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下町音楽夜話 Reloaded 484「ウィルコから目が離せない」

■■■本稿は下町音楽夜話484「ウィルコから目が離せない」(2011年10月1日)に加筆修正したものです■■■

ウィルコのニュー・アルバム「ホール・ラヴ」がついに発売になった。いやはや待ち遠しかったのなんの。先行リリースのシングル「アイ・マイト/アイ・ラヴ・マイ・レーベル」はあちこちのサイトで視聴できたが、ついつい7インチまで購入して、録音の具合までしっかりチェックして、心待ちにしていたものだ。この7インチは7月の中旬には発売になっていたので、アルバムのリリースまで2ヶ月以上待たされたことになる。ニック・ロウのカヴァー曲であるカップリングはご愛嬌としても、いかにもウィルコといった印象の第一弾シングルが嬉しいのなんの。願わくはもっとユルくてもいいのではと思わなくもないが、これはこれで完成度の高い曲であること請け合いだ。


さてアルバムだが、今回もしっかりアナログ盤をリリースしてくれた。まず発売日の夜にアナログ盤が届けられた。2ヶ月前に予約を入れて発売日に入手できないCDというのも困ったものだが、今回もアナログ盤には全曲が収録されたCDがついている。従って本来ならCDを急いでキャンセルすればよいのだが、そうとも言い切れないものがあるのだ。面白いことに今回は通常のCDとはまるで異なったジャケット・デザインのブックレット付きCD2枚組のデラックス盤が同日発売になったのである。お値段もさほど変わらないので、みなそちらを購入するであろうことは当然と思われるので、予約が殺到しても仕方ないかなと思う部分もある。オリジナル盤の12曲に加えて、ボーナス・ディスクには4曲が収録されているが、うち1曲は先述の7インチ・シングルのカップリング曲「アイ・ラヴ・マイ・レーベル」なので、拘らなければいけないのは3曲のみ。それでも楽しみは楽しみだ。正直言って、今イチバン興味をそそられるバンドであると断言できるウィルコの新盤なのだ。

出自がオルタナ・カントリーのアンクル・テュペロだけに、オルタナ・カントリー、オルタナ・ロックに分類されることが多いが、自分の耳には普通のロックに聴こえる。アルバムを通して聴くと、かなり捻りの効いたフレーズではあるが、どこまでもメロディアスで、珠玉のポップ・チューンが並んでいる。中期のビートルズを想起させる音作りが、我々の世代にはかえって聴きやすい。ノイズもいい味つけになっているが、全てに必然性を感じるほどでもないので、装飾過多の嫌いがないではない。しかし、アルバム全体の印象は紛うことなきウィルコなので、これはこれでありなのだろう。「アイ・マイト」や「ボーン・アローン」などといった楽曲は、メインのフレーズが非常にメロディアスな上に、カウンターのメロディやベースラインに収束していく裏メロがやはり耳あたりのいいフレーズなので、非常に奥深さも感じさせるものになっている。

一方で今回のアルバムは、非常にシンプルな曲もいくつか収録されているので、全体としては大人し目の印象である。2002年の「ヤンキー・ホテル・フォックストロット」以降のアルバムは、いずれも名盤の誉れ高きものだが、捨て曲が一切ないクオリティの高さと緊張感に驚かされ続けてきたが、その点今回の「ホール・ラヴ」は少々方向性が違うアルバムのようだ。かなり長めのオフを経てから、比較的短期間で録音したアルバムということからも納得いくが、現時点の有り様を曝け出したアルバムであることは確かだろう。誰もがひれ伏す名盤という作りではないが、愛すべきアルバムであるという意味では、かなり高得点と言えよう。

ただしジャケットはさほど面白くない。アナログ盤や通常盤とデラックス盤は異なるジャケットだが、どちらもさほど面白いものではない。2004年のアルバム「ゴースト・イズ・ボーン」のときにも異なったデザインのジャケットがあったが、あちらはタイトルとヴィジュアルがリンクしており笑えたものだが、今回のジャケットの意味するところは何なのやら。前作のラクダはイマイチ捻りに欠けた気もしたが、第一印象は、さらに面白くないジャケットだなといったところである。しかし、一筋縄ではいかない連中だけに、デザインの意味するところの解説も聞かないと下手なことは言えない。

一筋縄でいかないのは歌詞に関しても言えることだが、現時点では歌詞を云々できるほど聴き込んだとは言えないが、毎度ドキッとさせられる知性の片鱗が埋め込んである歌詞は、時間をかけてじっくりと向き合う必要がある。彼らに関しては、2010年4月のZepp東京公演や2011年7月のフジロック出演など、タイミングが合わない上にそそられないスタイル(立ち見や野外ということ)だったためにライヴを逃しているのだが、そのうち機会があれば見てみたいものだ。

そういった機会に備えて、今は現時点の有り様をしっかり理解できるように、このアルバムを聴き込まなくてはなるまい。既に数回通しで聴いたが、やはり毎度新しい発見がある。この辺りの印象はこれまでのアルバムと同様だ。聴き込めば聴き込むほど味が出てくるのだから不思議なバンドだ。そういったアルバム制作というのは意図してできるものでもなかろうに。そういった意味でも、やはりこの連中からは当分目が離せない。


■2026年の独り言■
この後、2013年にはライヴも観ることができました。この時点ではかなりハマっていたと思います。もう関連音源は全部買いまくり状態でした。今になってみれば、やはり2000年代前半頃のアルバムのクオリティが異様に高いですねぇ。


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