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「幸せ」を咀嚼する、ゾウガメとの静かな午後

ダイシンワクワクホールに足を踏み入れたはずが、気がつけばそこは南半球館か、はたまた爬虫類生態館「アイファー(爬虫類生態館)」の深淵か……。

そこには、時が止まったかのような不思議な空間が広がっていました。今回の主役は「アルダブラゾウガメ」。まずは全員で「愛でる」と唱和するところから儀式は始まります。これほどまでにポジティブな言霊に包まれたイベントが、かつてあったでしょうか。

「さて、爬虫類とは何でしょう?」という飼育員さんの問いに、私たちの頭にはトカゲやヘビが浮かびます。しかし、目の前の彼らを見ていると、どうにも同じグループとは思えません。それもそのはず、遺伝子的には「赤の他人」と言いたくなるほど遠い親戚たちが、便宜上「爬虫類」という一つの屋根の下に押し込められているのが現実なのです。

なかでもカメは、3億年も前から「このデザインで行く」と決めた頑固者。恐竜が闊歩し、絶滅していくのを横目に、彼らはひたすら甲羅を背負い続けてきました。進化の途中で「歯を捨ててくちばしを選んだ」カメの決断。横隔膜を持たず、首の動きで肺を動かすという、およそ効率的とは思えない不器用な呼吸法。その一つ一つが、現代の常識を軽々と超えていくのです。

ふと見ると、獣医さんが「あぁ~、幸せ……」と、カメ以上に幸せそうな声を漏らしていました。野生ではフィンチという鳥が寄生虫を掃除してくれる「共生関係」がありますが、ここでは飼育員さんの指がその代わり。首をスクラッチされたゾウガメのうっとりした表情は、まさに至福そのものでした。

ゾウガメたちは実にマイペースです。エサと糞の上を無頓着に歩き回り、自分のリズムで食事をします。彼らが奏でる「クチャクチャ」という咀嚼音を全員で静かに愛でる時間は、現代社会の喧騒を忘れさせてくれる最高のASMR(自律感覚絶頂反応)でした。

2頭のゾウガメには、甲羅の凹みや頭の模様という個性があります。名前はナックルとカーブ。自分たちのために植えられたアイスクリームバナナを眺め、誰かに首をかいてもらい、ただそこに存在する。

「幸せ」の定義を、彼らの咀嚼音の中に教えてもらったような気がします。次に彼らに会う時は、私も心の中で「あぁ、幸せ」と唱和してしまいそうです。


参考
天王寺動物園 イベント
「アルダブラゾウガメ」を愛でる

※ナックルとカーブは、南半球館に、マーラのムギと暮らしています。

※爬虫類
トカゲ、ヘビ、ワニ、カメ

 では、今日も良い一日を!

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