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ゲームで頭が良くなる説、悪くなる説、結局どっちなのか調べてみた

## はじめに:ゲームのしすぎを親に怒られた話、まだ謎は解けていなかった

小さい頃から「いつまでゲームやってるの、頭悪くなるよ」と親に言われ続けてきました。正直「そんな科学的根拠あるの?」と思っていたものの、自分で調べたことはなかったので、20歳になった今、改めて調べてみることにしました。

先に結論を言うと、「ゲームは頭に良い」説にも「悪い」説にも一定の根拠があり、研究者の間でも意見は一致していません。ただ調べていくと、鍵は「プレイ時間の長さ」そのものではなく「何を・どんなふうにプレイしているか」にありそうだ、ということが見えてきました。順番に見ていきます。

## 1. そもそも「ゲーム脳」って何だったのか

### 1-1. 2002年に話題になった「ゲーム脳」説の中身

「ゲームをやると頭が悪くなる」という話の元ネタは、2002年出版の『ゲーム脳の恐怖』(著者:森昭雄氏、当時日本大学教授)です。ゲーム中の脳波を測ると、リラックス時に増える「α波」が優位になったとして「ゲーム脳」と名付け、このパターンが認知症患者の脳波に近いと主張し、話題になりました。

### 1-2. 専門家からの強い批判と、学術的にはほぼ否定された経緯

発表後すぐ、脳トレ研究で知られる川島隆太教授らから「α波優位が悪いという科学的定義がない」「測定・比較方法に不備がある」と批判を受けました。さらに森氏は2005年「ゲームで後天的自閉症が増えている」とも主張しましたが、自閉症は生まれつきの特徴というのが医学的通説で、日本自閉症協会から抗議を受けています。こうした経緯から、「ゲーム脳」説は学術的にはほぼ否定されています。

### 1-3. なのに俗説が今も根強い理由

学術的には否定されているのに、「ゲームで頭が悪くなる」イメージは今も根強く残っています。「ゲームのやりすぎは良くなさそう」という感覚的な実感にフィットする、分かりやすい言葉だったからでしょう。私の親世代にもこの説を信じている人は多く、科学的検証より先にイメージが定着すると、後から否定されても覆りにくいということなのかもしれません。

## 2. ゲームが頭に「良い」とする研究

「ゲーム脳」説自体は否定されましたが、その後の研究では、むしろゲームが脳に良い影響を与える可能性を示すデータが複数出てきています。

### 2-1. アクションゲームと視覚処理能力

ジョージア州立大学が2024年にBrain Sciences誌で発表した研究では、アクションゲームを日常的にプレイする人は「見た情報を処理して体の動きにつなげる」脳内経路の働きが強くなっていました。速く動く対象を目で追って瞬時に反応する練習の積み重ねが、視覚情報の処理力を鍛えていると考えられます。

### 2-2. 戦略ゲーム(StarCraft II)と頭の司令塔の働き

2024年のNeuroImage誌の研究では、リアルタイム戦略ゲーム「StarCraft II」のプレイヤーは、注意力や複数作業を計画的にこなす「頭の司令塔」的な脳領域がより効率的に連携していました。常に複数ユニットを操作し先読みを繰り返す、戦略ゲームらしい結果と言えそうです。

### 2-3. 熟練度が高い人は脳の老化が遅い、4歳分若い説

2025年のNature Communications誌の研究では、ゲームの熟練度が高い人ほど脳の老化ペースが遅い傾向が報告されています。音楽や絵画など他の創造的活動を続ける人にも似た傾向があり、熟練ゲーマーの脳は実年齢より推定4歳ほど若く見えるという結果でした。継続して頭を使う活動自体が、脳の老化を緩やかにする可能性があるという話です。

### 2-4. 高齢者の認知機能とゲーム介入

軽度認知障害(認知症の前段階)のある高齢者を対象にした複数研究の分析では、ビデオゲームを使ったトレーニングで認知機能テストのスコアが平均1.8〜2.58点改善しました。体を動かす「エクサーゲーム」や週3回以上の高頻度プレイで、より効果が大きい傾向も見られました。ただし元になった研究はわずか5件、参加者も合計約215人と規模はかなり小さく、「高齢者全般に当てはまる確かな効果」と言い切るにはデータが心強いとは言えない段階です。

### 2-5. 子どもの空間認知とパズル・ボードゲーム

パズルやブロック、ボードゲームを週6回以上行う子どもは、物の形や位置関係をイメージする力(空間認知能力)のスコアが高いという報告があります。この能力はIQテストの結果とも相関が高いとされ、テレビゲームに限らず「考えて手を動かす遊び」全般が、子どもの認知発達と関係していそうです。

