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【愛縁奇縁/黎明編】第二話:幻園に響く祈り

 白は白銀の言葉に、
 胸を押し潰されるような苦しみを抱え涙に頬を濡らしていた。

 駆け戻りたい気持ちと、
 必死に縋りつく願いとが心の中で渦巻き、身動き一つとれない。

 すると黒曜が、そっと白の背に腕を回した。

「……大丈夫よ。私たちと、行きましょ」

 その静かな囁きに、白の足は力を失い拒むことも出来ず従った。
 黒曜の腕に支えられ、前へと進み出す。

 そのときだ。影から歩み出るようにして、
 白の守護者である玄と華も合流した。

 泣き腫らした白の顔を見て……玄の鉛白の瞳が鋭く光り、
 華は無言でその手を取って寄り添う。

 こうして一行は、その場を離れようと動き出した。

 だが……幽世そのものが、
 彼らの逃走を阻むかのように荒れ狂い始める。

 雷鳴が空を裂き、竜巻が大地を抉った。
 氷の礫が雹となって降り注ぎ、燃え盛る炎や砕けた星々が流星のように空から落ちてくる。

 大地は悲鳴を上げるように震え、光と闇が乱れ飛ぶ。

 その異常を、
 別の場所にいる黑、白哉、如月、志輝の四人も目の当たりにしていた。

「な、なんやこれは……!?」

 白哉が空を仰ぎ、焦りを隠せない。
 黑も、信じられない光景に目を見開いた。
 如月は胸に騒めきを覚え、志輝も眉を顰めて言葉を失う。

 ただ一人、日夊だけが静かにその光景を見据えていた。

「……ラグナロク。神の怒りが、遂に限界に達したようですね」

 冷ややかに、けれどどこか哀しみを含む声音。

 彼が指を鳴らした瞬間、狂気の嵐がかき消えるように止んだ。
 否、別の場所へと転移させられた。
 辺りは一転して、四季折々の花が咲き乱れる不可思議な場所。
 春の桜も、夏の向日葵も、秋の紅葉も、冬の柊も……あらゆる季節の花が、
 一面に広がる幻想の庭園。

 その場に導かれたのは、黑たち四人だけではなく、
 白銀、黒曜、玄、華、そして……――――白の姿もあった。

「……っ、白!」
「鈴!」

 白哉と黑が同時に叫び、我を忘れて駆け寄る。
 白はその声に顔を上げた瞬間、抑えていた感情が決壊した。

「お兄っ……お兄ちゃん……!」

 その小さな体で二人の胸に飛び込むと、
 子供のように泣き崩れる。必死に掴んだ衣の裾を放さず、嗚咽と共に叫ぶ。

「助けてっ……椥を、助けて! ……私の、大切な人なの! 

 ……お願い、……お願いしますっ!!」


 その声は花々の舞い散る空間に溶け、痛切な願いとして響いた。

▶次の話


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