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丹沢蒸留所のウィスキーがイチローズモルトに似ていると感じた理由── 水質と口当たりから見える共通点

タイトル写真:
サイクリングがてら、ロードバイクで訪れた秩父蒸留所。
秩父の山並みが美しい。

現行流通しているブレンデッドウイスキー「丹沢」を飲んだとき、
最初に印象に残ったのは香りでも、味の強さでもなかった。

※現行製品「丹沢」はスコットランド産モルト・グレーンを用いたブレンデッドウイスキーであり、丹沢蒸溜所の自社蒸留原酒はまだ熟成中です。本稿は現行流通品の口当たりと仕上げの方向性について述べています。

丹沢蒸留所
ブレンデッドウイスキー「丹沢」
左:シェリーバレル/右:バーボンバレル

アルコールの当たりがやわらかい。
舌に触れた瞬間に角がなく、
飲み下したあとに余計なものが残らない。

その口当たりをどこかで味わったことがある…
それが秩父蒸留所「イチローズモルト」だった。


似ているのは味ではなく「口当たり」

誤解のないように言うと、
丹沢蒸留所秩父蒸留所のウィスキーは、
味わいが同じというわけではない。

共通しているのは、

  • アルコールが舌に刺さらない

  • 若い酒にありがちな荒さが出にくい

  • 飲み進めても疲れにくい

つまり、口当たりの方向性だ。
ここが似ていると、全体の印象も自然と近く感じられる。

これは後から作れるものではなく、
水質や仕上げの考え方が積み重なった結果として現れる。


水質が、口当たりの土台をつくる

ウィスキー造りにおいて水は、
単なる仕込みの材料ではない。
とくに日本の蒸留所では、水質が酒の性格を大きく左右する。

秩父蒸留所は、
大血川渓谷水系の軟水を仕込みに使用しており、
日本的な軟水による穏やかな発酵が特徴だ。
この仕込み水は、
天然のミネラル分を含む日本的な軟水として知られている。

晩秋、大血川渓谷サイクリング中の写真
本文とはまったく関係ないが、筆者にとっては思い出の地である

一方、丹沢蒸留所は
神奈川県山北町・箒沢地区の地下水を使用している。
森林に涵養されたこの水は極めて軟水で、
ミネラルの主張が少なく、酒の前に出てこない。

どちらの水にも共通しているのは、
「酒の邪魔をしない水」であること。

この点が、口当たりの印象を近づけている。


丹沢蒸留所と秩父蒸留所の比較

水質・口当たりを中心に

表にして比べてみると、
両者が似て感じられる理由は、
味わいそのものではなく、
水(仕込み水)の水質と、それが発酵や仕上げを通じて酒の口当たりに与える影響にあることが分かる。


仕上げに表れる考え方の近さ

丹沢蒸留所の現行製品は、
備長炭による独自の濾過が施されている。

ただし、それは香味を整えるためというより、
口当たりの角を落とすためのものに感じられる。

秩父蒸留所もまた、
濾過や処理で味を作るタイプの蒸留所ではない。

結果として、
水と向き合い、口当たりを大切にするという
考え方が近い方向を向いているように感じる。

それをクラフトマンシップと呼ぶなら、
それは前に出る理念ではなく、
飲んだときに静かに伝わるものだと思う。


まだ始まったばかり、だからこそ

丹沢蒸留所が稼働したのは、2024年7月

つまり、丹沢の名を冠した原酒は、
まだ熟成の途中にある段階だ。

それでも、

  • 水の選び方が明確で

  • 口当たりへの意識が一貫しており

  • 余計なことをしていない

この点は、今の製品からも十分に伝わってくる。

秩父蒸留所も、
最初から完成形だったわけではない。
時間とともに、その考え方が味に追いついていった。


これからを楽しみにしたい蒸留所

丹沢蒸留所のウィスキーは、今はまだ
水由来の口当たりから、その方向性が見える段階」だ。

だが、その方向性は、
イチローズモルトを思い起こさせる部分が確かにある。

数年後、丹沢の原酒が熟成を重ねたとき、
このやわらかな口当たりがどう変化していくのか。

それを楽しみに待てる。
今は、その入口に立ったところだと思う。


締め

丹沢蒸留所は、まだ始まったばかりだ。
だが、水と口当たりを見れば、
この先を期待したくなる理由は十分にある。

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