## 3. ゲームが頭に「悪い」とされる研究・懸念

一方で、気になるデータが出ている分野もあります。

### 3-1. 暴力的ゲームと攻撃性の「小さいが信頼できる関連」

アメリカ心理学会(APA)は2020年、暴力的なゲームのプレイと、怒鳴る・押すといった攻撃的行動の間に「小さいが信頼できる関連がある」という見解を再確認しています。ただし「犯罪行為」のような重大な暴力との結びつきを示す十分な証拠はない、ともしています。この見解には「攻撃性」の定義が曖昧、もともとの暴力的傾向などゲーム以外の要因を取り除けていない、という批判もあります。「関連がある」と「ゲームが原因で攻撃的になる」は同じではないため、慎重に受け取る必要がありそうです。

### 3-2. 学業成績との関係は一貫しない

ゲームと学業成績の関係についての研究結果は一貫していません。平日の「登校前」のプレイは成績の低さと関連があるとする研究がある一方、登校後のプレイには影響が見られない、むしろ良い影響があるとする研究も存在します。「ゲーム=成績が下がる」と単純には言えず、いつ・どのくらいプレイするかで結果が変わるようです。

### 3-3. 就寝前プレイと睡眠時間の短縮

就寝前のゲームプレイは睡眠時間そのものを短くし、翌日の注意力に影響するという研究があります。一方、睡眠の質や構造への影響は限定的だとする研究もあり、「眠れなくなる」より「夜更かしして睡眠時間が削られる」側面が大きいと考えられます。これはゲームに限らずスマホやSNSでも言えそうな話です。

## 4. 「ゲーム障害」という病名ができた話

### 4-1. WHOがICD-11で正式分類(2019年)

2013年、アメリカ精神医学会がDSM-5で「インターネットゲーム障害」を研究段階の暫定的な診断基準として導入しました。これを受け2015年、WHOがICD-11の草案に追加し、2019年5月の総会で正式採択、2022年に発効しています。

### 4-2. 診断基準と、有病率が0.2%〜46%とブレすぎている現実

診断基準は大きく4つです。①ゲームの時間や頻度を自分でコントロールできない、②他の生活上の関心事よりゲームを優先してしまう、③問題が起きてもやめられない・むしろ増える、④こうした状態で生活の重要な部分に著しい支障が出ている。気になるのは有病率の数字で、研究によって当てはまる人の割合は0.2%から46%前後まで非常に大きくばらついており、定義や調査方法が研究ごとに統一されていないことの裏返しだと言えます。

### 4-3. 「病理化しすぎ」という反論もある

ICD-11への正式採用には学術的な論争もありました。Aarseth氏らは2017年、学術誌Journal of Behavioral Addictionsで「正式な病気として分類するのは時期尚早」「健全にゲームを楽しむ人まで病気扱いし、社会的な過剰反応を助長する懸念がある」と主張する論文を発表し、Billieux氏らが反論するなど、意見が分かれた状態が今も続いています。

### 4-4. 日本の動き:香川県の条例、厚労省の「ゲーム行動症」

香川県は2020年4月、「ネット・ゲーム依存症対策条例」を施行しました。18歳未満を対象に平日60分・休日90分などの目安を示していますが、罰則はありません。厚生労働省の専門部会は2024年9月、ICD-11の訳語を「ゲーム障害」から「ゲーム行動症」に変更することを了承しています。なお久里浜医療センター(樋口進院長)の調査では、ゲーム依存の推計患者数は2012年から2017年の間で52万人から93万人に増加したと報告されています。

## 5. 結局、何が大事なのか

### 5-1. 「プレイ時間」より「何を・どんな心理状態でプレイするか」

最も納得感があったのが、オックスフォード・インターネット研究所のプリビルスキー氏による2019年のNature Human Behaviour誌の論文です。デジタル機器の使用時間そのものは、青少年の心の健康状態の違いを説明する要因としてごくわずかな影響しか持たないと示され、「スクリーンタイムが長いほど悪い」という通説に懐疑的な立場をとっています。さらに『あつまれ どうぶつの森』や『Plants vs Zombies』のプレイヤーデータでは、ゲームを「楽しんでいる」と感じている人ほど心の健康状態が良い傾向にあることも報告されています。「何時間やったか」より「どんな気持ちでプレイしているか」が大事な指標なのかもしれません。

### 5-2. 楽しんでプレイできているかが一つの指標になりそう

ここまでの研究を総合すると、ゲームが頭や心に与える影響は「何のゲームを」「どんな心理状態で」「どんな時間帯に」プレイしているかによって変わってくるようです。プレイ時間の長さだけを基準にせず、「楽しんで前向きにプレイできているか」「睡眠や勉強など生活の他の部分を圧迫していないか」を自分なりにチェックするのが、現実的な向き合い方なのかもしれません。

## おわりに:科学が決着をつけていない以上、自分なりの付き合い方を探すしかない

調べてみて分かったのは、「ゲームは頭に良い」も「ゲームは頭に悪い」も、それぞれにきちんとした研究の裏付けがあり、研究者の間でもまだ意見が一致していない、決着のついていないテーマだということでした。

