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【第46話】第5章 定量分散投資の基礎|感情を排した安定運用

第5章 定量分散投資の基礎

従来のインデックス投資や伝統的な分散投資の課題を乗り越え、安定的な収益と効率的な資産成長を目指すのが「定量分散投資」です。
これは、投資家の感情や市場の「雑音」に一切惑わされることなく、あらかじめ設定された定量的なルールに基づいて、機械的かつ厳密にポートフォリオのリバランス(再調整)を行う投資手法です。

「私は定量分散を信じる。これはこの作戦の大前提だ。だから最後まで信じてみることにするさ。」

ヤン・ウェンリー

1.定量分散投資という投資手法

従来の分散投資との違い

〇 従来の分散投資
 
目的:リスクの低減(複数の資産を持つこと)
 リバランス:任意の期間(半年、1年)ごと
 売買判断:期間の区切り、または相場観
〇 定量分散投資
 
目的:ボラティリティの収益化とリスク低減
 リバランス:定量的なルールに基づくリアルタイムに近い管理
 売買判断:自動化された数式(基準範囲からの逸脱)

定量分散投資の真価は、市場の価格変動(ボラティリティ)を受け流すのではなく、むしろ収益機会として積極的に捉える点にあります。


仕組みの解説:シンプルで強力なルール

定量分散投資の核となるルールは、「特定の銘柄の資産規模(量)を、あらかじめ定めた基準の範囲内に保つ」という極めてシンプルかつ強力なものです。

【基本設定の例】
例えば、総資産が10億円で、これを10銘柄に均等に分散すると仮定します。この場合の各銘柄の基準評価額は1億円です。ここで、許容変動幅を2%に設定します。この場合、下限は1億円、上限は1億200万円となります。

具体的な操作(リバランスのルール)

  1. 下回れば買い下がる(安く買う): もしある銘柄の評価額が下限(1億円)を下回ったら、基準範囲内に戻すために必要な分だけ買い足します。

  2. 上回れば売り上がる(高く売る): 逆に、評価額が上限(1億200万円)を上回ったら、基準範囲内に収めるために必要な分だけ売却します。

これで、1銘柄あたりの評価額を常に1億円~1億200万円の範囲に収めます。

この操作を繰り返すことで、銘柄の価格が許容変動幅内(この例では2%幅)で上下するたびに、「価格が下がった時に安く買い、価格が上がった時に高く売る」という投資の基本を、感情的な判断を排除して機械的に実行し、収益を積み重ねることができます。
さらに、この厳密なルールにより「買い過ぎ」や「売り過ぎ」を防ぎ、規律ある運用を徹底します。

出撃している艦隊の戦果が好調で、各艦隊の戦力が当初設定したレベルより増えたとします。この時、感情的には「もっと攻め込みたい」と考えるかもしれませんが、定量分散投資では、「リスクを抑制するために、増えすぎた機動部隊を一部撤収し、次の艦隊編成へ回す」という行動を取ります。あるいは戦力がダウンした艦隊の補充に回すことになります。

銀英伝的投資指南

ポートフォリオの構築と管理

ポートフォリオ全体のリスクを効果的に低減するためには、できるだけ異なる値動きをする(相関性の低い)複数の資産クラスを組み合わせることが不可欠です。

【推奨される組み合わせの例】
株式、S&P 500 ETF、債券ETF、J-REIT、金ETFなど、景気変動に対する反応が異なる資産を5銘柄以上組み込むことで、ポートフォリオ全体の安定性を高めます。

ただし、定量分散投資は指値を用いた「待ち伏せ」の手法を用いますので、株や上場ETFなどリアルタイムで値動きする投資対象が適しています。
一般的な投資信託は、翌日価格での一括約定の形をとっていますので、この手法を用いるには工夫が必要です。

