超短編「窓の灯りがつく頃に」
⚫️窓の灯りがつく頃に 2026.2.14
Ⅰ. ショウ君の灯り
ママは夕ごはんを作っている。リビングもキッチンも明るい白の太陽に近い明かり。
僕のランドセルには明日つかう分度器が入っている。ママと僕が喋るとインコのピッピも鳴いてくる。「仲間に入れてよ」て感じにね。
今日の夕飯はクリームシチュー。寒い夜には温かいクリームシチュー。
パパはいつ帰ってくるかな?
Ⅱ.ミレイの灯り
やっと終わった仕事。やっと私の居場所に戻った。人に疲れた頭にはテレビではなく静かながら穏やかに落ち着いた音楽。間接光の白色を帯びたオレンジの夕暮れ色の明かり。安眠を誘うメラトニン(ホルモン)を意識して選んだ明かり。
あの人から連絡が入れば更に私は落ち着いて眠れる。
Ⅲ.戸隠家の灯り
起きている間は明朗に明るく部屋全体を照らす明かり。重夫さんが補聴器を置いた場所を忘れないように、光子さんが眼鏡を置いた場所を忘れないように、部屋全体は明るく二人を守るように照らす。どんなに小さくなっても明かりは絶やさない。真夜中に起きてトイレに行くとき、高齢の二人には手元や足元を照らすセンサーライトも欠かせない。
自分自身で動いていくために。
Ⅳ.主のいなくなった家の灯り
家人のいない家には明かりは灯らない。閉ざされた空間に明かりは必要ない。残された床板や壁は軋んで自らを鳴らす。窓は雨で汚れを落として強風にずれてゆく戸は小さな生き物の出入りを許して時に家鳴りを誘う。
わずかな陽射しがその家の灯り。
時間の止まった家は何を待ちながら時を刻むのだろう。