「ゲーム脳」のように科学的に否定された極端な説もありますが、それとは別に、ゲームの種類やプレイの仕方によって良い影響も悪い影響もありうる、というのが現状の科学が示している誠実な答えなのだと思います。結局は「自分が今のプレイの仕方で、生活や心の健康を損なっていないか」を自分自身で確かめながら付き合っていくしかなさそうです。少なくとも、親に「頭が悪くなる」と怒られたとき、「ゲーム脳説はもう否定されてるんだけど」と言い返せるくらいの知識は手に入った気がします。

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## おまけ:格闘ゲーム(スト6)と脳の関係

最後に、私自身が最近スト6(ストリートファイター6)にハマっているので、「格闘ゲームと脳」についても少し調べてみました。格闘ゲームに特化した脳の研究はまだかなり少ないという前提のうえで、いくつか興味深い研究を紹介します。

自然科学研究機構生理学研究所の田中悟志氏らの研究では、成人男性50名(熟練者17名、非熟練者33名)を調査しました。熟練者は平均15年以上の経験を持ち、週平均20時間プレイ、世界大会「アルカディアカップ」でベスト2〜32位という実績の人たちです。視野の中の必要な情報に注意を向ける課題で熟練者は有意に高い正答率を示し、MRIでは右頭頂葉の灰白質体積も有意に大きく、体積が大きい人ほど課題成績も良いという相関が見られました。ただし熟練者のサンプル数は17名と小規模な研究である点は明記しておきます。

学術誌Journal of Expertiseに掲載されたフィリップス氏とグリーン氏の論文では、格闘ゲームのトップレベル熟練者は非プレイヤーに比べ、反応速度やタイミングの正確さ、特に「注意を持続させる力」で優れた成績を示したと報告されています。

格闘ゲームならではの面白さとして、1対1の「読み合い」も挙げられます。Red Bullの記事では、攻撃や防御の選択、必殺技の選択・実行を同時に処理する負荷を「メンタルスタック」と呼び、これを減らす方法として反復練習で「考えなくても本能的に」実行できるようにすることを挙げています。相手の思考をどこまで読むかという「レベルK思考」も、読み合いの面白さを説明する概念として紹介されています。

メンタル面では、プロゲーマー「ときど」選手(東大卒、EVO2017優勝者)のエピソードも印象的でした。スランプ期に、睡眠・食事・脈拍から「感動した回数」「幸せ度」まで25項目を毎朝記録する独自のメンタル管理法を実践していたそうです。

ただし良い面だけではありません。格闘ゲームは1対1のため、チームスポーツのように責任を分散できず、負けた怒りやイライラを誰かに転嫁できない構造があります。プロのesports選手は最大56%が不安や抑うつの症状を報告しているという報道もあり、腕を磨くことと心の健康を保つことは別に意識して両立させる必要があるテーマなのかもしれません。

私自身はガチのプロを目指しているわけではないので、まずは「読み合いが楽しい」と思える範囲で、スト6を続けていこうと思います。

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## 参考文献

- 森昭雄『ゲーム脳の恐怖』(2002年)
- 川島隆太教授らによる「ゲーム脳」説への批判(複数メディア・学術コメント)
- Georgia State University, Brain Sciences誌(2024年)アクションゲームと視覚処理に関する研究
- NeuroImage誌(2024年)StarCraft IIプレイヤーの脳の効率性に関する研究
- Nature Communications(2025年)ゲーム熟練度と脳の老化に関する研究
- 軽度認知障害高齢者を対象としたビデオゲーム介入のメタ分析
- 子どものパズル・ボードゲームと空間認知能力に関する報告
- American Psychological Association(APA)2020年見解、暴力的ゲームと攻撃的行動の関連について
- 平日登校前のゲームプレイと学業成績に関する研究
- 就寝前のゲームプレイと睡眠時間に関する研究
- WHO ICD-11「Gaming Disorder」分類(2019年採択、2022年発効)
- Aarseth et al. (2017) Journal of Behavioral Addictions「A weak scientific basis for gaming disorder」
- 香川県「ネット・ゲーム依存症対策条例」(2020年4月施行)
- 厚生労働省専門部会「ゲーム行動症」訳語に関する了承(2024年9月)
- 久里浜医療センター(樋口進院長)ゲーム依存推計患者数調査
- Przybylski, A. K. (2019) Nature Human Behaviour「Digital Screen Time and Wellbeing」
- 田中悟志氏(自然科学研究機構生理学研究所)格闘ゲーム熟練者の視空間注意・脳構造に関する研究
- Phillips & Green, Journal of Expertise「格闘ゲーム熟練者の反応速度・注意力に関する研究」
- Red Bull「メンタルスタック」に関する記事
- ときど選手のメンタル管理法に関する報道・インタビュー
- esports選手の不安・抑うつに関する報道

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