とキス出来るんだ

だけど本当はキスなんていらない
目が見えないからでも口がないからでも本当は宇宙人じゃなかったからでも人間だからでもなく ただここにいるって
それだけ 君には知っておいてほしかった
だけど きみはいつも不在だね
忙しすぎるんだよ

羽虫


別に意味はない
海が青くないのと一緒
仲間を踏んで壁を越えようとするゾンビみたいに言葉を浪費しただけで
死なない屍に飽きたころ

夕方の道に羽虫の群れが浮いている
無駄使いした文字みたいに

輪郭を失う羽虫の輪
超えられないとつぶやけば
きらきら光る


雨上がりの夜の月とその空気を文字で書きたいと思う。1人分切り取られた景色。まるで舟から放り出されたように泳ぎ方を覚えたこと。烙印が恥ずかしく苦しく激しい。いつも、醜い。免罪符を掲げて生きる自分の仮面を優しい人が指差した。私は仮面の裏でそっと免罪符を剥ぎ取り故郷ふるさとの河に流す。
えんぴつを研いで、お月様に笑いかけていいじゃない窒息しようとした時間の上でDance。

ごみ


どこかに捨てなければならないものだから
あなたのお家の前にさせてって
にっこりハンコ
 
義父母の生活の凍結を
柔らかく解凍するまで
これから お願いしますね
と古い新居にご挨拶。

お掃除表をつくる 朝一時間 夕方一時間
洗濯掃除 パート なんども書き直して捨てた

あなた自分の敷地だけキレイならいいのねって
どこから出てきた ゴミですか
ゴミ捨て場、みんなで使ってください
ゴミ捨て場、みんなでキレイにしてください

山野辺さん


山野辺さんの窓には鉢植えがあった

山野辺さんの席から(座椅子と書籍と新聞紙で囲まれて、一番上にテレビのリモコンと眼鏡が置き忘れてある。宇宙船の操縦席みたいだ)
左には庭が見える。窓と鉢植えたち。
奥さんがお水をあげたのは何年前だったろう
また 鉢植えを片付けられなかった。

山野辺さんは私が掃除する間、薄ら寒い和室に本を触る

窓から見える庭を一年前の白い犬が走っている。

掃除が終わったら、冷たい廊下を渡る
肩を叩くと
はいはいって笑いながら宇宙席に戻る

山野辺さんの居た薄ら寒い和室の縁側には
白い犬の寝床がある。
家の中で一番陽の当たるところ

最後の毛を吸い込まないように
掃除機をかける。

山野辺さん掃除、おわりましたよ
また来週、来るね。

あれ、あさっては違う人?
あさっては違う人。だけど来週、詩を書いて持ってきますね。

ふかふかコイン


ふかふかコインを左に曲がると
ファミーユベラがある
エレベーターで3階が開くと 沢山の箱が並んでいて
その箱の一つに 佐々木さんご夫妻の戸惑いが閉まってある

介護ベッドから奥さんを車椅子に移す
右足、動かさないで下さいね そのまま 腰を 落としましょ

排泄の間 やせたご主人は隠れる
奥でカレーを育てている

神経質に畳まれた ピンクのふわふわ
ベッドの下の新聞紙
カレーは鶏むね肉で だけどちょっと甘いのよ

玄関でご主人の
視線を辿る
風呂場も床も灰色です チリがないから静かです

今夜は冷えるから
ピンクのふわふわ
羽織れば丁度いいですね、 朝まで 選手交代。

自転車置き場で 白い息の先に並んだまどまどまど
見上げた4個目に ご主人が殺したため息
3っつは貰って帰ります うちの猫と分け合います


青空に放物線 モモンガみたいに
平べったくなって 横ざまにとんで
ひしゃげた液体に同化したい

尖った音波だけが寂しく岸に届く
あめんぼと競争だ
そんなに透明ではね

蹴り飛ばされて転がされ
拾われ投げられて

水に小さく円を作り 生きた証にしようか
私だけが見る波紋


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