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ライン随想録 規制緩和本当にお好みですか

ライン随想録 1996年初頭 井浦幸雄 スイス・バーゼル

随想録

1996年初頭の日本では、規制緩和、規制緩和と、これがひとつのうたい文句のようになっている。
過去4・5年の日本経済の不振、 窒息状態から何とか抜けだすために、がんじがらめの諸規制を見直したいと考えるようになったにちがいない。

何百何千もの規制のひとつひとつを見直すのは大変なことと思うが、 日本人の心の奥底にある変化を嫌い安定継続を求める気持ち、 外国に対する根深い不信感と警戒感、利害調整の不得意さと少数の既得権益者に対するマスコミ、大衆の同情心などが複雑にからまりあって、規制緩和をいちじるしく困難にしているにちがいない。

コメの百パーセント国内自給奨励と輸入米の原則禁止は、 国内農業保護の観点から国民の根強い支持を得ているのだろうか。

八五年に日本を出て、 ワシントン、バーゼルと計十年も外国に住んでいるわれわれにとって、割安に入手できるカリフォルニア米になんら不都合はなく、いつもおいししくいただいている。
カレーライスやチャーハンにはむしろタイ米のほうが日本米よりもおいしくたべられるようだ。

宣伝や口こみ、その他いろいろな理由から、日本人が国産のブランド米に愛着を感じるのはよくわかる。
逆にいえば、仮に外国のコメが自由に入ってきても、かなり多くの日本人は国産の値段の高いブラド米を購入し続けるにちがいない。
より安い外国のコメを買いたいと考えている日本人の選択を他の人々がうばうことが適当なのだろうか。

また、もし日本の若い意欲的な農業者が、たとえばカリフォルニアで日本のブランド米を生産し、これを日本に再輸出したいと考え、アメリカの政府もこれを奨励したとすると、日本ではどういう反応がおきるのだろうか。
国産米を保護するために膨大な国費が使われていることに日本の人口の大多数を占める都市生活者はなんら意見を持たないのだろうか。
かなり多くの都市住民もその一~二代前までは農村にくらしていたので農業保護には抵抗がないのだろうか。

車の車検や免許についても、自分はともかく不埒な他の運転者をコントロールするためにも、強い規制が必要と多くの人が考えているのだろうか。

阪神大震災のおり、負傷者をヘリコプターで運ぶ際、医師のヘリコプター同乗が義務づけられていることが、この運搬手段利用のネックになったとの話がある。
当時瀕死の重症者手当のため数少ない医師が必死になっているときに、一人や二人の負傷者のために医師がヘリコプターに同乗するのは不可能であろう。
この規制のためにヘリコプターが飛べなかったことがもし事実とすれば、救助犬の検疫のため数日を費やしたこと以上に、 おろかなことのように思われる。

輸入化粧品を東京都の停止命令を無視して販売再開した店が銀座に現れたと聞くが、こういう店がもっと増えるほうが良いように思う。
また、酒類販売免許をデイスカント店に高額で売却した酒店が増えてきたとも聞くが、こういうことも規制をなし崩しにする好ましい市場メカニズムであるように思えてならない。

老齢プログラマの所感

日本の30年ともいわれる長期的不況の初期、4・5年目頃の随想録です。
そう言えば規制緩和の大合唱と言われていたんだなと改めて思い出します。


補足

この記事は2017年頃の「ライン随想録(井浦幸雄さん)」の復刻版です。
当時、私の故郷の「おふくろの味」を井浦さんがWebに載せて下さった。
この記事は住職の息子によって今も公開されています。
しかし、井浦さんの「ライン随想録」は今やどこにも見当たりません。
それで、当時お世話になったことを思い出し、復刻することにしました。


【ライン随想録】
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