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dekachiwa
【エッセイ】家族の背中
母が亡くなって、三ヶ月が経った。
父は淡々と過ごしていて、私も大学に戻った。
でも、うちの犬(マルコ)だけがまだ、あの玄関を見ている。
ポストの音がすると、しっぽを振る。
車のドアが閉まる音に反応して、立ち上がる。
そして、玄関に向かって、じっと座る。
「お母さんはもう帰ってこないよ」と言えずに、私もまた一緒に待ってしまう。
犬は言葉を覚えない。でも、空気を覚える。
あの人がいた時のリズム、音、匂い、全部を。
母の服がしまわれたクローゼットの前に、犬が座っていた日。
私はその夜、ひとりで泣いた。
ある日、父が何も言わず、散歩から帰ってきたマルコの頭を撫でて言った。
「……お前も、ずっと待ってるんだよなぁ」
たったそれだけの会話に、胸が詰まった。
マルコはしっぽを振って、また玄関の前に座った。
今日もあの子は待っている。
その後ろ姿が、家族そのものに見えた。
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