1初投稿【エッセイ】夢破れ
あの、よく分からないインフルエンサーのトークショーの告知が、また流れてくる。
「やるかやらないかだ! 行動しろ!」
そんな言葉を、毎日どこかで見かける。
言ってる本人の名前は、ギリ聞いたことあるような気もするし、アイコンの顔も、どこかで見たような気がする。でも、その人たちにこの人生で一度も心を動かされたことはない。
それなのに、誰かがその言葉に心を打たれて、シェアしている。
それが、ちょっと不思議で、ちょっと悔しい。
正直、そんな浅いこと、誰でも言えると思ってた。
「その客層なら、俺でも刺さるんじゃない? 俺がその客、奪えるんじゃない?」
——なんて思ったりもする。
浅い恋愛観を語って、小さなトークショーを開いて、「わかる〜」って頷いてもらって。
ちょっと共感されたら、自己肯定感もバズるってもんでしょ?
……なんて自分を想像して、「いやいや、俺には無理だわ」って苦笑いしながら、またスマホをスクロールする。そんな夜が、もうずっと続いている。
でもさ、小馬鹿にしながらも気にしてるってことは——
たぶん、どこかでちょっと憧れてるってことなんだよな。
昔から、物語が好きだった。
漫画。特に漫画。
自分の作った話が、誰かの心をちょっとだけ奪う——そんな瞬間を、かっこいいって思ってた。
だから、漫画の編集者になりたかった。
裏方だけど、作品の背中を押す人。形を整える人。
そういう存在に、なりたかった。
でも、現実は違った。
憧れの出版社には入ることが出来なかった。
終わったな、と思った。
発信する側じゃなくて、受け取る側として生きるしかないのかって。
それでも今、こうして言葉を書いてるのは——
きっとまだ、諦めきれてないからだ。
「言葉で、誰かの背中を押したい」
そんな気持ちが、まだどこかに残ってる。
昔は、それができるのは一部の天才だけだと思ってた。
でも、違うんだと信じたい。
あの言葉——「やるかやらないか」
ウザいと思ってたそれが、今さらちょっとだけ胸に響いてる。
俺は今、就活を終えて、別の業界に内定をもらった。
それなりに安定した企業だ。
でも、どこかでずっと引っかかってる。
「これでいいのか?」
「本当は、違う場所で生きたかったんじゃないか?」
だったら、やってみるしかない。
俺は文章を書く。
誰かに届くかは分からなくても、自分の心にはちゃんと届いてる。
こうして気持ちを書き出すことで、少しだけ整った自分がいる。
ウザいと思ってた“あの言葉”の向こう側に、自分も行けるかもしれない。
小馬鹿にしていた世界に、本当は飛び込みたかったのかもしれない。
そう認めた瞬間、ほんの少し景色が変わった気がする。
これが、俺の一歩。
もし今、あなたが「やりたいけど、どうせ無理だしな」って思ってるなら。
その気持ち、めちゃくちゃよく分かる。
でも、やってから無理だったって言う方が、少なくとも心はスッキリすると思う。
「やるかやらないか」って、きっとそういう話だ。
やりたいなら、やっていい。
諦めるのは、やってからでいい。
不安定だし、恥ずかしいし、届かないかもしれない。
でもそれでも、自分の言葉で少しだけ前を向けるなら
やってみたいと思ってる。
そしてそれは、きっとあなたにもできることだと思ってる。