【資産規模別の設定例】
例えば、総資産が1億円の場合、5銘柄に投資すれば1銘柄の基準評価額は2,000万円になります。許容変動幅を2%と設定した場合、2,000万円を下回った場合に下回った分だけ買い、2,040万円を上回った場合に上回った分だけ売るといった運用が考えられます。
つまり、1銘柄あたりの評価額を2,000万円~2,040万円の範囲に収めます。

また、総資産が5億円の場合、10銘柄に投資すれば1銘柄の基準評価額は5,000万円です。この場合、5,000万円を下回ったら下回った分だけ買い、5,100万円を上回ったら上回った分だけ売るというルールで管理します。
この場合、1銘柄あたりの評価額を常に5,000万円~5,100万円の範囲で維持します。

これらは基準額に対して許容変動幅を2%で設定した例ですが、銘柄の持つボラティリティに応じて、許容変動幅(%)を設定し直すことも可能です。

【(注意)定量分散に必要な資産規模】
総資産をいくつかの銘柄に分散して定量分散の手法を用いるには、1銘柄あたりの標準評価額を2000万円以上にすることが望ましいと言えます。
これは許容変動幅を2%にした場合、上限と下限の差が40万円となり、単位株の売買ですぐに上限と下限を行き来することになってしまうからです。

総資産額の規模が小さい場合には、定量分散の厳密な手法を用いるよりも、集中と分散を考えながら自分の肌感覚(裁量)で、バランスの取れたポートフォリオ構築とリバランスの実施を考慮する必要があります。
この場合でも、定量分散のような考えに基づき、自分なりのルールを設定して、それを守ることが大切でしょう。


運用の自動化と効率化

定量分散投資は手間がかかるように見えますが、運用の大部分を半自動化することが可能です。(具体例を後の章で解説します。)

  • 指値計算の自動化: エクセル等を用いて、各銘柄の現在値と基準範囲に基づいた買い指値売り指値の価格と数量を自動計算します。

  • 日々の実行: 寄り付き前に、自動計算された指値を階段状に注文するだけで、日々の売買を半自動的に実行できます。

この手法は、ただ保有し続けるだけの「Buy & Hold」とは異なり、各銘柄のボラティリティを積極的に収益化しながら長期運用を可能にします。


長期運用におけるメリットと戦略

  • 相場上昇時: ポートフォリオ全体が上昇し、リバランスの結果として余剰資金が生まれた場合、その資金を使って次の新しい銘柄を開拓し、ポートフォリオをさらに強固にします。

  • 相場下落時: 相場全体が大きく下落し、資金が不足する局面では、あらかじめ決めておいたルールに基づき、どの銘柄を切り崩すかを機械的に決定し、全体のバランスを保ちます。

「私が魔法の壺を持っていて、そこから艦隊が湧き出てくるとでも奴は思っているのか!ビッテンフェルトに伝えろ。総司令部に余剰兵力はない。ほかの戦線から兵力を回せば、全戦線のバランスが崩れる。現有兵力をもって部署を死守し、武人としての職責を全うせよ、と。」

ラインハルト・フォン・ローエングラム

また、定量分散投資は、高配当株との相性が良いのが特徴です。

  • 株価が下落して買い足す場合: 取得単価が下がり、数量が増加することで、自然と配当利回りが上昇し、受け取る配当金が増加します。

  • 株価が上昇して売却する場合: 配当金は減少するかもしれませんが、その分キャピタルゲイン(売却益)を確保できます。

この手法は、単なる売買技術ではなく、投資における感情的な判断を極力排除し、投資家自身の労力を「次なる投資対象の選別」という、より本質的な「投資本来の審美眼を養う」活動に集中させることを可能にします。


ただし、いかなる投資手法にもリスクは存在します。特に、特定の銘柄が一方的に下落し続ける「下降トレンド」に陥った場合、機械的な買い増しは資金拘束のリスクを高めます。
そのため、次に、こうした事態を防ぐための「5%(10%)損切りルール」について具体的に示していきます。




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