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下町音楽夜話 Reloaded 392「アナログ・オーディオとインターネット」

■■■本稿は下町音楽夜話392「アナログ・オーディオとインターネット」(2009年12月26日)に加筆修正したものです■■■

2009年最後の下町音楽夜話である。今年も音楽漬けだったことに変わりはないのだが、やはりオーディオ・セットと正対して音楽を聴くということはほとんど無くなってしまった。通勤途上でiPodを使って聴くとか、クルマのBGMとして聴くというのがほとんどである。自宅でPCに向かうときにも大抵BGMを流しているが、自宅のPCから流れているのは、最近購入したCDの音源をPCに取り込みがてら聴くといったもので、iPodやカーオーディオから流れてくる、ある程度選ばれた音源とは少々事情が異なる。

では何時アナログを聴いているのかということになってしまうのだが、これはもう週末の午前中などに、ホームページを更新したりするときのBGMといった機会しかなくなってきている。それでも、いまだにアナログ・レコード漁りがやめられない。まったく困ったものだ。アナログ・オーディオを趣味と言うからには、聴くことにも時間が割けるように、少しライフスタイルを変えていく必要がありそうだ。

2009年は前年にも増して、アナログ・レコードと接する機会が多かった。というのも、ひとつは日本音響家協会から機関誌「サウンドA&T」の原稿依頼があり、そのテーマが「何故!? アナログ・レコードにこだわるのか」というものだったので、あらためてアナログ・レコードと向き合い、自分自身に問いかけるような機会に恵まれたからである。自分自身、アナログにこだわっているつもりはなく、圧倒的に便利なデジタルと、音的にはやはりデジタルより好きなアナログを、場面場面で使い分けるのが理想と考えているのだが、やはりこの時代にアナログ・レコードを購入し続けているというのは、こだわっていると言われても仕方がない。

特に、今年の前半はダン・ペンやドン・ニックスなどのアナログに馴染む南部の音楽にはまっていたうえ、後半は、ノラ・ジョーンズ、ジョン・メイヤー、ジャック・ジョンソンなどのアナログ・サウンドにこだわりがありそうなミュージシャンの新譜が多くリリースされたこともあり、新盤をアナログLPとCDの両方で購入するといったことが多かった。いずれも、アナログ盤のリリースを続けてくれていることもあって、こちらもそういった聴き方が続けられるので嬉しい限りである。

またNONSUCHというレーベルなどは、有り難いことにアナログ・レコードにはCDがおまけでついてくる。アナログ・レコードを購入するとMP3のダウンロード権がついてくるものもあり、現代的なアナログ趣味人が、デジタルを否定するのではなく、使い分けているということを理解していただけているのだろう。本当に有り難い時代である。

結局のところ、iPodに取り込んで通勤途上に聴いたりするというシチュエーションの場合、アナログ・レコードだけだと面倒なのである。SonyのVAIOのようなPCを使えば、アナログ・レコードから簡単にデジタル・データに高音質で変換することもできるが、そのひと手間が面倒なのである。これを面倒だと思ってしまう自分自身が情けないと思うこともあるが、昨今のように慌しい日々を送っていると、ついついタイム・イズ・マネーとなってしまうのだ。ただ、そんな状況だからこそ、オーディオ・セットと正対し、針の上げ下ろしを面倒に思わないで、アナログ・サウンドを楽しめる時間が本当に貴重なものである、という意識がより一層強く感じられるものでもある。

今年の後半は、さらにアナログに傾倒した理由がもう一つある。オルタナ・カントリーの源流、アンクル・テュペロとそこから派生したジェイ・ファーラーのサン・ヴォルト、そしてジェフ・トゥイーディのウィルコにはまってしまったのだ。この連中が、またいずれも劣らず、音響にこだわりを持っているようなのだ。

ウィルコの最新盤など、ここ数年で最高の音質といっても過言ではない。いずれも、アナログ盤で集めたくなるような音楽であることは確かで、しかもきちんとアナログ盤をリリースしてくれている。ものによっては、CD付きのアナログ盤もある。こういった連中と接してしまうと、CDというものの存在価値が分からなくなってしまう。iPodなどに転送して持ち歩くためだけであれば、ダウンロード販売でも十分だ。最近はウェブサイトが充実しており、解説も歌詞もウェブ上で大抵事足りる。

またアナログ盤におまけでついてくるCDは、大抵薄くするために紙ジャケットに入れられており、あのチープですぐ割れるうえに場所をとる大嫌いなプラ・ケースを見なくても済むだけで愛着が増す。こちらの行動や感情を読まれているようで悔しくもあるが、こういったアナログ盤は当然重量盤であり、オーディオ的には大満足なのだから、これで文句を言ったらバチがあたるというものだ。

しかし、さすがに国内盤のアナログがリリースされることは稀である。自分が購入しているのも、すべて輸入盤である。最近はインターネットのおかげで、CDを直接海外の店舗から買うことも多いのだが、アナログLPを海外から直接購入することは、まだ躊躇してしまう。日本の流通業界と違って、空港などで放り投げられているのではと思うと、なかなか購入に踏み切れないといったところだ。値段がかなり安いだけに海外から買ってみたい気もするのだが、郵便受けにも入らないし、直接買い付けは諦めるべきなのだろう。

それにしても、この期に及んで、これほどまでにアナログ・オーディオ趣味を楽しめる環境が充実してくるとは、想定外であった。何年まで維持できるかという考え方で続けてきたのだが、今後は積極的に楽しめるようになりそうな気配すら漂っているのだ。音質にこだわりがあるようなミュージシャンは、CDの発売と併せてアナログ盤を発売してくれることが多くなってきたし、昔のレコードはデジタル・リマスタリングが施され、重量盤による再発というかたちで、どんどんカタログは充実してきている。オリジナル盤にこだわるというのでなければ、アナログ・オーディオを楽しむフィールドは、ひたすら拡大の一途なのである。

断定はできないが、21世紀のアナログ・オーディオは非常に明るい未来が見えてきた。この環境を十分に楽しむには、やはり今まで以上にデジタルとアナログの使い分けを徹底すべきなのだろう。パッケージ・メディアとして圧倒的に魅力が大きいのはアナログ盤のほうなのだし、あとはダウンロード環境がもっと充実すれば理想的ということなのだろう。

結局のところ、インターネットの急速な発展はアナログ・オーディオのあり方さえも左右するのだろうか。これまではデジタルがアナログを駆逐するという想定しか持てなかったが、ここにきて「アナログ・オーディオを楽しむための補助的ツールとしてのインターネット」という概念が芽生えてきたように思えてならないのである。


■2026年の独り言■
サブスクや配信を考えると少々陳腐化してしまった文章です。ただ時代の断面として、この時期はダウンロード・コード付きではなく、CD付きが主流になっていたことが知れるだけでも面白いです。…ほんの10数年前のことですが、忘れてましたねぇ…。


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